農機・水環境プラントを手掛けるクボタが、京都大学や早稲田大学と連携し、稲わらからバイオ燃料と肥料を製造する地域資源循環システムの構築に取り組んでいます。
実証の舞台は秋田県大潟村で、2024年5月からメタン発酵設備が稼働しています。
クボタ ニュースリリース:秋田県大潟村で稲わらからバイオ燃料などを製造する実証プラントが稼働
この実証が進むなか、クボタと三菱ガス化学は2026年8月に、稲わら由来のバイオガスからバイオメタノールを製造し、化学製品原料としての有用性を確認したと発表しました。
この記事では、産学連携の役割分担と大潟村の実証プラントの規模、そして稲わらを農地から持ち出すことの意味を整理します。
クボタは稲わらから何を作るのか

クボタは自社のメタン発酵技術と、京都大学・早稲田大学の触媒反応プロセス技術を用いて、地域で収集した稲わらからバイオガス、グリーン水素、グリーンLPGなどのバイオ燃料製造を目指します。
同時に、農業で利用できる肥料(バイオ液肥)も取り出します。一つの原料から燃料と肥料を同時に得て、どちらも地域内で使い切るという設計が、この実証の骨格です。
グリーン水素やグリーンLPGの定義はバイオガス・バイオメタン用語集にまとめています。
ただし、稲わらは収穫期に一度に大量発生し、かさが大きく、繊維質でメタン発酵が進みにくい原料です。
そのため、この実証では燃料の製造技術だけでなく、稲わらをどう集めて運ぶかという原料供給の仕組みづくりも検証の対象になっています。
大潟村の実証プラントの規模と事業期間
実証実験施設は2024年5月に本格稼働しました。敷地面積は約6,000平方メートル、メタン発酵槽の容量は30立方メートルで、事業期間は2022年度から2029年度までの8年間が予定されています。
大潟村のほか、秋田県立大学の試験ほ場でも共同研究が行われており、稲わらを収集することによる温室効果ガスの削減効果と、バイオ液肥の肥料効果が確認されています。
京都大学・早稲田大学との役割分担

クボタは2022年4月から、京都大学や早稲田大学と連携し、稲わらからバイオ燃料と肥料を製造する地域資源循環システムの実証実験を開始しました。
クボタ ニュースリリース:農業系バイオマスを利用した地域資源循環システム構築の実証実験を開始
| 組織 | 研究の役割 |
|---|---|
| 株式会社クボタ | 稲わら回収からバイオガス・バイオ液肥の地域利用までの仕組み作り、バイオ燃料とバイオ液肥の製造および利用方法に関する技術開発 |
| 京都大学 | 革新的な多元素ナノ合金触媒の開発(代表事業者) |
| 早稲田大学 | 触媒の潜在能力を最大限に引き出す反応プロセスの開発、稲わら由来物からグリーンLPG・グリーン水素への変換技術の開発 |
多元素ナノ合金触媒とは、異なる元素をナノレベルで隣り合わせ、多彩な原子配列をとらせることで新たな物性を発現させた触媒です。
貴金属やレアメタルの資源枯渇や価格高騰の問題を解決することが期待されています。
京都大学:資源循環を実現する革新的触媒の開発・実証事業の開始について
早稲田大学:脱炭素化 触媒技術の開発事業に採択
この取り組みは、環境省「令和4年度地域資源循環を通じた脱炭素化に向けた革新的触媒技術の開発・実証事業」に採択されたもので、代表事業者は京都大学です。
環境省 報道発表資料:令和4年度地域資源循環を通じた脱炭素化に向けた革新的触媒技術の開発・実証事業の公募採択案件について
なお、早稲田大学で反応プロセスを担当する関根泰教授は、この事業とは別に、バイオガスを200℃以下で改質して合成ガスを取り出す技術も開発しています。触媒側の研究が、原料側の実証と並走している構図です。
参考記事:早稲田大学がバイオガスを低温で化学原料化する技術を開発
なぜ稲わらを農地から持ち出すのか

クボタによると、国内の稲わらは年間約800万トン発生し、そのうち約650万トンが農地にすき込まれています。
すき込まれた稲わらは肥料として働く一方、湛水した水田ではメタン生成菌の基質となり、メタンを大量に発生させます。クボタは、メタンの温室効果をCO₂の28倍としています。
排出量は、稲わらをいつ、どれだけ農地に戻すかで大きく変わります。
農業環境技術研究所(現・農研機構)が1993年に公表した試験では、稲わら無施用の水田で2.8gCH₄/m²だった栽培期間中の発生量が、秋すき込みで6.2、春に施用してすき込んだ場合は30.3に達しています。
稲わらを持ち出せば土に還る有機物は減りますが、この実証ではバイオ液肥として肥料分を農地に戻すことで、循環を成り立たせようとしています。
稲わらを集めて燃料と肥料に変えるこの実証は、水田からのメタンを抑えながら、地域のエネルギーと肥料をまかなうことを狙っています。
国内のバイオマス活用の全体像は、農林水産省の統計にまとめています。
大潟村がバイオマス産業都市構想を持つ意味
この実証には、稲わらの収集と、できたバイオ燃料・肥料の地域利用が欠かせません。大潟村は日本有数の米どころで、大量の稲わらが発生することから、実証の舞台に選ばれました。
また、同村の「バイオマス産業都市構想」には、稲わらのメタン発酵によるバイオガスや液肥の活用が含まれており、実証内容との親和性が高かったことも理由の一つです。
大潟村役場:大潟村バイオマス産業都市構想
構想そのものの制度的な位置づけは、バイオマス産業都市構想の解説記事で扱っています。
2026年、バイオガスは化学品原料へ

2026年8月31日、クボタは三菱ガス化学と共同で、大潟村で発生した稲わら由来バイオガスを新潟のプラントへ運び、バイオメタノールの原料として投入する試験を実施したと発表しました。
両社は化学製品原料としての有用性を確認しており、バイオ燃料と肥料に加え、化学品原料という第三の出口が視野に入ったことになります。
試験の内容と、化学品原料が発電やバイオメタンと何が違うのかは、続報で解説しています。
関連記事:稲わらバイオガスをバイオメタノール原料に クボタと三菱ガス化学
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