東京ガスは2025年5月、下水汚泥由来のCO₂とグリーン水素からe-メタンを製造する実証事業について、東京都と協定を締結しました。
東京ガス グループトピックス:国内初!東京都産グリーン水素と下水汚泥由来のCO₂を活用したe-メタン製造実証◆東京都と協定締結
この記事は、協定締結の時点で公表された事業の枠組みを整理したものです。
実機が動き出した2026年6月以降の設備構成・製造能力・水素供給の実態は、東京ガスが森ヶ崎でe-メタン製造開始 消化ガスを分離せず合成で解説しています。
東京都の公募事業に東京ガスが採択
この事業は、東京都が公募した「東京都産グリーン水素と下水汚泥由来の二酸化炭素によるグリーンメタン製造(合成)事業」に東京ガスが採択されたものです。
東京都産業労働局:<募集は終了しました>東京都産グリーン水素と下水汚泥由来の二酸化炭素によるグリーンメタン製造(合成)を実施する事業者の募集
原料は2つあります。ひとつは東京都が大田区京浜島に整備するグリーン水素、もうひとつは大田区昭和島の森ヶ崎水再生センターで発生する下水汚泥由来の混合ガスに含まれるCO₂です。
両者は約1.5km離れており、水素はカードルで森ヶ崎へ運び入れる計画とされました。都の事業費負担は最大3億円、事業期間は令和7年度から令和8年度までの2か年です。
東京都は「2050東京戦略」の中で、水素エネルギーの社会実装化を強化ポイントに位置づけており、この事業はその一環にあたります。
東京ガスにとっては、2022年3月から続けてきたe-メタン製造実証の知見を、下水汚泥という新たな原料に適用する取り組みです。
国内初 混合ガスを分離せず連続供給
本事業の技術的な核心は、消化槽で発生する混合ガスをそのまま原料に使う点にあります。
下水汚泥を消化槽で処理すると、メタン(約60%)とCO₂(約40%)を主成分とする混合ガスが発生します。ここからCO₂だけを取り出そうとすると分離装置が必要になり、その分の設備コストが増加します。
そこで本事業では、CH₄とCO₂を分離せずに原料として供給します。混合ガスを直接配管で連続的に供給しながらメタネーション装置でe-メタンを製造する取り組みは、国内初とされています。
分離を挟まない場合、理論上はメタンの回収量が変わります。消化ガス100Nm³のうちCH₄が60Nm³、CO₂が40Nm³だとすると、精製ルートで得られるメタンは60Nm³です。
一方、CO₂もメタンに転換できれば合計100Nm³となり、およそ1.7倍になる計算です。
反応の仕組みはメタネーションとは? その仕組みと種類・実用化、精製ルートとの違いはe-メタン(合成メタン)とは? 作り方や課題・バイオメタンとの違いをご覧ください。
製造したe-メタンを資源・エネルギーに
製造されたe-メタンは、都市ガス導管へ注入されるわけではありません。
消化ガス系統に戻され、森ヶ崎水再生センターで稼働中の消化ガス発電の燃料として使われます。施設の外へ出さず内部で循環させる設計で、下水処理で生じたCO₂を場内で使い切る形になっています。
下水処理場は、都市部でCO₂を安定確保できる拠点であり、資源・エネルギーを生み出す拠点として位置づける試みが始まっています。
下水処理場のエネルギー利用の全体像は下水処理場のバイオガス発電 下水汚泥のエネルギー化で解説しています。
計画からメタネーション実証へ
協定締結の時点では、2025年度に基本計画の策定と装置の設置工事を進め、2026年度上期から製造を開始する計画が示されていました。その計画どおり、2026年6月に運転が始まっています。
設置されたメタネーション装置の製造能力、併設されたバイオガス精製装置との比較検証の狙い、そして水素の供給量から見えてくる制約については、続報で詳しく解説しています。
続報記事:東京ガスが森ヶ崎でe-メタン製造開始 消化ガスを分離せず合成
e-メタン・バイオメタンを詳しく知る

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