豊田通商、東邦ガス、ブラジルのFerrari Agroindústria(フェラーリ・アグロインダストリア:FAI)、Sebigas Cótica Bioenergia(セビガス・コティカ・バイオエネルギア:SC)の4社は、2025年2月にサトウキビ廃棄物を原料とするバイオメタン生産実証に向けた共同開発契約を締結したと発表しました。
豊田通商プレスリリース:ブラジルでのサトウキビ廃棄物由来のバイオメタン生産実証に向けた検討開始について
4社は共同で、ブラジルサンパウロ州のFAI敷地内に、1日あたり5,500m³の生産能力を持つ実証プラントの建設・運営に向けた検討を行い、2026年内の稼働を目指します。
将来的には日本への輸出も視野に入れた大型プロジェクトであり、日本の総合商社によるブラジルのバイオメタン事業への本格参入として注目されています。
豊田通商・東邦ガスがブラジルでバイオメタン生産実証を開始
豊田通商と東邦ガスは、2021年から中部地区のカーボンニュートラル化に向けた協業を進めてきました。
両社はそれぞれ強みを持ち、東邦ガスはLNGバリューチェーンで培ったノウハウ、豊田通商はグローバルな脱炭素燃料ビジネスの知見があります。
両社はTotalEnergiesとの水素・合成メタンのバリューチェーン構築に関するFS調査でも協業しており、今回のブラジルでのバイオメタン実証は、この一連の脱炭素戦略の延長線上に位置づけられます。
バイオメタンはバイオガスを精製してメタン濃度を高めたもので、都市ガスの主成分と同じ組成を持ちます。
そのため、既存の都市ガスインフラをそのまま活用でき、追加的な社会コストを抑えながらカーボンニュートラルに貢献できる点が大きな強みです。
サトウキビ廃棄物からバイオメタン製造する仕組み

サトウキビの加工過程では、エタノール蒸留後の廃液であるビナス(vinasse)や、搾りかすであるバガス、収穫時に発生するストローなど、大量の有機性廃棄物が発生します。
これらを嫌気性消化(メタン発酵)で分解することでバイオガスが生成され、このバイオガスを膜分離やPSA法などの精製技術でアップグレードすると、メタン濃度95%以上のバイオメタンが得られます。
ブラジルのサトウキビ生産量と優位性
ブラジルはサトウキビの生産量で世界第1位を誇ります。ブラジルバイオガス協会(ABiogás)の推計によると、サトウキビ由来のバイオガス生産ポテンシャルは年間約414億m³に達しています。
これはブラジル全体のバイオガスポテンシャルの約40%を占めますが、現時点ではこのポテンシャルの2%未満しか活用されておらず、膨大な成長余地が残されています。
今回のプロジェクトでは、FAIがブラジルでサトウキビ廃棄物などの原料・用役を供給し、SCが実証プラントのエンジニアリングを担当します。
豊田通商はプロジェクト全体の推進・管理を行い、東邦ガスが日本国内でのマーケット開発を担います。
Ferrari Agroindústria S.A(フェラーリ・アグロインダストリア)
ブラジルのサンパウロ州ピラスヌンガに拠点を置く大規模アグリビジネス・バイオエネルギー企業で、さとうきびを原料とする砂糖やエタノール、大豆などの生産を行っています。
Ferrari Agroindústria:Usina Ferrari – Agroindústria S/A
Sebigas Cótica Bioenergia LTDA(セビガス・コティカ・バイオエネルギア)
SCは南米の再生可能エネルギー市場開拓を目的として、2018年にイタリアのSebigasと、ブラジルのCóticaの2社によって設立された合弁会社です。
SebigasCótica: SebigasCótica – Biogás, Biodigestor, Metano, Lixo, Vinhaça
Sebigasは産業廃棄物や農業残渣を専門とするイタリア拠点のバイオガスプロバイダーで、Cóticaはブラジル国内で40年以上の経験を持つ建設・エンジニアリング会社です。
ブラジル「未来の燃料法」がバイオメタン市場拡大を後押し
ブラジルでは2024年10月に「未来の燃料法(Fuel of the Future Law、法律第14,993号)」が制定されました。
この法律は、世界最大規模の輸送部門脱炭素化プログラムとして位置づけられ、2037年までに7億500万トンのCO₂排出削減を目標としています。
ブラジル政府:Lula enacts Fuel of the Future law: “Brazil will drive the world’s largest energy revolution”
バイオメタンに関しては、「天然ガス生産者・輸入者の脱炭素化とバイオメタン奨励に関する国家プログラム」が創設され、温室効果ガス排出(GHG)を1%削減する義務が設けられました。
それに応じて、2026年から化石天然ガス消費量の一部をバイオメタンに置き換える取り組みが始まります。
将来的にはこの比率を10%まで引き上げる方針です。加えて、バイオメタン原産地証明書(CGOB)制度も導入され、トレーサビリティと品質保証の枠組みが整備されつつあります。
ブラジル廃棄物・環境協会(Abrema)によると、今後5年間でブラジル国内のバイオメタン生産施設への投資額は、約85億レアル(約1,600億円相当)に達する見通しです。
ABREMA:BIOMETANO PRODUZIDO A PARTIR DO LIXO DEVE TER INVESTIMENTO DE R$ 8,5 BILHÕES EM 5 ANOS
2024年のブラジル国内バイオメタン生産量は約8,150万m³で、前年比8.9%増と成長が続いています。
日本へのバイオメタン輸出とサプライチェーン構築
4社は実証プラントの運営結果を通じて、ブラジル国内でのバイオメタン量産体制の確立を目指しています。
バイオメタンは日本への輸出も視野に入れており、ブラジル国内輸送や海上輸送インフラを含む、サプライチェーンの整備を進める計画が示されています。
日本では、都市ガス各社がカーボンニュートラルガスの調達手段として、バイオメタンやe-メタンの導入を加速しています。
東邦ガスが日本国内のマーケット開発を担うことで、ブラジル産バイオメタンの日本市場への供給ルートが具体化する可能性があります。
また、双日のインドにおけるバイオメタン事業参入や、住友商事のデンマークでのバイオガス事業など、日本の総合商社による海外バイオメタン事業への参入が相次いでいます。
参考記事:日本の総合商社に関する記事
豊田通商のブラジル進出は、サトウキビ廃棄物という豊富かつ安定した原料を活用できる点で差別化されており、今後の量産化とサプライチェーン構築の進捗が注目されます。






