記事内画像:神戸市より
神戸市は2026年4月1日より、東灘処理場(東灘区魚崎南町)で食品系廃棄物を受け入れ、下水汚泥との混合消化でバイオガス(消化ガス)発電量を拡大する「バイオマス受入事業」を開始します。
神戸市:下水道におけるSDGsの取り組みを加速~東灘処理場でバイオマス受入事業の開始~
食品加工会社や飲料メーカーなどから平均16.5t/日の食品系廃棄物を受け入れ、消化ガスの増量分は発電事業者に売却されて、FIT制度を活用した売電に用いられます。
下水処理場で産業廃棄物を受け入れる国内初の事例であり、廃棄物減量とエネルギー創出を両立するモデルケースとして注目されます。
神戸市が下水処理場で食品廃棄物を受け入れる背景
神戸市の東灘処理場は、1962年に供用開始した同市の基幹処理場です。1995年の阪神・淡路大震災で壊滅的な被害を受けた後、復興過程で下水道資源の有効利用を積極的に推進してきました。
神戸市:東灘処理場
具体的には、下水処理過程で発生する消化ガスを精製した「こうべバイオガス」を、天然ガス自動車燃料として活用(2008年〜)したり、都市ガス導管への注入事業(2010年〜)を実施してきました。

2011年に国土交通省のB-DASHプロジェクトに採択され、神鋼環境ソリューションと神戸市の共同研究体(協力:大阪ガス)として「KOBEグリーン・スイーツプロジェクト」を開始しました。
2012年より、地域バイオマス(食品系・木質系)を下水汚泥と混合消化する実証運転にも取り組んでいます。
神戸市建設局:こうべバイオガスの現状 新型バイオガス精製システムの展開
一方で、食品廃棄物の処理は依然として課題となっており、食品リサイクル法のもとで飼料化・堆肥化が進められていますが、飼料利用には品質管理上の制約があり、堆肥化は需給バランスの問題を抱えています。
下水処理場の消化槽を活用した混合メタン発酵(コダイジェスション)は、既存インフラを有効活用しながら食品廃棄物をエネルギーに転換できる手法として、国土交通省も推進しています。
東灘処理場バイオマス受入事業の仕組みと技術的特徴

この事業の特徴は、下水処理場内で産業廃棄物処分業の許可を取得した国内初のケースであるという点です。
大栄環境グループ:日本初!自治体が持つ下水処理場内で民間企業が産業廃棄物処分業の許可を取得
従来の下水処理場では、バイオマス受入は一般廃棄物や実証実験レベルにとどまるケースが多く、事業系食品残渣を産業廃棄物として受け入れる枠組みは整備されていませんでした。
今回の事業では、神鋼環境ソリューションと大栄環境が共同出資したSPC(特別目的会社)「KOBEバイオスウェッジ株式会社」が事業運営を担います。
受入施設は神戸市が整備し、民間事業者が運営を行う公設民営方式(PPP)となっており、事業期間は2026年4月から2044年3月までの18年間と、長期的な事業スキームが組まれています。
混合消化(コダイジェスション)によるガス発生量の増加
技術的には、食品工場等から搬入された食品系廃棄物を粉砕・調整し、下水汚泥と混合した上で、既存の消化槽に投入する「混合消化(コダイジェスション)」方式を採用しています。
食品廃棄物は下水汚泥と比較して有機物含有量が高いため、混合消化により消化ガスの発生量を効率的に増加させることができます。
東灘処理場では、バイオマス受入により年間約60万Nm³の消化ガス増加が見込まれており、増量した消化ガスは、同処理場内の消化ガス発電事業(発電能力1,614kW、807kW×2台)に供給されます。
この発電事業は神鋼環境ソリューション・神鋼環境メンテナンス・アイテック・大栄環境グループの4社が事業者として民設民営方式で実施しており、年間約874万kWhの発電量が見込まれています。
消化ガス発電の規模とCO₂削減効果
今回のバイオマス受入による消化ガス増量分だけで、約130万kWhの発電量が上乗せされます。これは年間約400世帯分の電力消費量に相当します。
発電した電力は、FIT制度を活用して電力会社へ売却し、再生可能エネルギーとして活用されます。
事業全体(消化ガス発電事業・バイオマス受入事業・水素供給事業を含む)では、年間約3,100t-CO₂の温室効果ガス削減効果が見込まれています。これは一般家庭約1,120世帯分のCO₂排出量に相当する規模です。
加えて、東灘処理場では消化ガス発電で得た電力を利用した水電解による水素製造・供給事業も並行して実施しています。水素供給能力は30Nm³/日(35MPa)で、水素自動車への充填にも対応しています。
さらに、下水汚泥からリンを回収し肥料化する「KOBEハーベストプロジェクト」も継続しており、エネルギー・資源の両面で循環型社会の実現を目指す総合的なプラットフォームとして機能しています。
東灘処理場 主要事業の概要
| 事業名 | 事業方式 | 主な数値 |
|---|---|---|
| 消化ガス発電事業 | 民設民営 | 発電能力1,614kW/年間約874万kWh |
| バイオマス受入事業 | 公設民営 | 平均16.5t/日受入/消化ガス年60万Nm³増 |
| 水素供給事業 | 民設民営 | 30Nm³/日(35MPa) |
| CO₂削減効果(全体) | — | 年間約3,100t-CO₂ |
今後の展開と国内下水道バイオガス事業への示唆
この事業が注目される理由は、技術的な先進性だけではありません。下水処理場内で産業廃棄物処分業許可を取得することによって、食品製造業者が排出する食品残渣を受け入れることが可能になりました。
国土交通省は下水汚泥のエネルギー・農業利用率の向上を政策目標として掲げており、下水処理場での地域バイオマス利活用はその中核施策のひとつです。
全国の下水処理場で嫌気性消化を行っている施設は約300箇所(JSWA調べ)にのぼりますが、積極的にバイオマス混合消化を実施している例はまだ限られています。
神戸市の取り組みは、DBO方式・包括的民間委託・公設民営・民設民営を組み合わせた多様な官民連携スキームを構築した点でも、他自治体にとって参考となるモデルです。
また、消化ガスの有効利用率は神戸市全体で77%(2017年度実績)に達しており、バイオマス受入によってさらなる向上が期待されます。






