パックスズキがパキスタンのカラチ工場でバイオガスプラントと太陽光発電稼働

パックスズキがパキスタン・カラチ工場でバイオガスと太陽光発電稼働

スズキのパキスタン子会社、パックスズキモーター(Pak Suzuki Motor)は、カラチ工場に100m³/日規模のバイオガスプラントと、920kWの太陽光発電設備を導入し、稼働を開始したと発表しました。

スズキ企業ニュース:パックスズキモーター社、バイオガスプラントおよび太陽光発電設備を稼働開始

バイオガスプラントは現地で豊富に得られるネピアグラスや、社員食堂の食品廃棄物を原料とし、太陽光発電と組み合わせて工場のカーボンニュートラル化を進める内容です。

カラチでの取り組みは、生産した再生可能エネルギーを自分の工場内で使い切る「自家消費モデル」であり、インドで先行する外販型CBG事業とは異なる点が大きな特徴です。

パックスズキ カラチ工場の脱炭素プロジェクト

パックスズキモーター(Pak Suzuki Motor)

スズキは2050年までに、新車四輪車のCO2排出量を2010年度比で90%削減する目標を掲げ、地域ごとに最適な脱炭素技術を組み合わせる「マルチパスウェイ戦略」を推進しています。

スズキのサステナビリティ:中長期目標と実績

今回の設備導入は、製品ライフサイクルの中でも、特に「製造段階」の排出を抑える施策となります。

パックスズキはパキスタンの自動車市場で約5割のシェアを持つトップメーカーですが、パキスタン国内では停電などの電力不安や、石油・天然ガスの輸入による多額の外貨流出といった問題が深刻化しています。

そのため、外部電力網(グリッド)に依存せず、工場の熱や電力を可能な限り自分で調達することは、サステナビリティや事業継続性(BCP)の両面で合理的な選択といえます。

インドのCBG事業との位置付けの違い

スズキはすでにインドのグジャラート州で、牛ふんを原料としたCBG(圧縮バイオガス)を作る商業プラント「BANAS SUZUKI BIOGAS PLANT」を稼働させており、天然ガス車向けの燃料として外部販売する事業を構築済みです。

関連記事:スズキのインドCBG拠点 BANAS SUZUKIバイオガスプラント始動

これに対し、今回のカラチ工場の設備は、あくまで「自社工場内で使う電気や熱を確保するための脱炭素インフラ」であり、インドでの事業とは目的が異なります。

スズキは、外に売る「外販モデル」と、自社で使う「自家消費モデル」の2つを並行して進めることで、南アジアにおけるエネルギー戦略を多層化しています。

スズキのパキスタン子会社 パックスズキの概要

パック・スズキ・モーター(Pak Suzuki Motor)は、スズキのパキスタン現地子会社で、カラチに本社と工場を構え、四輪車と二輪車の製造・販売を行っています。

Pak Suzuki Motor:Suzuki Pakistan

スズキはインドのマルチ・スズキよりも早く、1976年にパキスタンで車両の組み立てを開始し、1983年にパキスタン自動車公団との合弁で、現在のパックスズキモーターを設立しました。

2024年に損失計上や低株価を理由としてパキスタン上場を廃止し、スズキの完全子会社となっています。

設備の技術的特徴 ネピアグラスと食品廃棄物の組み合わせ

バイオガス原料 ネピアグラス

今回導入されたバイオガスプラントは敷地面積360m²、1日に100m³のガスを作る小規模な設備で、ネピアグラス(イネ科の多年草)と、工場の食堂から出る生ごみ(食品廃棄物)を原料に用います。

ネピアグラスは面積あたりの収量が多く、1年に何度も刈り取ることができるため、東南アジアではバイオマスエネルギーの原料として実績があります。

また、家畜のふん尿に依存しない原料構成のため、プラントの設置場所に制約がなく、都市部にある工場の敷地内でも無理なく運営できるのが技術的な強みです。

ここで精製したバイオガスは、当面は工場にある食堂のエネルギー源として使われる予定で、現在は天然ガスを使っている食堂までパイプをつなぎ、化石燃料を直接代替する計画です。

1日100m³というガス量は、工場全体のエネルギー需要には届きませんが、食堂の調理用熱源としては十分に意味のある量であり、まずは現場で実際に使ってみるという運用設計が特徴です。

バイオガスと太陽光発電設備で需給調整

併設する太陽光発電設備は、面積6,310m²、出力920kWの規模で、年間約1,395,000kWhの発電が可能です。

バイオガスは必要な時に発電や熱として使える「需要に合わせて調整しやすいエネルギー」、太陽光は昼間にたくさん発電する「天候や時間帯に左右されるエネルギー」です。

性質の異なる2つのエネルギーを組み合わせることで、時間帯によって変わる工場のエネルギー需給バランスにうまく対応できるようになります。

今後の展開 ラホールのプラント建設とUAF連携

スズキはカラチ工場の自家消費型に加え、パキスタンのパンジャブ州ラホール近郊のマンガマンディで、より本格的なパイロットプラントの建設を進めており、2026年7月の完成を目指しています。

こちらはインドのCBG事業と同じように、原料の調達からガスの精製、販売までを一貫して行う商業モデルの構築を目標としています。

また、2024年9月には、パキスタンで随一の農業研究機関であるファイサラバード農業大学(UAF)と協定(MOU)を結び、バイオガス原料の最適化や、消化液の有機肥料化に関する共同研究を進めています。

SUZUKI GROBAL:Suzuki to Work together on Cooperative Research and Development of Biogas in Pakistan – Signs MoU with the University of Agriculture, Faisalabad –

エネルギー元となる植物(ネピアグラスなど)の品種選定や、効率的な栽培方法の確立は、バイオガス事業を拡大する上で欠かせない重要なテーマです。

スズキの環境戦略 マルチパスウェイ戦略

スズキは中長期の成長戦略の中で、地域密着型の環境戦略(マルチパスウェイ戦略)を進めており、インドやパキスタンでは、製造工場の脱炭素化と脱炭素燃料のサプライチェーン構築を同時に進めています。

自動車メーカーが川上の製造と、川下の燃料供給の両方を手掛けるケースは世界的にも珍しく、今回のカラチ工場での設備稼働は、現場側からその戦略を具体化したものと言えるでしょう。

また、スズキはバイオガス事業の展開先として、インドやパキスタンの他に、アフリカや東南アジア(ASEAN)、日本の酪農地域なども視野に入れています。

南アジアにおいて、パキスタンはインドに続くマルチパスウェイ戦略のモデルケースとなります。

参考記事:スズキのバイオガス戦略 インドからパキスタンへ拡大


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