設備の不具合やコストの問題で停止したプラント、事業を中止したプラントを再稼働させます。
何らかの原因でプラントが完全に停止した場合、直して利用するか建て替えるかを決める必要があります。
設備の劣化がプラント停止の原因とは限らず、立ち上げられる技術者がいなくなった、あるいは事業収支が続かないという理由で止まっているプラントもあり、原因の見極めがその後の判断を左右します。
なお、止まった原因が発注や引き継ぎの段階にさかのぼることもあります。誰にどこまで頼むかを決める段階の論点は、バイオガスプラントの設計施工にまとめました。
再稼働か建て替えか 何で判断するか

プラントが止まる理由は、設備の故障だけではありません。運営を担う会社の経営が行き詰まり、設備は健全なまま操業だけが止まることもあります。
このとき問題になるのが、設備の所有者と操業する会社が別になっている場合です。
発電設備を特別目的会社が保有し、廃棄物の受入と運転を別の事業会社が担うスキームでは、操業会社が倒れても設備そのものは残ります。
逆に、売電収入は設備を保有する側に帰属するため、処理料金だけで運転費用を賄えなかった操業会社が先に行き詰まる、という事態も起こります。
止まったプラントを引き継ごうとするとき、まず確かめるのはこの権利関係です。誰が設備を持ち、誰がFIT認定を受け、誰が操業するのか。ここが整理できないと、再稼働の話は前に進みません。
権利関係の目処が立ったら、次は設備を直せるかどうかの判断です。
ただし、停止したプラントの相談を受けた業者は、建て替えを提案してくることも珍しくありません。新設のほうが技術的な不確実性が小さく、引き受ける側のリスクも低いためです。
もっとも建て替えには、あらためて許認可の取得と工事の期間がかかります。稼働までの時間で比べると、再稼働が有利になる場合があります。判断材料は次の5つです。
- 権利関係が整理できるか 設備の所有者、FIT認定事業者、操業主体がそれぞれ誰か
- 躯体と配管の健全性 腐食が構造に及んでいるか、部品交換で足りるか
- 制御システムを引き継げるか プログラムと設定値、竣工図が手元にあるか
- 部品供給が続くか メーカーが存続しているか、代替品を確保できるか
- 回収可能な期間が残っているか FITの調達期間は発電を止めていても進みます。停止が長引くほど、再稼働後に売電できる年数が短くなります
一度も運転しないまま止まっているプラントは、認定そのものが失効している可能性があります。認定年度によって扱いが異なるため、再稼働の検討に入る段階で認定の状態を確認してください。
制御システムを引き継げるか

この5項目のうち、実務で最も分かれ目になるのが制御システムです。バイオガスプラントの制御はメーカーごとに仕様が異なり、プログラムと設定値がなければ第三者は手を出せません。
設備が無傷でも、ここが欠けていると立ち上げられません。確認すべきは次の3点です。
- 制御プログラムと設定パラメータ 手元にあるか、変更履歴が追えるか
- 竣工図の最新版 施工中の変更が反映されているか。図面と現物が違うことは珍しくありません
- 技術者の確保 同型機を扱った経験のある技術者に依頼できるか
これらが揃わない場合でも、再生が不可能とは限りません。ただし調査に要する時間と費用は大きく変わります。
引渡しの時点で何を受け取っておくべきかは、設計施工のページで解説しています。
可否を調べる3つのステップ
判断は次の順で進めます。
- 現状の把握 故障箇所と劣化状況、部品調達の可否と納期、過去の保守記録の有無
- 費用と期間の算出 修理費、再稼働後の保守費用、作業に要する期間
- 収益性の再確認 原料を安定調達できるか、再稼働後の発電量、FIT/FIPの残存条件
調査の速さを大きく左右するのが、過去の保守記録の有無です。何がいつ交換されたかが分かれば、点検の的を絞れます。記録の残し方は設備機器・CHPの保守メンテナンスで解説しています。
4年以上止まっていたプラントを動かすまで

北海道厚岸郡のバイオガスプラントは、2018年に建設が決定し、コンサルティング会社、建設工事会社、プラント一式を請け負う業者の3社体制で分離発注されました。
2020年冬期に建設工事が完了し、請負業者の指導のもと翌春からの稼働を予定していましたが、新型コロナの影響でドイツからの技術者派遣が困難となり延期されます。
2022年春の再開を目指していたところ、その請負業者が倒産します。立ち上げを担う相手がいなくなり、他の業者に協力を要請しても受託する会社は現れず、返ってきたのは施設建て替えの提案だけでした。
こうしてプラントは動かないまま、数年間放置されていました。
シーエープラントは2023年9月から運営業者との協議を開始し、2024年6月に再生業務へ着手しました。現在は正常に稼働し、発電と売電を行っています。
点検と立ち上げに要した期間
再生に要した期間は次のとおりです。
- ガス漏れ等の点検 4か月
- 設備・機器のチェック 6か月
- メタン発酵の準備期間 45〜60日
設備そのものの劣化は軽微で、ポンプ交換などで済みました。それでも1年近くを要したのは、点検の対象が広いことと、発酵の立ち上げに時間がかかることによります。
CHPはドイツのHagl社製で、整備にあたっては本国から技術者を招集しました。シーエープラントはプラント管理業務の経験を活かし、設備やシステムを入れ替えることなくプラントを再生させています。
言い換えれば、このプラントが止まっていた理由は設備の故障ではなく、立ち上げられる技術者がいなくなったことでした。停止の原因を設備だけに求めると、判断を誤ります。
止まっている間に何が劣化するか

停止中のプラントは、動いているときとは違う壊れ方をします。見積りを依頼する前に、次の4点を確認してください。
- 配管内のドレン 運転中は流れとともに排出されますが、停止中は滞留したままになります。寒冷地では凍結して配管を損傷します
- シール類とパッキン 乾燥と経年で硬化し、再稼働時に漏れの原因になります
- 発酵槽内の堆積物 撹拌が止まるとスカムと沈殿物が分離して堆積します。清掃には槽を空ける作業が必要です
- 種汚泥 基質の供給が止まると微生物相が失われ、発酵の立ち上げをやり直すことになります
4つ目が、厚岸の事例でメタン発酵の準備期間に45〜60日を要した理由です。設備が無傷でも、微生物は時間をかけて育て直すほかありません。
なお、稼働中に起きるトラブルは、原料の品質、設備と配管、消化液と排水、火災や爆発の4系統に分かれます。それぞれの原因と対策はメタン発酵プロセスのモニタリングとトラブル対策と安全管理と事故・異常対応マニュアルで解説しています。
バイオガステックの再生・再稼働サービス
バイオガステックは、株式会社シーエープラントのプラント立ち上げ・試運転の経験をもとに、停止したプラントの調査から再稼働までを支援します。
以下のケースをはじめ、海外メーカー製の設備や、メーカーと連絡が取れなくなった設備についてもご相談を承ります。
- 止まった原因が特定できない
- 再稼働と建て替えのどちらが得か判断できない
- 制御システムを触れる技術者がいない
- プラントを建設した業者や設備メーカーが倒産した、連絡がつかなくなった
- メタンガスの発生量が想定を下回り、発電収益が出ない
新設した場合の費用は、建設費と運用コストをご参照ください。




