バイオガスプラントの精製装置は、硫化水素(H₂S)やCO₂を除去し、ガス品質を利用用途に応じたレベルまで高めるための設備です。
発電利用であれば脱硫装置が中心になりますが、都市ガス導管への注入やバイオメタン製造には、CO₂除去装置(アップグレーディング装置)の導入が欠かせません。
この記事では以下の装置について、機器構成・設置面積・消耗品・運転管理・導入コストの観点から比較し、プラントの規模や原料に応じた選定の考え方を解説します。
- 脱硫装置
- CO₂除去装置(アップグレーディング装置)
- 熱量調整装置・付臭装置
- 圧縮・充填装置
- オフガス処理装置
- 除湿装置・シロキサン除去装置
各方式の分離原理、用途別の品質基準、方式ごとのメタン回収率については「バイオガス精製とは? 脱硫・CO₂除去の方式と原理を解説」をご参照ください。
バイオガス精製装置の構成と用途別の必要設備
バイオガス精製装置は、除去する対象によって大きく2つの装置群に分けられます。
- ガスクリーニング装置(脱硫・除湿・シロキサン除去):H₂S・水分・シロキサンなどを除去する装置です。ガスエンジン発電やボイラー利用など、ほとんどのバイオガス利用で設置が必須となります。
- アップグレーディング装置(CO₂除去装置):CO₂を除去してメタン濃度を95%以上に高め、天然ガスと同等品質の「バイオメタン」を製造する装置です。都市ガス導管注入や車両燃料(bio-CNG)として利用する場合に必要となります。
精製装置はメタン発酵槽とエネルギー利用設備の間に設置され、「一次脱硫 → 除湿 → 二次脱硫(精密脱硫)→ 加圧 → 脱炭酸(バイオメタン化の場合)→ 品質調整・出荷加圧」という流れで構成されます。
プラント設備全体における精製装置の位置づけは、バイオガスプラントの設備と機能で解説しています。
| 利用用途 | 必要な装置構成 | 装置選定上の要点 |
|---|---|---|
| ガスエンジン発電(FIT/FIP) | 脱硫装置 + 除湿装置 + シロキサン除去 | 入口H₂S濃度がオイル交換頻度に直結。エンジンメーカーの許容値を先に確認 |
| ボイラー・直接燃焼 | 脱硫装置(簡易)+ 除湿装置 | 最も要求水準が低い。設備を過剰にしない |
| マイクロガスタービン | 脱硫装置 + 除湿装置 + シロキサン除去 | H₂S耐性は機種差が大きく、レシプロ機の数倍を許容する製品もある。個別確認が必須 |
| 燃料電池(SOFC等) | 高精度脱硫装置 + 除湿装置 + シロキサン除去 | 改質触媒とセルスタックの両方を保護するため、精密脱硫塔が必要 |
| 都市ガス導管注入 | 脱硫 + 除湿 + シロキサン除去 + CO₂除去 + 熱量調整 + 付臭 | 法定基準に加え、受入先ガス事業者の条件を満たす設備仕様が必要 |
| 車両燃料(bio-CNG) | 脱硫 + 除湿 + CO₂除去 + 圧縮・充填装置 + シロキサン除去 | 高圧圧縮機と充填設備が加わり、高圧ガス保安法の適用範囲が広がる |
用途ごとに要求されるメタン濃度・H₂S上限・シロキサン上限の具体的な数値は、バイオガス精製とは? 脱硫・CO₂除去の方式と原理を解説の用途別一覧表にまとめています。
このうち都市ガス導管注入では、ガス事業法関係法令が定める法定上限を満たすだけでは足りません。受入先のガス事業者が独自に定める購入条件のほうが厳しく、法定値の20分の1程度を求める例もあるためです。装置仕様は法令ではなく受入先の条件から逆算してください。
ガスエンジンCHPの機種別要件については、バイオガスプラントの発電機・コージェネレーションシステム(CHP)もあわせてご参照ください。
装置選定の判断軸と導入コスト
精製装置の選定は、プラントの事業収支と長期的な運用効率を左右する投資判断です。個々の装置仕様に入る前に、まず全体の絞り込み方を押さえておきましょう。
選定の判断軸
装置構成を決める際は、次の順序で条件を絞り込むのが実務的です。
- 利用用途と受入先の品質要求:最も厳しい条件を満たす構成が下限になります。過剰品質はそのままCAPEXの無駄になります。
- 原料の種類とH₂S発生濃度:下水汚泥や食品残さは高濃度になりやすく、脱硫の多段化が前提になります。
- プラント規模とガス処理量:脱炭酸装置のコストは規模に大きく左右されます。
- 排熱の利用可能性:アミン洗浄装置を選べるかどうかが、ここで決まります。
- 設置スペース:水洗式とアミン洗浄は大型です。敷地に制約がある場合は膜分離が有利になります。
- メンテナンス体制:海外製装置では、技術者派遣や部品調達のリードタイムが運用リスクになります。
プラント規模・原料別の推奨装置構成
小規模農業系プラント(~200 Nm³/h、発電利用)
乾式脱硫装置のみ、または槽内脱硫と乾式脱硫の組み合わせで足りる場合が多く、H₂S濃度が低い原料(家畜ふん尿主体)であれば、構成をシンプルに保ってCAPEXを抑制できます。小規模向けにはコンテナ型のパッケージ製品もあり、小型・分散型バイオガスの関連記事で事例を紹介しています。
中規模プラント(200~1,000 Nm³/h、発電利用)
生物脱硫装置(一次脱硫)と乾式脱硫装置(二次脱硫)の組み合わせが標準的です。H₂S濃度が高い原料ほど、この構成によるランニングコストの削減効果は大きくなります。
バイオメタン製造プラント(都市ガス注入・車両燃料用)
脱硫装置に加えてCO₂除去装置が必要です。小規模であれば膜分離装置かPSA/VPSA装置、大規模であればアミン洗浄装置か水洗式装置が有利になる傾向があります。CHPの排熱を利用できる立地であれば、アミン洗浄装置のOPEXを大きく削減できます。
導入コストの目安(CAPEX・OPEX)
コストはガス処理量や要求仕様によって大きく変動するため、以下は一般的な目安です。
| 装置タイプ | CAPEX目安(設備費) | OPEX目安(年間維持管理費) |
|---|---|---|
| 乾式脱硫装置 | 数百万~数千万円 | 吸着剤交換費が主(ガス量・H₂S濃度に依存) |
| 生物脱硫装置 | 数千万円~ | 電力費・水道費が主(吸着剤不要のため低い) |
| CO₂除去装置(全方式共通) | 数千万~数億円(250~1,000 Nm³/h規模) | 電力費・薬品費・メンテナンス費(方式により異なる) |
| 熱量調整・付臭装置 | 数千万円~ | LPG調達費・付臭剤費 |
| オフガス処理装置 | 方式・処理量による | 電力費・補助燃料費 |
プラント全体の建設費・運転コストの内訳はバイオガスプラント建設費と運用コストで解説しています。
脱炭酸装置のコストは、技術方式の違いよりもプラント規模の影響が大きいことが知られています。方式選定の前にまず処理量を確定させることが、精度の高い見積もりにつながります。
なお、精製装置の導入には、環境省や農林水産省の補助制度を利用できる場合があります。対象設備や補助率は年度ごとに変わるため、計画段階で最新の公募情報を確認してください。
制度の種類と適用条件はバイオガスプラント 補助金・助成金の活用と適用条件で解説しています。
また、下水処理場での新技術導入については、国土交通省の上下水道一体革新的技術実証事業(AB-Crossプロジェクト、旧B-DASH)による実証の枠組みもあります。
正確なコスト算定には、原料組成の分析結果、利用先の品質要求仕様、設置場所の条件を踏まえた個別のFS(フィージビリティスタディ)が必要です。
脱硫装置の種類と仕様比較
脱硫装置はバイオガスプラントで最も基本的な精製設備です。H₂Sの除去は、発電設備の保護と安定運用に欠かせません。
ただし、H₂Sへの対策は装置側だけではありません。発酵槽に鉄塩を添加してH₂Sの発生自体を抑える前段対策もあり、吸着剤の交換頻度を下げられます。装置OPEXの削減策として、メタン発酵プロセスのモニタリングとトラブル対策とあわせて検討してください。
乾式脱硫装置(酸化鉄・活性炭吸着塔)
円筒形の脱硫塔に酸化鉄(Fe₂O₃)ペレットや活性炭を充填し、バイオガスを通過させてH₂Sを化学吸着する装置です。小規模プラントや、精密脱硫の最終段として広く使われています。
- 処理ガス流量:数十~数千 Nm³/h
- 装置形式:縦型円筒タンク(1塔式または2塔切替式)
- 設置面積:小~中(コンパクト設計が可能)
- 消耗品:酸化鉄剤・活性炭(交換サイクル3〜12か月、入口H₂S濃度と塔サイズに依存)
- 廃棄物:使用済み吸着剤は硫黄分を含むため産業廃棄物として処理
2塔切替式を採用すれば、一方を運転しながらもう一方の吸着剤を交換できるため、連続運転が可能になります。
装置費は抑えられる一方で、OPEXの大半を吸着剤の交換費が占める点がこの方式の特徴です。入口H₂S濃度が高いほど交換頻度も上がるため、前段に生物脱硫を置く多段構成のほうが費用対効果に優れます。
活性炭の種類も選定要素のひとつです。酸素酸化を利用するタイプは導管注入や車両燃料に適さないため、これらの用途では酸素添加を必要としないKI添着炭や過マンガン酸塩含浸炭を選ぶ必要があります。
生物脱硫装置(微生物脱硫塔)
硫黄酸化細菌を定着させた充填材を内蔵する塔型装置で、バイオガスと少量の空気を送り込んでH₂Sを酸化分解します。
- 処理ガス流量:数十~数千 Nm³/h(乾式に比べ大流量に対応しやすい)
- 装置形式:充填塔型、ガスホルダー一体型
- 設置面積:中~大
- 消耗品:なし(充填材は長寿命、年1回程度の洗浄)
- 装置寿命:15〜20年
ガスホルダーと一体化したタイプ(内壁に微生物を定着させる方式)もあるため、独立した装置を設置するスペースがない場合でも導入できます。
吸着剤が不要でランニングコストが低い点が最大のメリットです。ただし微生物の立ち上げにはノウハウが必要で、温度・pH・酸素供給量の適正管理が求められます。空気導入によってバイオガスにN₂が混入する点(0.5~3%程度)にも留意が必要です。
導管注入・車両燃料を目指す場合は注意してください。生物脱硫にはガス中に酸素が残る問題があり、これらの用途には適しません。H₂Sの吸収と生物学的酸化を分離して酸素の混入を防ぐ方式を選ぶか、乾式脱硫を主体とする構成を検討することになります。
湿式脱硫装置(スクラバー方式)と槽内脱硫
湿式脱硫装置は、苛性ソーダ(NaOH)水溶液やキレート鉄溶液を循環させる洗浄塔で、H₂Sを化学吸収する装置です。超高濃度ガスの処理に有効ですが、苛性溶液の取り扱いに高い技術要件が伴うため、非常に大量のガスを処理する場合を除き、現在ではあまり採用されていません。国内のバイオガスプラントでの導入例も限定的です。装置には耐腐食性の高い素材(SUS316L、FRP等)が使用されます。
槽内脱硫(発酵槽内空気導入方式)は、メタン発酵槽のヘッドスペースに微量の空気を導入し、槽内の硫黄酸化細菌でH₂Sを分解する方式です。追加の装置を設置せずに済むため極めて低コストですが、空気導入量の精密な制御が必要なうえ、単独では脱硫が不十分です。補助的な一次脱硫として、他の装置と併用するのが前提になります。
脱硫装置の仕様比較
| 比較項目 | 乾式脱硫装置 | 生物脱硫装置 | 湿式脱硫装置 | 槽内脱硫 |
|---|---|---|---|---|
| 初期投資額(CAPEX) | 低~中 | 中 | 高 | 極低(制御機器のみ) |
| ランニングコスト(OPEX) | 高(吸着剤交換費) | 低(電力+水のみ) | 中~高(薬品費+排水処理) | 極低 |
| 主な消耗品 | 酸化鉄剤・活性炭 | なし(充填材は長寿命) | 薬品(NaOH等) | なし |
| メンテナンス頻度 | 吸着剤交換:年1~数回 | 充填材洗浄:年1回程度 | 薬品補充:随時 | 空気量調整:常時監視 |
| 設置面積 | 小~中 | 中~大 | 大 | なし(既設槽利用) |
| 適用規模 | 小~中規模 | 中~大規模 | 大規模・産業用 | 全規模(併用前提) |
| 導管注入用途への適性 | ◎ | △(残留酸素) | ○ | × |
実務上は、生物脱硫装置で大半のH₂Sを除去し(一次脱硫)、乾式脱硫装置で仕上げる(二次脱硫)組み合わせが、多くのプラントで採用されています。この構成なら乾式吸着剤の消費量と交換頻度を削減でき、維持管理コストを全体として最適化できるためです。
CO₂除去装置(アップグレーディング装置)の構成と選定
バイオメタン製造が目的の場合、バイオガスの30~50%を占めるCO₂を除去する装置が必要です。方式は膜分離・PSA/VPSA・アミン洗浄・水洗式の4種に大別されます。
各方式の分離原理、メタン回収率、エネルギー消費、メタンスリップの比較はバイオガス精製とは? 脱硫・CO₂除去の方式と原理を解説で扱っています。
ここでは装置としての機器構成と、調達・運用の観点から見た選定基準を整理します。
膜分離装置
高分子膜モジュールでCO₂とメタンを分離する装置です。
- 主な機器構成:圧縮機、前処理フィルター、膜モジュール(多段)
- 設置面積:小(4方式で最もコンパクト)
- 消耗品・交換周期:膜モジュール(5〜7年、前処理の精度に依存)、前処理フィルター
- 前処理要件:H₂S除去・除湿が必須(膜の劣化防止)
- 運転管理の要点:前段の除湿・脱硫の精度が膜寿命を直接左右する
可動部が少なくメンテナンスが容易で、モジュール構成のため増設や交換にも柔軟に対応できます。
段数を増やせば純度と回収率は上がりますが、その分だけ圧縮動力も増えるため、要求純度に見合った構成設計が必要です。
PSA・VPSA装置
吸着剤を充填した複数の吸着塔で、加圧吸着と減圧脱着を繰り返してCO₂を除去する装置です。VPSAは真空ポンプを併用することで、再生効率を高めています。
- 主な機器構成:圧縮機、吸着塔4〜9基、切替バルブ、(VPSAは真空ポンプ)
- 設置面積:中
- 消耗品・交換周期:吸着剤(5〜10年)
- 前処理要件:H₂S除去・除湿が必須
- 運転管理の要点:切替バルブの動作信頼性が稼働率を左右する
前処理の失敗が致命傷になる方式です。H₂Sは吸着剤に不可逆的に吸着され、水分は吸着剤の構造そのものを破壊します。
前処理設備を削れば本体の寿命を失うことになるため、ここはCAPEXの圧縮対象にしてはいけません。
国内では旭化成が独自のPVSA方式を開発し、岡山県倉敷市の児島下水処理場での実証試験で高い純度と回収率を両立しています。
アミン洗浄装置
アミン溶液でCO₂を化学吸収し、加熱再生によって脱離・回収する装置です。
- 主な機器構成:吸収塔、再生塔、リボイラー、熱交換器
- 設置面積:大
- 消耗品:吸収液の補充(経年劣化するため定期補充・交換)
- ユーティリティ:160℃級の熱源が必須
- 運転管理の要点:吸収液の劣化管理と耐腐食管理
メタンロスが4方式で最小のため、ガス販売収入の面では有利です。ただしCHPの排熱を利用できることが事実上の導入条件となり、熱源の当てがない立地では選択肢から外れます。一方で回収CO₂の純度は最も高く、食品グレードでの販売を狙うのであれば有力な選択肢になります。
水洗式精製装置(水スクラビング・PWS)
バイオガスを4~10barに加圧し、高圧水と向流接触させてCO₂を溶解分離する装置です。
- 主な機器構成:圧縮機、吸収塔、フラッシュタンク、脱離塔、循環ポンプ、冷却設備
- 設置面積:大
- 消耗品:なし(薬品不要)
- ユーティリティ:大量の水と循環動力、排水処理が必要な場合あり
- 運転管理の要点:循環水の水質管理
薬品も吸着剤も使わないため消耗品コストがかからず、運転も安定します。装置は大型化しますが、下水処理場など水資源が豊富な立地であれば、最も管理負荷の低い方式といえます。下水処理場でのバイオガス利用の全体像は下水処理場のバイオガス発電 下水汚泥のエネルギー化で解説しています。
CO₂除去装置の機器構成比較
| 比較項目 | 膜分離 | PSA / VPSA | アミン洗浄 | 水洗式 |
|---|---|---|---|---|
| 主な機器構成 | 圧縮機、前処理フィルター、膜モジュール | 圧縮機、吸着塔4〜9基、切替バルブ | 吸収塔、再生塔、リボイラー、熱交換器 | 吸収塔、フラッシュタンク、脱離塔、循環ポンプ |
| 設置面積 | 小 | 中 | 大 | 大 |
| 消耗品・交換周期 | 膜モジュール(5〜7年) | 吸着剤(5〜10年) | 吸収液の補充 | なし |
| 熱源の要否 | 不要 | 不要 | 必要(160℃級) | 不要 |
| 可動部の多さ | 少(圧縮機のみ) | 中(切替バルブ多数) | 多 | 多(ポンプ・冷却) |
| 前処理の厳しさ | 高 | 最も高い | 中 | 中 |
| 適用規模 | 小~大規模 | 小~大規模 | 中~大規模 | 中~大規模 |
| 回収CO₂の純度 | 中 | 中 | 高(食品グレード対応可) | 低 |
熱量調整装置・付臭装置 バイオメタン出荷に必要な設備
都市ガス導管への注入を目指す場合、CO₂除去装置の後段に熱量調整と付臭の設備が必要になります。
国内の都市ガス13Aとバイオメタンには熱量差があり、この工程は国内案件で必ず発生するためです。
海外の導入事例をベースにした資料では抜け落ちやすい設備なので、事業計画の初期段階から織り込む必要があります。ただし、熱量調整設備を誰が持つかは事業スキームによって変わります。
ガス製造所へ原料として供給する場合は、熱量調整をガス事業者側の設備で行う事例があり、プラント側の設備投資を抑えられます。導管へ直接注入する場合はプラント側に一式が必要です。
熱量調整装置(LPG添加設備)
- 主な機器構成:LPG貯槽、気化器、混合器、流量制御装置、熱量計
- 消耗品・ユーティリティ:LPG(プロパン・ブタン)
- 運転管理の要点:バイオメタン流量の変動に追従した混合比の制御
LPGの調達コストは継続的なOPEXとして発生し、価格変動のリスクも伴います。また、貯槽の設置には高圧ガス保安法にもとづく手続きが必要です。
熱量調整がなぜ必要なのか(13Aとバイオメタンの熱量差、ウォッベ指数)については、バイオガス精製とは? 脱硫・CO₂除去の方式と原理を解説で解説しています。国内の導管注入案件の動向は国内初のバイオメタン都市ガス利用へ 北海道鹿追町・エア・ウォーター・帯広ガスが連携をご参照ください。
付臭装置
ガス漏れ検知のための付臭は、ガス事業法関係法令の要件であり、注入量の管理記録が求められます。
- 主な機器構成:付臭剤タンク、注入ポンプ、混合部
- 消耗品:付臭剤(TBM=ターシャリーブチルメルカプタン、THT=テトラヒドロチオフェン、CH=シクロヘキセン等)
- 運転管理の要点:ガス流量に応じた注入量の制御と臭気濃度の管理
付臭剤は硫黄分を含むものが主流でしたが、環境負荷低減のため硫黄分を含まないシクロヘキセンを混合する切り替えが進んでいます。
圧縮・充填装置(bio-CNG向け)
車両燃料として利用する場合は、精製後のバイオメタンを高圧圧縮する設備と充填設備が必要です。
- 主な機器構成:高圧圧縮機、蓄ガス器、ディスペンサー(充填機)
- 運転管理の要点:高圧ガス保安法にもとづく保安体制の整備
圧縮充填圧力が1.0MPa以上となるため高圧ガス保安法の適用を受け、保安統括者等の選任や設備距離の確保といった法対応が設備計画に直結します。
導管注入と比べて法規制の対象範囲が広がる点は、事業スキームを選定するうえで重要な違いです。
オフガス処理装置(RTO・触媒酸化装置)
CO₂除去装置から排出されるオフガスには、分離しきれなかったメタンが残ります。これは販売できるはずだったガスの逸失(メタンロス)であり、そのまま大気へ放出すれば温室効果ガスの排出(メタンスリップ)にもなります。
オフガス処理装置が抑えられるのはスリップであって、ロスそのものを取り戻すわけではありません。だからこそ、方式選定の段階でメタンロスの量を評価しておく必要があります。
アミン洗浄以外の3方式を採用する場合は、オフガス処理装置をセットで検討してください。方式本体の価格差だけで比較すると、この設備費と電力消費が見落とされてしまうためです。
オフガスのメタン濃度は、単独で燃焼を維持できる水準に達しないことが多くあります。そのため燃焼用空気と混合する、あるいは天然ガスやバイオガスを添加するといった運用が前提になります。
オフガスをプラント内で再利用(生ガス入口へ返送)する構成も選択肢のひとつです。
RTO(蓄熱式燃焼装置)
セラミック蓄熱材を充填した複数の蓄熱層にオフガスを通し、850〜950℃の酸化室でメタンを燃焼させます。
起動後に運転温度が安定すれば、酸化で生じる熱で装置の機能を維持できるため、補助燃料が不要になります。
ただし、自立運転が成立するのは可燃分の濃度が一定以上ある場合で、メタン濃度が低すぎると補助燃料が恒常的に必要になります。定期的にガスの流れを反転させる制御も必要です。
また、火炎を用いずに酸化させるFLOX(無炎酸化)方式の装置も商用化されています。
触媒酸化装置
白金・パラジウム・コバルトなどを活性成分とする触媒の表面でメタンを酸化します。触媒が反応に必要なエネルギーを下げるため、RTOより低温で処理できます。
メタンロスの経済インパクトの試算は、バイオガス精製とは? 脱硫・CO₂除去の方式と原理を解説で扱っています。
除湿装置・シロキサン除去装置
除湿装置
メタン発酵槽から排出されるバイオガスは水蒸気で飽和しています。配管内で発生する凝縮水は腐食や閉塞の原因となるため、ガスクーラー(冷却式凝縮器)とデミスター(液滴分離器)で水分を除去します。
後段にPSA装置や膜分離装置を設置する場合は、装置保護のため、シリカゲルやモレキュラーシーブを用いた吸着乾燥器を追加して露点をさらに下げます。吸着材は加熱または減圧によって再生します。
なお、冷却除湿は水分だけを除去するわけではありません。冷却温度を下げるほど、シロキサンやハロゲン化炭化水素・重質炭化水素も同時に凝縮除去されます。
除湿装置の設計温度は、後段のシロキサン除去装置における活性炭の消費量に直接影響するため、両者は一体で設計するのが合理的です。
シロキサン除去装置
シロキサンは燃焼時に二酸化ケイ素(SiO₂)となり、ガスエンジン内部に硬質な堆積物を形成してエンジン寿命を縮めます。
商用化されている除去方式は吸着・吸収・深冷冷却の3つです。実務では活性炭吸着塔を用いるのが一般的で、専用装置も市販されています。
家畜ふん尿を単独で処理するプラントではシロキサン濃度が低く、除去装置が不要な場合もあります。
ただし、食品残さなどを混合発酵する場合は、受入原料によって濃度が変動するため、事前分析にもとづく判断が必要です。
活性炭は吸着容量に上限があり、飽和後は交換しなければなりません。装置の設計にあたっては、想定シロキサン濃度と交換周期からOPEXを試算してください。
また、埋立地ガスを原料とする場合は脱硫・CO₂除去に加えて、シロキサンとハロゲン化合物の除去も必要となり、要求水準が一段上がります。
参考記事:埋立地ガス(LFG)とは? 組成・回収方法と3つの用途
バイオガス精製装置の運転管理とメンテナンス
精製装置を長期にわたって安定稼働させるには、日常の運転管理と定期メンテナンスが欠かせません。
- 防食対策:ガス接触部にはSUS316Lやガラスライニング鋼板、FRPなどの耐腐食材料を使用し、配管の勾配設計でドレン排出を確保します。
- ガスのモニタリング体制:精製前後のH₂S濃度、CO₂濃度、水分含有量をリアルタイムで計測し、装置の性能劣化を早期に検知できるセンサーシステムを導入します。
- 予備品の交換管理:吸着剤、フィルターエレメント、膜モジュールなどの消耗品は、供給リードタイムを考慮して適切なタイミングで交換します。
- 安全設計:精製装置の周辺には固定式のH₂S検知器・メタン検知器と換気設備を設置します。特に活性炭塔や吸着塔の交換作業では、酸素・可燃性ガス(LEL)・H₂S・一酸化炭素を同時測定する多点式ガス検知器による事前測定と連続監視を行い、密閉空間作業の安全手順を徹底する必要があります。CO₂による酸素欠乏はH₂S検知器では検知できないため、酸素濃度の測定を省略してはいけません。
- 微生物管理(生物脱硫):空気導入量、循環水のpH・温度を適正範囲に維持します。微生物の活性が低下すると脱硫性能が急落するため、定期的なモニタリングが重要です。
- ガス品質の連続記録:都市ガス注入を行う場合、ガス事業法にもとづく品質検査と記録の保管が義務づけられています。自動記録システムの導入が望ましいでしょう。
- ガス検知器の校正管理:H₂S・メタン・酸素の各検知器は、立入作業前のバンプテストと定期的な標準ガスによる校正が必要です。センサーには寿命があり、校正記録とあわせて交換履歴を管理してください。
バイオガス設備では、硫化水素中毒による死亡事故が実際に発生しており、安全設計には特に注意を払う必要があります。
プラント全体の保守計画と安全管理体制については、バイオガスプラントのメンテナンス計画と日常点検およびバイオガスプラントの安全管理と事故・異常対応マニュアルで解説しています。
バイオガス精製装置メーカー・調達先
装置の調達先は、国内メーカー・海外メーカー・EPC事業者の3系統に分かれます。
国内では、生物脱硫装置の荏原実業やフソウ、精製・アップグレーディング装置のカナデビア(旧:日立造船)、神鋼環境ソリューション、エア・ウォーターなどが代表的です。膜分離方式では、東京ガス/東京ガスエンジニアリングソリューションズが商用運転の実績を持ちます。国内メーカーの詳細な一覧と各社の特徴は、日本の主要バイオガスプラントメーカー・プロバイダーにまとめています。
海外では、膜分離のAir LiquideやProdeval(仏)、水洗式のMalmberg(スウェーデン)などが世界的な実績を持ちます。ただし海外製を採用する場合は、技術者派遣や部品供給のリードタイムを事前に確認しておく必要があります。
ヨーロッパのメーカー:RNGアップグレーディング・プラント設備メーカー・技術プロバイダー
アメリカ・カナダのメーカー:プラント建設(EPC)・RNGアップグレーディングメーカー・プロバイダー
バイオガス精製装置 参照データ・出典・関連記事
IEA Bioenergy:Biogas upgrading technologies – developments and innovations
環境省:メタンガス化施設整備マニュアル
国土交通省:下水汚泥エネルギー化技術ガイドライン(平成29年度版)
参考記事:日本のバイオガス・バイオメタン業界団体・技術資料・統計情報
関連記事:バイオガス精製とは? 脱硫・CO₂除去の方式と原理を解説
関連記事:バイオガスプラントの仕組み 基礎知識やメリット・建設コストを解説
関連記事:バイオガスプラントの発電機・コージェネレーションシステム(CHP)
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