西部ガスがeメタン実証設備を稼働 地産地消型メタネーションへ

西部ガスがeメタン実証設備を稼働 地産地消型メタネーションへ

西部ガスは2025年6月5日、北九州市のひびきLNG基地で、合成メタン(eメタン)を製造するメタネーション実証設備の運転を開始しました。

この実証は、IHIや九州大学発スタートアップJCCL、日本ガス協会など9者の共同プロジェクトとして、地域の再生可能エネルギー余剰電力や副生水素を活用する「地産地消型」メタネーションモデルを目指しています。

液化天然ガス(LNG)設備のボイラー排ガスから、CO₂を分離回収する能力を従来比15倍に引き上げており、1日あたり約30kgの回収を実現しています。

事業費は約10億円で、2030年の商用化を視野に検証が進められます。

西部ガスプレスリリース:地域の原料を活用したメタネーション実証設備の運転開始について

eメタンとメタネーション実証が求められる背景

eメタン(e-methane)とは、再生可能エネルギー由来の水素(グリーン水素)とCO₂をメタネーション反応(サバティエ反応)により合成して製造されるメタンのことです。

eメタン燃焼時にはCO₂を排出しますが、原料として排ガス等から回収したCO₂を使用するため、大気中のCO₂総量は実質的に増加しません。

また、供給側の投資は必要になりますが、既存の都市ガス導管やガス機器をそのまま活用できるため、需要家側の追加投資は不要という利点があります。

日本政府は第7次エネルギー基本計画において、2030年度に都市ガス供給量の1%相当を合成メタンまたはバイオガスに置き換え、その他の手段と合わせてガスの5%をカーボンニュートラル化する目標を掲げています。

また、日本ガス協会の「カーボンニュートラルチャレンジ2050」では、2050年に都市ガスの50〜90%をe-メタンとバイオガスに転換し、年間約8,000万トンのCO₂削減を実現する長期ビジョンが示されています。

こうした政策目標や技術的優位性を背景に、大手ガス事業者各社がeメタンの実証・商用化に向けて取り組んでおり、西部ガスのプロジェクトは「地産地消型」という独自のアプローチで注目を集めています。

JCCL・九州大学のCO₂回収技術VPSA2と地産地消モデル

JCCL・九州大学のCO₂回収技術VPSA2と地産地消モデル

今回稼働した実証設備は、ひびきLNG基地内の敷地に建設され、1時間あたり12.5Nm³(ノルマル立方メートル)のeメタン生産能力を持ちます。

本プロジェクトの最大の技術的特徴は、九州大学発スタートアップであるJCCLと共同開発したCO₂分離回収装置「VPSA2」にあります。

都市ガス製造工場のボイラー排ガスからCO₂を回収するこの装置は、調湿されたCO₂含有ガスを固体吸収剤に供給してCO₂を吸収させ、相対湿度を自動制御した減圧蒸気で脱着する方式を採用しています。

これにより、1日あたりのCO₂回収量を従来比15倍の約30kgにまで引き上げ、CO₂を99%まで濃縮・回収を達成しました。

LNG排ガスは石炭や石油と比較してCO₂濃度が低く、水分が多いという回収上の技術的課題がありましたが、脱水工程を省略しつつ効率的に回収する方法の確立に取り組んでいます。

JCCLプレスリリース:JCCL・九州大学が西部ガスの都市ガス工場で回収したCO₂からカーボンニュートラルな都市ガス『e-methane』が合成されクリーンガス証書を取得しました!

もう一つの特徴は「地産地消」モデルです。九州は太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの普及が進んでおり、余剰電力を活用した電解水素の調達が比較的容易な地域です。

さらに、近隣工場から発生する副生水素や、下水処理場から回収したCO₂も原料として活用することで、原料の輸送コストと環境負荷の低減を図っています。

西部ガス実証設備の概要

西部ガス(ひびきLNG基地)
eメタン生産能力12.5Nm³/時
CO₂回収能力約30kg/日(従来比15倍)
事業費約10億円
共同実施者IHI、JCCL、九州大学、日本ガス協会、北海道ガス、広島ガス、日本ガス ほか
環境価値提供先トヨタ自動車九州、ブリヂストン
モデル地産地消型(地域の再エネ余剰電力・副生水素・回収した未利用CO₂を活用)

eメタンの製造コスト 海外調達と国内製造の違い

eメタンの社会実装における最大の障壁は製造コストで、その中でも特に大きな割合を占めるのが、再生可能エネルギー由来の電力を使った水電解による水素製造コストです。

日本は海外と比較して、再エネ電力の調達コストが割高になりますが、政府は2030年に製造コストを半減させ、2050年までにLNG並みに引き下げる目標を掲げています。

資源エネルギー庁は革新的メタネーション技術の研究開発に対し約298億円の予算を計上しており、2030年の基盤技術確立、2040年代の大量生産技術実現を目指しています。

大手ガス事業者の戦略は「海外大規模製造 + 輸入」と「国内地産地消型」の2軸に分かれます。

東京ガス・大阪ガス・東邦ガスは三菱商事やセンプラ・インフラストラクチャー社と共同で、米国テキサス州でのeメタン製造・輸出プロジェクトを推進しています。

一方、西部ガスの地産地消モデルは、地域資源を最適に組み合わせることでコスト削減を図るアプローチであり、小規模でも成立するモデルとして全国への展開可能性を持つ点が特徴です。

共同でプロジェクトを実施している北海道ガスは、苫小牧市内で構想中のLNG基地でe-メタンの製造を検討しており、地産地消モデルのノウハウを北海道へ展開する計画です。

バイオガステック参考記事:北海道ガスが苫小牧LNG基地でeメタン製造へ

今後の展開 クリーンガス証書と環境価値の提供

本実証設備は2025年12月まで運転を行い、製造コストや技術的課題の検証結果を取りまとめる予定です。

実証で製造されたeメタンは既存の都市ガス導管に注入され、トヨタ自動車九州およびブリヂストンにeメタンやバイオガスの環境価値を示す「クリーンガス証書」として提供されます。

西部ガスはeメタンの原料トレーサビリティ基盤や、クリーンガス証書の運用に関する仕組み整備を進めており、eメタンの環境価値を可視化・移転する実装を進めています。

2025年5月30日には、ひびきメタネーション実証設備が「クリーンガス製造設備」の認定を取得し、同年12月にはクリーンガス証書の発行にも至りました。

西部ガスプレスリリース:ひびきメタネーション実証設備の「クリーンガス製造設備」認定取得について

このように、製造から環境価値の証明・提供までの一貫した仕組みの構築が、本プロジェクトの重要な成果の一つです。

西部ガスグループは、JERAとひびきLNG基地の戦略的活用に関する提携も行っており、バイオガス由来のCO₂やバイオメタネーションとの連携も含め、都市ガスの脱炭素化に向けた多角的な取り組みが注目されます。


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