三井物産と東京ガスが国内初の海外産バイオメタン輸入

三井物産と東京ガスが国内初の海外産バイオメタン輸入

三井物産株式会社と東京ガス株式会社は2024年3月に、国内初となるスキームで海外産バイオメタン約4万m³(気体換算)を輸入し、受け渡しを行ったと発表しました。

三井物産ニュース:カーボンニュートラル社会実現に向けた海外産バイオメタンの輸入

今回の輸入は、米国のごみ埋立地由来のバイオメタンを天然ガスの一部としてLNG化し、3月19日に東京ガス扇島LNG基地で受け渡しが行われました。

政府は2050年カーボンニュートラルを掲げており、ガス分野でも合成メタンやバイオガスの導入を通じた脱炭素化を進めています。

その約2年後の2026年3月に、東京ガスとTGESは海外産バイオメタンを原料とした都市ガスを需要家に供給することについて合意したと発表しました。

参考記事:東京ガスが海外産バイオメタン都市ガスを産業部門に供給

海外産バイオメタン輸入の背景 カーボンニュートラル都市ガス実現へ

今回輸入された海外産バイオメタンは、三井物産が出資参画する米国ルイジアナ州のキャメロンLNG基地から出荷されました。

この背景には、日本のエネルギー事情とガス産業固有の課題があります。日本は天然ガスの大半を海外に依存しており、ガスの低炭素化は国内リソースのみでは解決困難です。

政府は2050年までに、都市ガス全体の90%を合成メタン(e-メタン)等のカーボンニュートラルなガスに置き換えるという目標を掲げています。

資源エネルギー庁:ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術

しかし、国内でのバイオメタン生産は、地形的制約や原料集約効率の低さなどの課題が山積しており、膨大な都市ガス需要を賄うのは現実的ではありません。

そこで、バイオメタンの生産インフラが確立している海外からの輸入が、合理的な戦略として浮上しました。

北米産RNGを活用した三井物産の事業スキーム

三井物産が導入する北米産バイオメタンは、ごみ埋立地から発生したバイオガスを高度精製したもので、成分的には化石燃料由来の天然ガスとほぼ同等のメタン(CH4)濃度を持ちます。

三井物産のスキームの画期的な点は、既存のLNG(液化天然ガス)インフラをそのまま活用できる「ドロップイン燃料」であることです。

米国で精製されたバイオメタンは、既存のガスパイプライン網を通じて液化拠点へ送られ、従来のLNGと混合した形で日本へ運ばれます。

これにより、供給側も需要側も新たな大規模設備投資を抑えつつ、確実に炭素強度(CI値)を下げることが可能となります。

北米では年間約1.46億トンの都市ごみが埋立処理されており、そこから発生する有機物由来のメタンを有効活用するため、埋立地ガス(ランドフィルガス:LFG)の事業化が進められています。

三井物産は2023年8月に米Terreva Renewables社へ出資参画しており、上流側のRNG(Renewable Natural Gas)調達能力を強化しています。

三井物産ニュース:再生可能天然ガスの製造・販売事業を行う米Terreva Renewables社への出資参画

バイオメタンの特性と技術的意義

バイオメタンは、有機廃棄物のメタン発酵で得られたバイオガス(メタン約60%、CO₂約40%)を精製し、CO₂や硫化水素等を除去してメタン濃度を95%以上にしたガスを指します。

バイオメタンの最大の強みは、既に欧米で市場が成熟しており、即戦力として導入可能な点です。

バイオメタンとeメタンの違い

日本のガス脱炭素化でバイオメタンとよく比較されるのが、水素とCO₂から合成される「e-メタン」です。両者には以下のような特性があります。

比較項目バイオメタン (Biomethane/RNG)合成メタン (e-methane)
生成プロセス生物学的発酵+高度精製化学的合成(サバティエ反応等)
主な原料有機性廃棄物(家畜糞尿等)再エネ由来水素 + 回収CO2
コスト相対的に低い(海外産の場合)現時点では高い(水素コストに依存)
CI値非常に低い(マイナスもあり得る)原料水素・CO2の由来に依存
実装状況欧米で市場が確立済み大規模実証段階

同じ脱炭素ガスでも、e-メタン(合成メタン)は水素とCO₂から人工的に合成するため、製造コストと技術成熟度が課題となります。

マスバランス方式による環境価値の移転

今回のスキームの核心は、マスバランス方式でバイオメタンの環境価値を日本側に帰属させた点です。

マスバランス方式は、バイオマス由来原料の投入割合に応じて、そのバイオマス分を製品の一部に割り当てることができる仕組みで、ISCC PLUS認証等が国際的な検証枠組みとなります。

ENEOS:マスバランス方式とは

国内制度上、バイオマス燃料使用に伴うCO₂排出は、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)上の算出対象外となっており、需要家企業はScope 1排出の実質削減に活用できます。

海外産バイオメタン輸入の課題

今回の海外産バイオメタン輸入は、国際的サプライチェーンの構築に向けた戦略的な第一歩となります。

また、海外生産プロジェクトへの投資拡大と並行して、メタネーションやCO₂排出の取扱いルール整備が進められており、政策面でも追い風が吹いています。

その一方で、天然ガスとの価格差や、国際的な環境価値証書制度との整合、輸入バイオメタンのGHG削減効果に関する検証基準の整備などが課題となります。

現在、バイオメタン証書制度(ERGaRのGO/CoO/PoS, RTC等)や、ISCC(国際持続可能性炭素認証)など、国際的認証スキームの検証が進んでいますが、日本国内の制度との整合性が求められます。


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