北海道鹿追町、エア・ウォーター、帯広ガスの3者が、家畜ふん尿由来のバイオガスを精製してバイオメタンを製造し、都市ガス導管に注入する地産地消事業を開始すると発表しました。
バイオメタンを都市ガス導管に注入する取り組みは国内初となり、地域循環型エネルギーの実用化に向けて、各者が検証を行う予定です。
エア・ウォーター ニュースリリース:鹿追町・帯広ガス・エア・ウォーターの3者でバイオメタンの都市ガス混入に向けた共同検討を開始
鹿追町バイオメタンの都市ガス利用 事業概要

このプロジェクトのポイントは、国内有数の酪農地帯、鹿追町で発生した未利用バイオガスを活用するため、エネルギー需要の大きい帯広市の都市ガスインフラに接続する点にあります。
これまで鹿追町では、バイオガスプラントを活用した発電や水素製造を進めてきましたが、熱需要(ガス需要)への直接的なアプローチは、輸送コストやインフラ接続の面で課題がありました。
今回のプロジェクトでは各社が以下の役割を担い、バイオメタンのサプライチェーン構築を目指します。
- 鹿追町(原料供給・製造): バイオマス資源を提供し、家畜ふん尿からバイオガスを製造する
- エア・ウォーター(技術提供・輸送): バイオガスを都市ガス品質(メタン濃度97%以上、不純物除去、熱量調整)にまで高める精製技術や、オフサイト(離れた場所)への輸送ロジスティクスを担当
- 帯広ガス(インフラ・供給): 自社の都市ガス導管網への受け入れ、需要家への供給・保安管理
エア・ウォーターが保有するガス精製・輸送技術によって、ガス導管がないエリアへの仮想パイプライン(バーチャルパイプライン)や、物理輸送によるガス供給が実現します。
これによって、都市ガス事業者は化石燃料由来の天然ガスの一部を、カーボンニュートラルなバイオメタン(e-methane等の合成メタンを含む)に置き換えることが可能になります。
バイオメタン都市ガス導管注入の技術的課題
バイオガスは都市ガスと比べてメタン濃度が低く熱量が不足するため、都市ガス導管に注入する際は、バイオガスを精製してCO₂を除去し、メタン濃度を上げることが必要です。
また、都市ガスにはガス成分や熱量、導管圧力といった技術的基準や、ガス事業法上の保安規定があり、これらをクリアする必要があります。
一般的なバイオガス発電では、メタン濃度60%程度のガスをそのままエンジンで燃焼させますが、都市ガス(13A)として利用するためには、バイオガス精製が不可欠です。
バイオガスと都市ガス(バイオメタン)の比較
| 項目 | 原料バイオガス | 都市ガス基準 | 技術的課題 |
|---|---|---|---|
| メタン濃度 | 約60% | 90%以上(実質97%程度) | CO₂の分離・除去(PSA法・膜分離法等) |
| 熱量 | 約23 MJ/Nm³ | 45〜46 MJ/Nm³ | プロパン添加等による熱量調整(増熱) |
| 不純物 | 硫化水素、シロキサン等 | ほぼゼロ | 高度な脱硫・不純物除去プロセスの確立 |
| 付臭 | 独特の臭気あり | 附臭剤添加 | 既存ガス漏れ検知対応のための附臭管理 |
バイオメタンを地域循環型エネルギーとして活用
日本政府は、脱炭素政策の一環として天然ガス依存の脱却や再生エネルギーの活用を掲げており、ガス業界もバイオガスやバイオメタン活用の取り組みを進めています。
また、日本政府や日本のガス業界(特に大手都市ガス事業者)は、2030年度に向けて都市ガスの1%を合成メタン(e-methane)やバイオガスに置き換えるという数値目標を掲げています。
資源エネルギー庁資料(PDF):都市ガスのカーボンニュートラル化に向けた新たな市場創出・利用拡大につながる適切な規制・制度の在り方について
日本ガス協会資料(PDF):アクションプラン2030
バイオメタン活用 各社の役割
ヨーロッパではガスのカーボンニュートラル化や地域循環エネルギー活用に向けて、バイオメタンの導管注入が拡大しており、帯広ガスもこのプロジェクトを通じて技術面での検証を進める方針です。
エア・ウォーターはバイオガス精製プロセスの提供に加え、これまで液化天然ガス(LNG)輸送で培ったノウハウを応用し、効率的なバイオメタン供給技術の実証を行います。
鹿追町はエア・ウォーター・古河電工と共同で、3基目となるバイオガスプラント整備を進めており、地産地消エネルギーの安定供給に取り組んでいます。
バイオガステック参考記事:北海道鹿追町と古河電工・エア・ウォーターが3基目のバイオガスプラント整備へ






