北海道ガスが苫小牧LNG基地でeメタン製造へ

北海道ガスが苫小牧LNG基地でeメタン製造へ

北海道ガス(北ガス)は、苫小牧市内で建設を構想中のLNG基地で、水素とCO₂から合成するe-methane(e-メタン)の製造を検討しています。

北海道ガスは西部ガスなどと共同で、2025年6月5日からメタネーション実証設備を北九州市のひびきLNG基地で稼働させており、そのノウハウを北海道へ展開する計画です。

この取り組みは、国内都市ガス業界における地産地消型脱炭素モデルの広域展開として注目されます。

北海道ガスが苫小牧でeメタン製造を検討する背景

北海道ガスは2025年1月7日、苫小牧東港においてカーボンニュートラル拠点となる新たなLNG基地の建設検討を開始したと発表しました。 実現すれば同社にとって石狩LNG基地に次ぐ受入拠点となります。

北海道ガス お知らせ:苫小牧・カーボンニュートラル拠点整備の検討開始について

この計画の背景には、都市ガス業界全体で進む脱炭素化の流れがあります。

日本ガス協会は2025年6月に策定した「ガスビジョン2050」で、2030年度にeメタンやバイオガスの1%供給を目標に掲げ、2050年にはガスのカーボンニュートラル化を目指すとしています。

バイオガステック 参考記事:日本ガス協会「ガスビジョン2050」 バイオガスとe-メタンの役割

第7次エネルギー基本計画でも天然ガスは「カーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー」と位置づけられており、eメタンは脱炭素化の鍵となる次世代燃料です。

北海道の再生可能エネルギーポテンシャル

北海道は国内随一の再生可能エネルギーポテンシャルを有する地域であり グリーン水素の製造に必要な再エネ電力を確保しやすい環境にあります。

苫小牧にはエネルギーインフラが集約された臨海工業地域があり、CO₂排出源となる近隣工場も多いことから、eメタン製造の立地条件として優位性があります。

参考例として、東京ガスは2024年に王子製紙苫小牧工場で再生可能エネルギー由来のグリーン水素と、CO₂によるe-メタン製造の共同検討を進めています。

東京ガス プレスリリース:王子製紙苫小牧工場における純国産e-メタン製造の共同検討を開始

北九州ひびきLNG基地の地産地消型メタネーション実証とは

北海道ガスの苫小牧eメタン構想を理解するうえで重要なのが、2025年6月5日に北九州市のひびきLNG基地内で稼働を開始したメタネーション実証設備です。

この実証は西部ガスを中心に、IHI、九州大学、ひびきエル・エヌ・ジー、九州大学発スタートアップのJCCL、日本ガス協会、北海道ガス、広島ガス、日本ガスの共同プロジェクトとなっています。

バイオガステック参考記事:西部ガスがeメタン実証設備を稼働 地産地消型メタネーションへ

地産地消モデルによるメタネーション

この実証の最大の特徴は「地産地消モデル」を掲げている点にあり、環境省の「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」にも採択されています。

実証設備では、地域資源である再生可能エネルギーの余剰電力で製造した水素や、近隣工場から発生する副生水素、回収した未利用CO₂を有効活用してメタネーションを実施します。

技術面では、サバティエ方式メタネーション設備を採用し、LNG設備からCO₂を効率的に回収する能力を従来の15倍に高めた点が大きな特徴となります。

CO₂分離回収装置はJCCLと九州大学が共同開発し、1日あたり約30kgのCO₂回収能力を達成しています。

北海道ガスはこの実証において、各地域での地産地消モデル検討を担当しており、ここで得られる知見を苫小牧でも活用する計画です。

苫小牧がe-メタン製造拠点として注目される理由

苫小牧はeメタン関連のプロジェクトが集積しつつあり、今回の北海道ガスの構想に加え、東京ガスと王子製紙は2024年5月から、王子製紙苫小牧工場で純国産eメタン製造の共同検討を開始しています。

東京ガスと王子製紙が苫小牧で純国産eメタン製造

このプロジェクトでは、王子製紙の水力発電等由来グリーン電力と、パルプ製造工程で副生される黒液回収ボイラのCO₂を活用し、2030年までに数十m³/h級、2030年以降には1,000m³/h級へ拡大する計画です。

東京ガス プレスリリース:王子製紙苫小牧工場における純国産e-メタン製造の共同検討を開始

苫小牧がeメタン製造拠点として有望視される理由は以下の通りです。

  • 北海道の豊富な風力・太陽光エネルギーを背景に、グリーン水素の調達ポテンシャルが高い
  • 製紙・石油精製などCO₂排出源となる産業が集積しており、原料となるCO₂の調達が容易
  • 苫小牧港は国際的な物流拠点であり、将来的なLNGバンカリングや船舶向け低炭素燃料供給も検討

苫小牧港管理組合も次世代エネルギーの供給拠点として、北海道経済発展への寄与に期待を表明しています。

eメタン普及に向けたコスト課題と今後の展開

eメタン普及における最大の課題はコストです。現在のeメタン製造コストは1Nm³あたり約250円と試算されており、LNGの約5倍にのぼります。

コストの大半は水素製造に必要な電力費が占めており、再エネ電力コストの低減が最重要課題です。日本政府は2030年に約120円/Nm³への半減、2050年にはLNG並みの約50円/Nm³を目標としています。

日本では再エネコストが海外よりも割高であるため、大阪ガスや東京ガスは米国での大規模製造・輸入プロジェクトを先行させています。

一方、西部ガスや北海道ガスが推進する国内地産地消モデルは、大規模投資に依存せず、地域の副生水素や余剰再エネを最大限活用することで、コスト競争力の確保を目指すアプローチとなります。

北海道ガスは2025年度中に苫小牧LNG基地の建設可否を判断し、2030年代前半の運用開始を想定しています。

その後はひびきLNG基地での実証成果を踏まえ、CO₂回収効率やメタネーション設備の最適化を進めるとともに、道内で産業用途などの需要家開拓を進める方針です。

革新的メタネーション技術(ハイブリッドサバティエ、SOECメタネーション等)の進展もコストダウンの重要な要素であり、2030年の基盤確立を目指して、ガス事業者等が技術開発を進めています。


バイオガスプラントのご相談はお気軽に

プロジェクトの事前調査

事業実現性を検証するため、事業性評価(FS)や各種規制、FIT・FIP、補助金の調査を行います。

バイオガスプラントの設計施工

バイオガスプラントの設計から施工まで、プラント工事に関する関連業務を請け負います。

設備・CHP 保守メンテナンス

バイオガスプラントを安定的に運転するため、設備機器やCHPの保守メンテナンスを行います。

プラント再稼働・再生

ガスが発生しない、設備が稼働しない、収支見直しなどプラント運営の問題点を解決します。