東京ガスが海外産バイオメタン都市ガスを産業部門に供給

東京ガスが海外産バイオメタン都市ガスを産業部門に供給

東京ガスと東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)は2026年3月25日、海外産バイオメタンを原料とした都市ガスを、2026年度より国内メーカーに供給することについて合意したと発表しました。

東京ガス プレスリリース:海外産バイオメタンを原料とした都市ガス供給に関する合意について

供給先はアサヒグループジャパン、積水ハウス、日立製作所の3社で、海外産バイオメタンをメーカーに供給するのは国内初となります。

東京ガスは熱需要の脱炭素化に向け、米国のごみ埋立地由来のバイオメタンをLNG化して輸入し、既存の都市ガスインフラを活用してカーボンニュートラル化を進める方針です。

海外産バイオメタンを国内産業へ供給

今回の合意は、東京ガスが2024年3月に三井物産と共同で実施した、国内初の海外産バイオメタン約4万m³受け渡しの延長線上に位置付けられます。

バイオメタンは三井物産が出資参画するキャメロンLNG基地から出荷され、天然ガスの一部とみなしてLNG化し、東京ガスの扇島LNG基地で受け入れています。

海外産バイオメタンのサプライチェーン

それから約2年を経て、この調達スキームを実証段階から商用供給へと進めたのが今回の合意となります。

供給先のアサヒグループジャパン、積水ハウス、日立製作所は、いずれも自社のGHG排出削減目標を対外的にコミットしている大手需要家で、バイオメタン供給と需要家側の脱炭素ニーズを具体的に合致させています。

なぜ海外産なのか 国内供給量の制約

国内のバイオメタン供給は、北海道鹿追町の家畜ふん尿由来事例や、エア・ウォーターが手掛ける液化バイオメタン(LBM)の製造など、地域分散型で進展してきました。

参考記事:国内初のバイオメタン都市ガス利用へ 北海道鹿追町・エア・ウォーター・帯広ガスが連携

ただし、産業部門が必要とする大規模かつ安定的な量を国内のみで賄うのは現実的でなく、早期に脱炭素化を図るためには、海外産の活用が不可欠となっています。

RNG・e-メタンとバイオメタンの違い・技術的意義

バイオメタンは、有機性廃棄物の嫌気性消化で発生するバイオガスを精製し、メタン濃度を95%以上まで高めたもので、米国では「RNG(Renewable Natural Gas、再生可能天然ガス)」と呼ばれています。

主成分は都市ガスと同じメタンであるため、既存のLNGおよび都市ガスインフラをそのまま活用でき、追加的な社会コストを抑えたカーボンニュートラル化が可能です。

本来であれば大気中に放出されていた有機性メタン(CO₂の約28倍の温室効果)を回収・燃料化することで、温室効果ガスを直接削減できる点に意義があります。

e-メタン(合成メタン)との違い

東京ガスグループは「Compass2030」の下で、バイオメタン、e-メタン、水素、CCUSなど複数の脱炭素手段をポートフォリオとして組み合わせています。

東京ガス:東京ガスグループ経営ビジョン Compass 2030

その中で、バイオメタンは「早期に活用できる現実解」、e-メタンは「将来の主力候補」という棲み分けが想定されており、今回の産業供給は前者の役割を明確化する事例といえます。

項目海外産バイオメタンe-メタン(合成メタン)
原料ごみ埋立地ガス、家畜ふん尿等の有機性廃棄物グリーン水素+CO₂
製造プロセス嫌気性消化+精製(アップグレーディング)メタネーション(サバティエ反応等)
商業化の現状既に実装段階(欧米で広く普及)実証段階
早期導入可能性◎ 短期〜中期△ 中長期

SHK制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)改正の論点

SHK制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)は、一定量以上の温室効果ガスを排出する事業者に、温対法に基づく排出量の算定と国への報告を義務付け、その情報を国が公表・可視化する制度です。

SHK制度では従来、都市ガス使用に伴うCO₂排出量は省令で定められた一律の係数で算定されてきました。

令和7年度報告分から、ガス事業者別の基礎排出係数・調整後排出係数が導入され、さらにe-メタンについては国内産・海外産ともに排出ゼロ扱いとする方針が示されています。

アサヒグループジャパンは、今回の取り組みを「SHK制度における海外産バイオメタンの取り扱いに関して、制度整理の動向を踏まえた施策」と位置付けています。

SBTiに沿ったバイオメタン環境価値を反映

東京ガスは今後、SHK制度における基礎排出係数がゼロとなる都市ガスメニューを新たに開発し、需要家が実効性ある排出削減として計上できる仕組みを整える計画です。

国の審議会ではトラッキング方式や追加性要件、環境価値の二重計上防止など、海外産バイオメタン取扱いの制度設計が進められており、需要家のScope1排出量削減に直接寄与する仕組みが整うことになります。

また、SBTi(Science Based Targets initiative)でも、GHGプロトコルに沿ったバイオエネルギー分野の取り扱い基準改定が進んでおり、国内制度と国際基準の両方で、バイオメタンの環境価値を反映する土台が整いつつあります。

アサヒグループジャパンは2040年までに、SBTi準拠のGHG排出量ネットゼロを掲げています。

バイオメタンの海外サプライチェーン構築と国内供給

東京ガスは今後、米国以外の地域からもバイオメタン輸入を検討していく方針で、グローバルサプライチェーン構築が本格化する見込みです。

国内ではエア・ウォーターや鹿追町の事例に代表される分散型のバイオメタン・LBM製造が進展していますが、これらは地域循環・農畜産業との連携に強みを持つ一方、供給規模には限界があります。

供給という問題に対して、海外産バイオメタンは大規模需要地に対する量的解決策となり、国内産は地産地消・地域経済循環の役割を担うことになります。

  • 短期:海外産バイオメタン+ガス事業者別係数の活用で産業需要家のScope1削減を実装
  • 中期:米国以外の調達先多角化、バイオメタン証書制度の国際整合性確保
  • 中長期:e-メタンの商用化によるCO₂資源循環型のガス供給へ移行

今回の海外産バイオメタン供給は、日本のガス産業が「物理的な脱炭素ガス調達」と「制度的な排出係数ゼロ化」を同時並行で進める最初の本格ステージとなります。


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