バイオガスプラントは腐食性のガスを扱いながら、連続運転が可能な設備です。故障してから直す事後保全の考え方では、売電機会の損失と緊急修理費が重なり、収支を圧迫します。
保守で決めるべきことは4つあります。CHPをどの周期で点検するか、大規模修繕がいつどの設備に来るか、記録をどう残すか、そして誰が保守を担うかです。
CHPの保守は運転時間で決まる

プラントの保守のなかで、周期がはっきり決まっているのはCHP(コージェネレーションシステム)です。カレンダーではなく積算運転時間で点検内容が定まり、時間の節目ごとに作業の中身と費用の規模が変わります。
費用は2種類に分かれます。オイルや点火プラグの交換のように継続的に発生するものと、オーバーホールのように数年に一度まとまって発生するものです。
このうち負担が大きいのは後者です。周期は機種と燃料条件によって差が大きいものの、仮に周期が80,000時間の機種で年間7,000時間運転するとすれば、およそ11年に一度めぐってくる計算になります。
導入前にメーカーへ確認しておきたいのは、この周期と、そのときに要する費用と日数です。
ただし、バイオガスは硫化水素やシロキサンを含むため、都市ガス運転を前提とした周期がそのまま当てはまるとは限りません。脱硫と除湿の性能が、エンジンの寿命をそのまま左右します。
日常点検と週次・月次の点検項目はメタン発酵プロセスのモニタリングとトラブル対策、機種ごとの特性は発電機・コージェネレーションシステム(CHP)で解説しています。
計画停止は売電できない時間になる
点検や消耗品交換には、運転を止めなければできない作業が含まれます。この時間は発電していないので、売電収入が立ちません。
実稼働時間は次の順で求めます。年間8,760時間から点検による計画停止時間を引き、さらに突発停止の見込み時間を引きます。オーバーホールの年は計画停止が数日から数週間に及ぶため、その年だけ収入が落ち込みます。
点検費用そのものより、停止時間による逸失収入のほうが大きくなる場合もあります。見積りを比較するときは、費用だけでなく作業に要する停止時間も並べてください。
大規模修繕はどの設備に来るか

バイオガスプラントの機器類の耐用年数は、短いもので4年、長くても7年程度です。NEDOの導入要件・技術指針は、稼働当初からの機器類は20年間で少なくとも1回以上の更新が必要になるとしています。
また、まとまった規模の修繕が集中するのが稼働から10年前後ですが、10年後にまとまった費用が要るとだけ分かっていても、備えようがありません。
どの設備に何が来るかを区分ごとに把握することで、修繕積立の規模と時期を具体化できます。
同指針は、大規模修繕の内容を設備区分ごとに整理しています。
| 設備区分 | 主な大規模修繕の内容 |
|---|---|
| 前処理設備 | 原料受入部のコンクリート補修、受入ホッパー開閉部の取替え、上屋全体の補修、撹拌機・移送ポンプの入替え |
| メタン発酵設備 | 発酵槽の外装補修、生物脱硫用の菌床張替え、温水熱交換器の補修、撹拌機・消化液排出ポンプの入替え |
| 後処理設備 | 固液分離棟の外装補修、コンクリート部の補修、固液分離機と換気設備の入替え |
| ガス浄化処理設備 | 生物脱硫槽の補修、乾式脱硫槽・除湿装置の入替え、発電機・ボイラーの入替え、配管補修 |
| その他 | 機械室の外装補修、コンクリート部の補修、電気・給排水・消防関係設備の補修と更新 |
NEDO:第2部 バイオマスエネルギー事業の導入要件・技術指針【メタン発酵系バイオマス編】(表2.1.24 大規模修繕の範囲)
これに加えて、発酵槽内に堆積したスカムや沈殿物の清掃も、数年に一度は必要になります。槽を空にする作業のため、実施時期は他の修繕とあわせて計画するのが効率的です。
腐食と摩耗で交換頻度が上がる機器
バイオガスプラントはアンモニアと硫化水素にさらされるため、機器だけでなく配管、電気計装、鋼製部材、コンクリートも劣化します。
とくに受入前処理設備と汚泥処理設備は、原料に直接触れるうえ摩耗も加わるため、交換の頻度が上がりやすい部分です。消耗品費と点検費は、年を追うごとに増えていくものと見込んでください。
人件費や薬品の単価も、長期的には上昇します。運転コストの内訳は運転コスト 人件費・エネルギー・保守費用にまとめています。
保守記録が引き継がれないと保守は止まる

設備が動かなくなる原因は、部品の故障だけではありません。担当者の異動や退職で記録が途切れると、次に触る人は何がいつ交換されたのかを知らないまま判断することになります。
周期が前任者の頭の中にしかなければ、その人がいなくなった時点で予防保全は成立しません。
プラントが停止した場合、設備そのものの劣化は軽微であっても、立ち上げられる人と情報が引き継がれていないと、再稼働は難しくなります。
停止したプラントを再稼働できるか調べるときは、過去のメンテナンス記録を見て適切な保守がなされていたかを確認します。記録がなければ、判断そのものができなくなります。
稼働中のプラントでも同じことが、担当者が交代するたびに発生しています。
引渡し時に受け取っておくもの
記録の初期値は、プラントの引渡し時点で決まります。ここで受け取り損ねた資料は、あとから作り直せません。新設や改修の際は、次の資料をメーカーから取得してください。
- 点検周期表 積算運転時間ごとの作業内容
- 消耗品リストと交換周期 単価と年間の想定数量
- 作業時間 各点検で運転停止が必要な時間
- オーバーホールの概算費用 部品代と工賃の内訳
- 竣工図の最新版とアラーム一覧 施工中の変更が反映されたもの
これらを契約の成果物として明記しておく方法はバイオガスプラントの設計施工で解説しています。
稼働後に積み上げる3種類の記録
引渡し時の資料に、運転して初めて分かることを重ねていきます。残すべきは次の3種類です。
- 実施記録: いつ、どの機器に、何をしたか。交換した部品の型番と数量
- 異常の記録: アラームの内容、そのときの運転条件、取った処置と結果
- 判断の記録: なぜその周期に変えたのか、なぜその部品を選んだのか
見落とされやすいのは3つ目です。実施記録だけでは何をしたかは分かっても、なぜそうしたかが残りません。
原料が変わったので交換頻度を上げた、といった経緯が失われると、後任は前任者の判断を再現できないまま、周期を一から探り直すことになります。
記録の形式は紙でも表計算でも構いません。重要なのは、担当者が代わったときに引き継がれる場所へ置いておくことです。
計装システムのヒストリカルデータで運転値は自動的に残りますが、処置と判断は人が書かなければ残りません。
データの蓄積については計装と制御システム・自動化技術で解説しています。
保守を誰が担うか O&M契約の3類型

稼働が始まったあと、誰がどう保守を回すかについては、3つの選択肢があります。
| 類型 | 費用 | 対応の速さ | 向くケース |
|---|---|---|---|
| メーカーとの年間契約 | 高い | 部位により本国待ち | 特殊機・輸入機が中核の設備 |
| 自社で実施 | 低い | 即時 | 有資格者と技術者を確保できる場合 |
| 第三者に委託 | 中間 | 拠点が近ければ速い | 自社に人がおらず、汎用機が中心の設備 |
どれを選ぶにしても、緊急時に駆けつけられる地元の業者を1社確保しておくことをおすすめします。NEDOの導入要件・技術指針も、障害時に緊急対応できる地元メンテナンス業者の確保を運転管理の要点に挙げています。
夜間や休日に停止したとき、メーカーの到着を待つ間に発酵槽の温度が下がると、微生物を立ち上げ直す必要が生じ、復旧までの時間が一気に伸びます。
委託先を変える可能性があるなら、記録の所有者を契約で決めておいてください。委託先が自社の様式で記録を管理している場合、契約終了時にそれが手元に残らないことがあります。
輸入機のメーカーと契約するときの確認点

海外製のCHPを採用している場合は、契約前に次の3点を確認してください。
- 国内の部品在庫 消耗品と主要部品を国内で確保できるか、納期は何日か
- 契約相手の整備能力 国内代理店と契約する場合、その代理店に実際の整備実績があるか
- 技術者派遣の条件 本国からの派遣が必要な作業の範囲と、その費用と対応期限
国内代理店を契約相手にすると、その代理店の能力が不足していても本国側に責任を問えません。契約書の相手方と、実際に作業を行う主体が一致しているかを確かめておく必要があります。
メーカーが倒産した場合の備えも考えておきたいところです。
同じメーカーの設備を導入している事業者と部品を融通し合う方法があるほか、メーカー保証はなくなりますが、バイオガスプラントに詳しい技術者を抱えた事業者へ修理を委託するという選択肢もあります。
バイオガステックの設備機器・CHP保守サービス
バイオガステックは、株式会社シーエープラントのプラント保守の現場経験をもとに、設備機器とCHPの点検・整備・部品調達を支援します。TEDOM、ECPOWER、GENTECの各機種を取り扱っており、他メーカー製のCHPについてもご相談を承ります。
次のようなご相談に対応しています。
- 点検の頻度と範囲をどう決めればよいかわからない
- CHPの整備を頼める業者が近くにない
- 部品の納期が読めず、停止期間が長くなってしまう
- 前任者が退職し、保守の記録が引き継がれていない
- 修繕費が想定より膨らみ、収支計画を見直したい
CHPの各機種についてはコージェネレーションシステム(CHP)、すでに停止しているプラントの立て直しは停止バイオガスプラントの再生・再稼働をご覧ください。




