インドUP州でスズキとホンダがバイオガス・グリーンモビリティに投資

スズキとホンダがインドUP州でバイオガスプラント・グリーンモビリティに投資

記事内画像:Yogi Adityanath UP州首相 Xより

2026年2月末に、ウッタル・プラデーシュ(UP)州のヨギ・アディティヤナート首相が訪日し、自動車メーカーのスズキやホンダとの投資協議を実施しました。

スズキはUP州内での圧縮バイオガス(CBG)プラント建設を含む再生可能エネルギー事業への参入を協議し、ホンダもグリーンモビリティ分野での投資を表明しています。

この動きの背景には、2026年度インド連邦予算で発表された「バイオガス混合CNGからバイオガス分の中央物品税を免除」という強力な政策インセンティブがあります。

インドのバイオガス投資 CBG物品税免除と1兆ドル経済構想

2026年2月のヨギ首相訪日では、シンガポールと日本を合わせてMoU(覚書)約1.5兆ルピー、投資提案約2.5兆ルピーの成果が報告されました。

日本側ではスズキやホンダ、丸紅などとの協議が実施され、投資対象セクターとして自動車OEM・部品、グリーン水素、再生可能エネルギーなどが明示されています。

ウッタル・プラデーシュ(UP)州は、人口約2.5億人を擁するインド最大の州であり、州政府は2029〜30年までに1兆ドル経済を達成する目標を掲げています。

Uttar-pradesh News – India TV:CM Yogi Adityanath secures Rs 4 lakh crore commitments in Singapore-Japan tour, fast-tracks $1 trillion vision

こうした投資を呼び込む制度面の後押しとして特に重要なのが、2026年度連邦予算(Union Budget 2026-27)で発表されたCBG混合CNGに対する中央物品税(Central Excise Duty)の免除措置です。

従来はバイオガスをCNGに混合しても同一の物品税14%が課され、再生可能燃料のCBGに経済的優位性がありませんでしたが、今回の改正で混合CNG中のバイオガス相当分が物品税の計算基礎から除外されます。

インドバイオガス協会(IBA)は、全国の都市ガスネットワークで5%のバイオガス混合が達成された場合、年間約2.5〜3百万トンのCBGが必要となり、0.45〜0.55兆ルピー規模の投資が創出されると試算しています。

混合率が7〜8%に拡大すれば、投資規模は最大1兆ルピー(約1.7兆円)に倍増する見通しです。

Business Standard :Business Standard:Excise waiver for biogas blending can unlock ₹1 trn investment: IBA

スズキのバイオガスプラント事業 CNG車燃料を製造

ヨギ首相は、2026年2月25日にスズキの鈴木俊宏社長と対談し、UP州での圧縮バイオガス(CBG)プラントの建設や、マルチ・スズキの生産能力を倍増させる計画について協議しています。

スズキのバイオガスプラント事業 CNG車燃料を製造

スズキ・モーターは2022年8月、インド政府機関である国家酪農開発委員会(NDDB)とバイオガス実証プロジェクトに関するMoUを締結し、インドにおけるバイオガス事業を本格始動させました。

その後2023年9月には、スズキR&Dセンター・インド、NDDB、アジア最大級の乳業会社バナスデイリーの三者間で正式契約を締結しており、2025年より順次5か所のプラントを設置する予定です。

バイオガステック 参考記事:スズキがインドで5か所目のバイオガス生産プラント設置で合意

本事業の技術的な核心は、牛ふんのメタン発酵によるCBG(圧縮バイオガス)製造です。インドには約3億頭の牛が存在し、その排せつ物に含まれるメタンはCO₂の28倍の温室効果を持ちます。

スズキはこのメタンを回収・精製してCNG車両の燃料とすることで、大気中へのメタン放出を抑制しつつカーボンニュートラル燃料を生産する循環型モデルを構築しています。

スズキの試算によると、牛10頭の1日分のふん尿でCNG車1台を1日走行させることが可能です。

スズキのプロジェクトがUNIDO産業協力プログラムに採択

注目すべきは、このプロジェクトが国連工業開発機関(UNIDO)の産業協力プログラムに正式採択されたことです。

バイオガステック 参考記事:スズキのインドバイオガス事業がUNIDO産業協力プログラムに採択

日本の経済産業省(METI)の支援も受けており、インドの酪農セクターと日本の自動車セクターの連携による社会課題解決モデルとして国際的に位置づけられています。

また、マルチ・スズキはインド国内CNG車市場で約70%のシェアを持ち、バイオガス製造から燃料供給、車両販売までの垂直統合型バリューチェーンを構築できる点が大きな競争優位となっています。

Suzuki India:Biogas Revolution – Advancing Carbon Neutrality

ホンダのインド・グリーンモビリティ戦略とバッテリー循環モデル

ヨギ首相は、東京でホンダの貝原典也 取締役・代表執行役副社長と会談し、UP州とホンダとのパートナーシップ強化や、次世代モビリティのR&D施設を設立する可能性について協議しています。

ホンダのインド・グリーンモビリティ戦略

ホンダは2025年10月、インドの分散型再生可能エネルギー企業OMC Powerへの出資を発表しました。

Honda Global Corporate Website:Honda to Invest in OMC Power, which will Launch Leasing Business for Uninterruptible Power Supply Device in India

OMC Powerはミニグリッドや屋上太陽光発電事業を展開しており、ホンダとは2023年からUP州で電動バイク用バッテリーを無停電電源装置(UPS)に再利用する実証試験を実施してきました。

ホンダの年間バッテリー生産計画は約600万個と想定されており、2026年1月には、ホンダのモバイルパワーパック e:(着脱式バッテリー)を搭載したUPS装置のリース事業を開始しています。

この事業は電動二輪・三輪車での使用後に退役したバッテリーを、電力インフラが不安定な地域の家庭・小規模事業者・学校に再配分する「バッテリー循環モデル」です。

バイオガスのような再生可能ガス戦略とは異なるアプローチですが、電力インフラ整備が不十分な新興国市場において、分散型エネルギー供給を実現するという意義があります。

日本企業のCBG・グリーンモビリティ技術をインドで活用

インド政府が国家バイオエネルギープログラムに投資

インド政府はSATATGobar Dhan 政策などを通じて、圧縮バイオガス(CBG, Compressed Biogas)の生産能力1,500万トンを目標としてきましたが、実際に稼働に至ったCBGプラントは約190基にとどまっています。

しかし、2025-26年度から始まるCBG混合義務(CBO)の段階的導入(初年度1%→2028-29年度5%)と、今回の物品税免除措置により、投資環境は大きく変化する見通しです。

インド全体のCBG生産ポテンシャルは年間約6,000万トンと推計されており、原料は稲わら、プレスマッド(サトウキビ搾りかす)、都市固形廃棄物、牛ふんなど多岐にわたります。

スズキが酪農廃棄物に着目した事業モデルは、インドの農村経済の活性化、廃棄物管理、エネルギー自給率向上を同時に実現しうるものであり、単なるCSR活動を超えた事業戦略として評価できます。

日本企業にとっては、スズキや豊橋技術科学大学が関与する事例のように、メタン発酵の技術協力や、バイオガスプラント設備のノウハウを展開する余地があります。

大手商社の双日も、2025年にインドのバイオメタン市場への参入を発表しており、合弁会社を通じてインド国内で30基のバイオメタンプラントを稼働させ、年16万トンのバイオメタン生産・販売を計画しています。

バイオガステック 参考記事:双日がインドのバイオメタン市場へ参入

UP州が計画する500エーカー規模の「ジャパンシティ」構想やR&D拠点の整備も、日系企業のサプライチェーン構築を加速させる要因となるでしょう。

インドのように電力インフラが不安定な地域では、BEV(バッテリー電気自動車)一辺倒ではなく、日本企業によるCBGやグリーンモビリティ技術の活用が現実的な選択肢となります。


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