高松市のうどん発電とは? 廃棄うどんと下水汚泥の混合消化でバイオガス発電

廃棄うどんでバイオガス発電 高松市で下水汚泥との混合消化実証

高松市は2022年6月から、東部下水処理場(高松市屋島西町)で廃棄うどんを下水汚泥に混合投入し、消化ガスの発生量を増やすバイオマス発電の実証実験を続けています。

この事業では、下水処理の過程で発生する消化ガスを利用したバイオガス発電に、食品製造残渣を混合消化(コ・ダイジェスチョン)の原料として追加投入しています。

これまでさぬき麺業やはなまる、山田家物流の3社から廃棄うどんの提供を受けていましたが、2026年3月から新たに川田製麺が加わり、提供事業者は4社に拡大しました。

KSB瀬戸内海放送ニュース:「うどん発電」の実証実験 新たに製麺会社1社から廃棄うどんの提供を開始 高松市

高松市「うどん発電」とは? 東部下水処理場で実証実験

「うどん発電」とは、高松市が廃棄うどんを活用し、東部下水処理場で実施している消化ガス発電量増加の実証実験の通称です。

同処理場では、2016年からFIT制度(再生可能エネルギー固定価格買取制度)を活用し、下水汚泥の嫌気性消化で発生する消化ガスを、ガスエンジンで燃焼させるバイオマス発電事業を行っています。

発電した電気は四国電力に売電していましたが、夏季は下水温度の上昇に伴い、消化槽内の微生物活動バランスが変動し、ガス発生量が低下するという運用上の課題を抱えていました。

発電設備の稼働率を通年で高める解決策として、高松市下水道施設課が着目したのが、地域の食品製造業から大量に排出される廃棄うどんです。

うどんの一大生産地である香川県では、製麺工程で生じる端材や規格外の食品残渣が日常的に発生します。

高松市はこの地域特性を活かし、2020年12月に宣言した「ゼロカーボンシティたかまつ」の施策として、下水汚泥と廃棄うどんの混合消化による発電量増加の検証に乗り出しました。

うどん発電の仕組み 下水汚泥との混合消化(コ・ダイジェスチョン)技術

うどん発電は、下水汚泥の消化プロセスに食品製造残渣(廃棄うどん)を追加投入する仕組みになっており、「混合消化(コ・ダイジェスチョン)」がこの実証実験の核心です。

うどんの主成分は炭水化物(デンプン)で、VS(揮発性固形物)濃度が高く、嫌気性消化における分解性に優れています。

下水汚泥単体と比較して、混合消化は有機物負荷率(OLR)を効率的に引き上げることが可能であり、メタン生成菌の活動が活発化して、消化ガスの発生量増加が期待できます。

混合消化は欧州のバイオガスプラントでは広く実用化されている技術で、ドイツやデンマークでは、下水処理場の消化槽に食品廃棄物や油脂類を投入して、ガス収量を向上させる事例が多数報告されています。

日本国内でも一部の自治体で生ごみとの混合消化が始まっていますが、うどん(乾麺・生麺の端材)に特化した事例は全国的にも珍しく、食品製造業が集積する地域ならではのアプローチといえます。

ただし、既存の消化槽に食品残渣を追加投入する場合、C/N比(炭素窒素比)の変動や、VFA(揮発性脂肪酸)の蓄積によるpH低下、さらには消化液の水質変動など、運転管理上の注意点が生じます。

高松市が段階的に投入量を増やしながら慎重にデータを蓄積しているのは、こうした技術的リスクを考慮した上でのことです。

参画企業と実証実験の経過

「うどん発電」の実験は、段階的に規模を拡大してきました。これまでの主な経過は以下の通りです。

時期協定締結先概要
2022年6月さぬき麺業(高松市)実証実験開始。月400〜600kgの廃棄うどん(端材等)を提供。1日あたり約20kgを消化槽に投入
2022年10月はなまる(吉野家HD子会社)高松工場から1日あたり約60kgの廃棄うどん(生地・打ち粉等)を無償提供。投入量が約4倍に拡大
2023年2月山田家物流(高松市)ギフト用うどん製造の端材を1日あたり約20kg提供。3社体制に
2026年3月川田製麺(高松市香南町)4社目として協定締結。新年度から処理施設運転への影響を検証

高松市は消化ガスの発生量を現状から10%増加させるためには、1日あたり約1.2トンの廃棄うどん投入が必要と試算しています。

2023年2月時点で1日あたりの投入量は約50kgにとどまっており、目標値との間にはまだ大きな開きがあります。協定事業者の拡大は、この投入量の段階的な引き上げを図るものです。

なお、2025年10月にはなまると高松市が包括連携協定を締結し、廃棄うどんのバイオマス発電利用が正式に協定の柱の一つとして位置づけられました。

はなまるニュース:「すべては、讃岐うどんとともに。」創業の地・高松市と株式会社はなまるが包括連携協定を締結

吉野家HDのESG報告でも、高松工場の廃棄うどんの約4割を提供し、バイオマス発電に協力していると明記されており、企業のサステナビリティ施策と自治体のゼロカーボン政策が連動する事業モデルとなっています。

うどん発電 今後の事業化に向けた課題

高松市は2026年度から、処理施設の運転への影響をより本格的に検証する方針です。事業化に向けては、以下の課題が想定されます。

  • 投入量の確保:目標とする1日1.2トンに対し、現状の投入量は大幅に不足しています。製麺業者だけでなく、うどん店やフードサービス事業者からの回収スキーム構築が鍵となります。
  • 前処理・供給体制の整備:廃棄うどんは乾燥・粉砕して消化槽に投入していますが、投入量が増えれば専用の前処理設備(破砕機・乾燥機等)や安定供給のための物流体制の整備が必要です。
  • 消化プロセスへの影響評価:食品残渣の大量投入は、消化液の水質や汚泥処理工程に影響を及ぼす可能性があります。放流水質基準への適合を含めた長期データの蓄積が不可欠です。
  • 設備投資判断:高松市は一定の発電量増加を見込むと判断した場合、消化槽の処理能力増強やガスエンジンの増設も視野に入れるとしています。投資回収を含む事業性の評価が求められます。

下水処理場における食品廃棄物との混合消化は、国土交通省が推進する「下水道バイオマス」の有効活用とも方向性が一致しており、他の下水処理場でも応用できる可能性があります。

バイオガス業界にとっても、既存の消化設備を活用した低コストな発電量増強策として、この実証実験の今後の成果が注目されます。


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