メキシコBrimexにバイオメタン商業化許可 SENERが交付

メキシコBrimexにバイオメタン商業化許可

メキシコのエネルギー省(SENER)は、Brimex Energy社に対し、同国初となる商業用バイオメタンの販売許可を正式に交付しました。

これと同時に「国家エネルギー移行標準化委員会」も始動し、これまで未整備だったバイオメタンの導管注入や、品質・安全性に関する国家基準づくりが本格化します。

Mexicobusiness.News:VI National Biogas Forum: the Sector Moves From Pilots to Permits

メキシコは、過去のバイオガスプロジェクトの多くが失敗に終わった教訓を活かすとともに、バイオガス・バイオメタンの本格的な商業化を目指します。

メキシコ初のバイオメタン商業許可

今回、SENERがBrimex社に交付した許可は、メキシコの新たな法律・規制のもと、バイオメタンを商業目的で販売することを正式に認めた国内初のケースとなります。

許可は新法の施行から、わずか4か月強という異例のスピードで交付されており、その直後となる2026年5月25日から「第6回国家バイオガスフォーラム」が開催されます。

メキシコのバイオガス業界団体「国家バイオガス評議会(CN Biogás)」のGuillermo Gómez会長は、「政府がバイオ燃料やバイオガスを重要な戦略資源として認識している証拠だ」と高く評価しています。

バイオメタン製造許可から2026年の商業化許可へ

Brimex社はすでに2024年4月の時点で、SENERの再生可能エネルギー総局から、バイオメタンの製造と貯蔵に関する許可を取得していました。

Holland & Knight:Holland & Knight Advises Brimex Energy on Obtaining Mexico’s First Biomethane Production and Storage Permit

これはバイオエネルギー区分として、国内初となる生産許可でしたが、2026年に交付された許可は一歩進んで、製造したバイオメタンを商品として、第三者に販売するための商業化許可となります。

製造のみの許可と実際にビジネスとして流通させる許可は、法律的にも実務的にも別物であり、後者の販売許可がメキシコ国内で交付されたのは今回が初めてとなります。

米国産天然ガスからの脱却

こうした動きの裏には、メキシコ政府が抱えるエネルギーの構造的な弱点があります。

米エネルギー情報局(EIA)などのデータによると、メキシコは国内で消費する天然ガスの約70〜77%をアメリカからの輸入に頼っており、特に発電分野での依存度が高まっています。

現在のSheinbaum政権は、エネルギーの主権確保を目標に掲げており、国内で生産できるバイオメタンは、輸入を少しでも減らせるという点で、戦略的な価値が認められつつあります。

Brimex Energy社の事業概要

Brimex Energy社は、メキシコのGrupo SerranoとイギリスのFarmergyによる合弁企業で、EU(欧州連合)の環境ビジネス支援プログラムのバックアップを受けて設立されました。

Brimex Energy:Brimex Energy

バイオメタンを製造するプラントは、ハリスコ州のラゴス・デ・モレーノに建設されています。

項目仕様
所在地ハリスコ州ラゴス・デ・モレーノ
原料処理量有機性廃棄物 約900t/日
バイオガス生産量27,000 m³/日
バイオメタン生産量約600 Nm³/h (14,400 m³/日)
発電出力499 kWh(系統注入)
主な原料豚糞尿、酪農廃液、テキーラ蒸留廃液(ビナサ)、下水汚泥

テキーラ・畜産・酪農の廃棄物を統合処理

バイオガスプラントでテキーラ・畜産・酪農の廃棄物処理

プラントが立地するアルトス地域は、メキシコ有数の養豚・酪農・テキーラ産業の集積地で、これらの産業は浄化が難しく、環境負荷の高い有機廃水を大量に排出します。

特にテキーラを作る際に出る廃液(ビナサ)は、強い酸性で水質汚染の指標(BOD・COD)も高く、地下水汚染の原因として長年問題になっていました。

Brimex社の施設は、こうした厄介な廃棄物をメタン発酵の原料として有効活用し、ゴミを出す側から処理費用を受け取るというビジネスモデルを構築しています。

欧州型循環経済モデルの移植

この「廃棄物処理費+エネルギー販売」の収益構造は、ドイツやフランスなど欧州バイオガス先進国で確立されたモデルを、メキシコの実情に合わせて移植したものです。

バイオメタンの価格が通常の天然ガスより高くても、ゴミの受け入れ料金(ティッピングフィー)の収入が加わるため、事業として成立します。

メキシコにおけるバイオガスの技術移転や人材育成は、ドイツ国際協力公社(GIZ)のメキシコ・エネルギー移行支援プログラムによって長期的なサポートが行われました。

SENERの国家エネルギー移行標準化が始動

今回の商業化許可と前後して動き出したのが、国家エネルギー移行標準化諮問委員会(Comité Consultivo Nacional de Normalización de Transición Energética)です。

これはSENERが主導し、関連する政府機関や業界団体が集まる枠組みで、再生エネルギーやEV、水素の他に、バイオ燃料とバイオガスも選ばれている点が重要です。

ガス導管注入規格の整備

国家エネルギー移行標準化委員会は、導管注入にあたって以下のようなルール策定に取り組んでいます。

  • 導管注入時の品質仕様(メタン濃度・ウォッベ指数・水分・硫黄化合物等)
  • 注入ポイントの計量・成分分析の運用ルール
  • 導管材質との適合性や安全管理の方法
  • 生産者と流通事業者間のインターフェース仕様

これまでメキシコでは、天然ガス管網へのバイオメタン注入が技術的に可能でも、国家技術基準(NOM等)が存在しないため、ビジネスとして本格的に実行できませんでした。

委員会の発足によって、バイオメタンの大規模展開がいよいよ始まったことを意味します。

バイオガス事業失敗の教訓と今後の展開

CN BiogásのGómez会長によると、2015年頃にバヒオ地域・ハリスコ州などで立ち上がった試験的なバイオガス事業のうち、現在も稼働しているものは1%未満だといいます。

失敗の原因は技術不足ではなく、事業関係者の役割分担が曖昧なまま、補助金頼みでスタートした「管理体制(ガバナンス)の甘さ」にありました。

その教訓を活かし、今回の委員会ではエネルギー事業者や政府機関、産業団体、研究機関などを一堂に集め、制度設計の初期段階から関係者間の調整を行います。

Brimex社は今後、ハリスコ州テパティトラン(Tepatitlán)で第2プラント建設の計画を進めており、アメリカ・ミネソタ州の酪農プロジェクトや、ゴミ埋立地ガス(LFG)事業への進出も検討しています。


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