双日が米国バイオメタン市場に参入 埋立地ガス(LFG)活用で事業拡大へ

双日が米国バイオメタン市場に参入 埋立地ガス(LFG)活用で事業拡大へ

総合商社の双日は2026年4月1日に、100%子会社の双日米国会社を通じて、米国のバイオメタン製造・販売事業者Fidem Energy LLCに出資し、持分法適用会社にしたと発表しました。

双日 ニュースルーム:双日、米国でバイオメタン製造・販売事業に参入

Fidemは米国南東部を拠点とし、埋立地から発生するバイオガスを精製して、バイオメタン(RNG:再生可能天然ガス)を製造・販売しています。

双日は2025年にインドのバイオメタン事業にも参入しており、今回の米国参入は中期経営計画2026で掲げるGX戦略の一環として、グローバルなバイオ燃料事業の基盤を構築する動きとなります。

双日 米国バイオメタン事業参入の背景と狙い

双日は中期経営計画2026において、グリーントランスフォーメーション(GX)を戦略的強化領域の一つに位置づけています。

双日IR資料:双日 統合報告書2025

バイオ燃料分野はGX重点領域の一角であり、2025年4月にはインド最大手の国営石油会社IOCLと、GPS Renewablesとの合弁会社「IGRPL」への出資を通じて、インドでのバイオメタン事業に先行参入しています。

今回の米国参入では、Fidem Energyへの出資を通じて、同社の30年以上にわたる廃棄物回収・埋立地運営の実績と、双日のグローバルな事業開発力を組み合わせる形をとっています。

Fidemは現在、テネシー州で稼働中のバイオメタン製造プラントに加え、複数の埋立地における新規プロジェクトの開発権も保有しています。

双日がこのタイミングで米国市場に参入する背景には、米国におけるバイオメタン需要の急拡大があります。

双日調べでは、2025年の米国バイオメタン需要量は前年比24%増と大幅に伸長しており、エネルギー安全保障の強化や、化石天然ガスの代替による脱炭素化の流れが、この成長を後押ししています。

Fidemが手がける埋立地ガス由来バイオメタン

埋立地ガス由来バイオメタンとは? 製造プロセスや特徴

Fidemが原料とする埋立地ガス(LFG)は、都市廃棄物を埋立処分する過程で自然発生するバイオガスです。二酸化炭素や窒素、硫化水素などの不純物を分離・精製して、バイオメタンを製造します。

農業廃棄物や食品残渣を原料とする一般的なバイオガスプラントと異なり、原料の調達や前処理の負担が少なく、埋立地が存在する限り長期にわたってガス供給が見込める点が特徴です。

その一方で、窒素の混入により精製コストが高くなりやすいという固有の課題もあります。

参考記事:埋立地ガス(LFG)とは? 組成・回収方法と3つの用途

米国バイオメタン(RNG)の経済的ポテンシャル

米国ではRFS(再生可能燃料基準)やカリフォルニア州のLCFS(低炭素燃料基準)といった政策的インセンティブにより、バイオメタン(RNG)の経済性が高まっています。

米国環境保護庁(EPA)のLMOP(Landfill Methane Outreach Program)によると、全米には2,600以上の都市固形廃棄物埋立地が存在します。

American Biogas Council(ABC)の2026年7月時点の集計では、稼働中のLFG回収システムは598件で、今後の開発に適した埋立地が約705か所残っていると推計されています。

American Biogas Council:Landfill Gas Continues to Drive U.S. Renewable Natural Gas Growth

急成長する米国RNG市場 需要24%増の要因

米国のRNG市場は急成長しています。ABCのデータによると、2024年に125件の新規バイオガスプロジェクトが稼働しており、新規投資額は前年比40%増となる30億ドル以上で、過去最高を更新しています。

米国全体のバイオガス施設は約2,500か所に達し、LFGプロジェクトは全体のバイオガス生産量の72%を占めています。この成長を支える要因は主に以下の3点です。

  • 政策的支援:連邦レベルのRFS(再生可能燃料基準)や、カリフォルニア州のLCFS(低炭素燃料基準)が、RNG生産者に対して経済的インセンティブを提供しています。2024年に稼働した新規プロジェクトの95%がRNG製造を目的としており、政策主導の市場形成が進んでいます。
  • 人口増加と廃棄物量の増大:米国では人口増加と経済活動の拡大に伴い、埋立廃棄物量の増加が見込まれています。ABCの推計では、米国のバイオガス産業は潜在能力の約10%しか開発されておらず、今後さらに24,000基のシステム新設余地があるとされています。
  • エネルギー安全保障と企業の脱炭素ニーズ:化石天然ガスの代替手段としてのRNGへの注目が高まっています。物流企業や公共交通機関がCNG車両向けにRNGを調達するケースが増加しており、輸送部門が新たな需要の柱となっています。

グローバルなバイオメタン市場も拡大傾向にあり、世界のバイオメタン市場規模は2025年の約69.5億ドルから、2034年には約107億ドルに成長し、年平均成長率(CAGR)は4.97%と見込まれています。

Fortune Business Insights推計:バイオメタンの市場規模、シェア、成長および世界産業分析:タイプ別・用途別、地域別洞察と予測(2026年~2034年)

双日のグローバルバイオメタン戦略と今後の展開

今回の米国参入により、双日はインドと米国の2拠点でバイオメタン事業を展開する体制を構築しました。双方の事業には明確な違いがあります。

インドでは、農業残渣を原料とする嫌気性消化方式で、GPS Renewablesの技術を活用し、2026〜27年度にかけて30基のプラント稼働・年間16万トンの生産を計画しています。

一方、米国ではFidemの埋立地ガス回収技術を基盤に、既存のランドフィルインフラを活用するアプローチをとっており、原料調達リスクが相対的に低い点が特徴です。

双日はFidemとの協業により、米国全土でのバイオメタン事業拡大を目指すとともに、日本やアジア諸国への供給も視野に入れています。

なお、埋立地ガスの用途は発電やバイオメタンにとどまりません。インドネシアでは、プルタミナと現代自動車グループが埋立地ガスから低炭素水素を製造する事業を進めています。

双日のGX事業戦略 バイオメタン事業強化へ

日本企業の海外バイオメタン投資は活発化しており、総合商社・ガス大手企業による米国でのバイオガス・e-メタン事業参入や、スズキのインドバイオガス事業推進などが発表されています。

参考記事:大阪ガス・東邦ガス・伊藤忠が米国eメタン事業に参入

スズキ関連記事:バイオガステック 自動車メーカー「スズキ」に関連する記事

双日も「中期経営計画2026」の中で、GXを戦略的強化領域の一つとして、新エネルギーや脱炭素、省エネ・ESCOなどのエネルギーソリューション事業を推進すると発表しています。

双日は商社としての事業開発力とグローバルネットワークを強みに、バイオメタンの原料調達から製造・販売・輸出までのバリューチェーン構築を進め、GX分野での収益基盤拡大を図る方針です。

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