三菱商事が米国Divertと提携 北米の食品廃棄物RNG事業を拡大

三菱商事が米国Divertと提携 北米の食品廃棄物RNG事業を拡大

三菱商事と米国Divert, Inc.(以下、Divert)が、2026年4月14日に戦略的パートナーシップを締結し、北米全域の循環型インフラ構築を進めると発表しました。

ABC NEWS:Divert Secures Strategic Partnership with Mitsubishi to Scale Circular Infrastructure Across North America

Divertは食品廃棄物に特化した循環経済ソリューションプロバイダーで、三菱商事が主導する今回のシリーズC出資によって企業価値は10億ドル(約1,600億円)を超え、ユニコーン企業としての地位を確立します。

この出資は単なる資金調達に留まらず、RNG(再生可能天然ガス)の優先引取権(オフテイク)や、日本を含むグローバル展開を視野に入れた、戦略性の高い提携となっています。

アメリカ政府による食品廃棄物の規制強化

米国では近年、気候変動対策としての脱炭素化ニーズに加え、米政府による「2030年までに食品廃棄物半減」という目標に向け、有機廃棄物の埋立を禁止・制限する州法が相次いで施行されています。

USDA:National Strategy for Reducing Food Loss and Waste and Recycling Organics

全米で最も厳しいカリフォルニア州のSB1383(有機廃棄物削減法)は、2025年までに有機性廃棄物の埋立処分を75%削減(2014年比)、食用可能食品の20%回収を義務付けています。

CalRecycle Home Page:California’s Short-Lived Climate Pollutant Reduction Strategy

ワシントン州のHB1799 (有機廃棄物管理法)は、週に96ガロン以上の有機廃棄物を排出する企業や組織に対し、堆肥化やバイオガス化などのリサイクルが義務付けられます。

マサチューセッツ州では、週0.5トン以上の有機物を排出する事業者に対する埋立禁止規制が実施されており、さらなる強化が検討されています。

ニューヨーク州でも、2027年1月1日から週1トン以上の食品廃棄物排出者に対する規制が発効予定です。

規制による北米食品廃棄物RNG市場の成長

上記の規制により、食品廃棄物を原料とするRNG生産は、成長が有望視される分野の一つとなっています。

2025年には北米で過去最高となる130のRNG施設が稼働を開始しており、その中でも食品廃棄物由来の施設は前年比54%増と、農業系や下水処理系を凌ぐ成長率を記録しています。

RNG Coalition:RNG Coalition: 2025 Yielded Record-High Annual Facility Growth for RNG

三菱商事は、Divertの「収集・データ化・処理」を一気通貫で行うプラットフォームを高く評価し、エネルギーの安定確保と循環型社会の実現に向け、布石を打った形になります。

三菱商事出資の背景 Divertの評価額10億ドル超へ

三菱商事とDivert提携の柱は2つあり、1つ目は三菱商事によるエクイティ出資、2つ目はその出資と連動したRNG優先オフテイク権の取得です。

さらに両社は、三菱商事のグローバルエネルギープラットフォームを活用し、北米で生産されたRNGの便益を日本をはじめとする世界市場へ届ける新たな経路の確立を目指すとしています。

Divertはプレスリリースで両社の提携を「有機資源回収業界における初の試み」と発表しており、これを機にDivertの企業価値は10億ドルを超える水準に達しました。

Divertの親会社は、工業部門の脱炭素化を専門とするグローバル投資会社Ara Partnersで、運用資産額は2025年9月30日時点で約66億ドルに達しています。

Divert事業概要:Divert(ディバート)

Divertの事業モデルと技術的優位性

Divertは現在、カリフォルニア州ターロックなどの既存施設に加え、ワシントン州ロングビューやノースカロライナ州レキシントンで大規模な統合型施設の建設を進めています。

2023年にはエネルギーインフラ大手Enbridgeから、最大10億ドルのインフラ投資コミットを獲得し、2031年までに米国人口の80%をカバーする100マイル圏内ネットワークの構築を目指しています。

Enbridge事業概要:Enbridge Inc.(エンブリッジ)

また、BPとは2022年10月に、10年にわたる約1.75億ドル規模のRNGオフテイク契約を締結済みです。

バイオガス業界は、2030年までに北米で1,000カ所のRNG施設稼働を目指しており、Divertの統合モデルは業界標準(スタンダード)となる可能性を秘めています。

項目Divertの概要
設立年2007年
本社米国マサチューセッツ州 West Concord
事業領域食品廃棄物のデパッケージング、嫌気性消化、RNG生産、肥料化、データ分析
評価額10億ドル超(2026年4月時点)
主要顧客全米の食品小売業者・食品メーカー(約8,000の店舗ネットワーク)
主要パートナーEnbridge(インフラ投資)、BP(10年RNGオフテイク)、三菱商事
親会社Ara Partners(運用資産約66億ドルの脱炭素PEファンド)

Divertの事業モデル IDEEとPrevent,Provide,Power

Divertの事業は統合型のアプローチが特徴で、IDEE(Integrated Diversion & Energy Facility)と呼ばれる独自の施設を展開しており、以下の3つのプロセスをデータで最適化しています。

  • Prevent(予防): RFID技術を活用して小売店レベルでの廃棄発生源を可視化し、無駄な発注を抑制して上流でのロスを削減します。
  • Provide(提供): まだ食べられる食品は地域のフードバンクへ提供し、社会的価値を最大化します。
  • Power(動力): 寄付不可能な食品(非可食部)を、独自技術でデパッケージング(包装除去)し、メタン発酵によりRNGへと変換します。

高純度な原料調達を可能にする「デパッケージング技術」

メタン発酵において最大の課題となるのが、プラスチックなどの不純物の混入です。

Divertの技術は、食品廃棄物の包装を効率的に取り除き、中の有機物のみ嫌気性消化槽に投入する「デパッケージ技術」が特徴です。

これにより、発酵槽のトラブルを防ぎ、同時に高品質な消化液(土壌改良材)の生産を実現しています。

三菱商事のRNG世界戦略

三菱商事は今回の提携で、RNGを日本や世界市場へ供給する新ルートの構築を明言しています。

三菱商事はLNG事業で50年超の実績を持ち、北米に築いたインフラ・トレーディング基盤の上に、RNGの日本輸入を重ねる構図が見えてきます。

また、三菱商事は2025年11月にシンガポール拠点のKISグループ(インドネシア事業)へ少数株主として出資し、東南アジア・インドでのBioCNG・BioLNG事業に参入しています。

参考記事:三菱商事が世界バイオガス市場に参入 KISグループに出資

日本国内では2050年のガスCN化目標に向け、ガスの脱炭素化需要が急拡大しており、総合商社・ガス大手企業によるメタネーション技術の開発や、海外RNG・e-メタン事業への参入が相次いでいます。

参考記事:バイオメタン・e-メタン・メタネーション

三菱商事は世界で拡大しているRNGやe-メタン需要に対応するため、さらなる投資を進める方針です。


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