マルチ・スズキがインドのバイオガス投資を拡大 工場の脱炭素化へ

マルチ・スズキがインドのバイオガス投資を拡大

インドの自動車最大手マルチ・スズキ・インディアは、6月5日の「世界環境デー」に合わせて、製造工程の脱炭素化を目的とする2件のバイオガス投資を発表しました。

マルチ・スズキはハリヤナ州のカルコーダ工場に、日量10トン(10TPD)規模の大型プラントを新設し、マネサール工場では既存設備の処理能力を3.5倍に引き上げます。

Maruti Suzuki Press release:Maruti Suzuki Expands Biogas Capacity

両プロジェクトの投資額は150クロール・ルピー(約25億円)となり、生成されたガスは塗装工程の熱源や社員食堂で活用されるほか、副産物も有機肥料として、地域の農業に還元される仕組みです。

スズキのインドエネルギー戦略 自動車工場にバイオガス投資

スズキのインドエネルギー戦略

インドは石油の多くを輸入に頼っており、エネルギー安全保障とコストが国家的課題となっています。

モディ首相は化石燃料からの脱却を繰り返し訴え、政府主導で廃棄物を資源に変える「Waste-to-Wealth(廃棄物から富へ)」ミッションを推進しています。

また、インド政府はバイオガス分野にも大規模な財政支援策を打ち出しており、国家バイオエネルギープログラム(NBEP)に多額の予算を計上しています。

参考記事:インド政府が国家バイオエネルギープログラムに投資

今回のマルチ・スズキの発表も、まさにこの国家方針と歩調を合わせたもので、自動車メーカー自身が、工場燃料の一部を内製化する点に、このプロジェクト最大の特徴があります。

同社の竹内寿志 Managing Director & CEOは、「Maruti Suzukiは、化石燃料消費と石油輸入依存を減らす取り組みを一貫して進めてきた。カルコーダに10TPDのバイオガスプラントを新設し、マネサールの既存プラントも拡張する」と語っています。

カルコーダのプラント新設とマネサールの3.5倍拡張

カルコーダとマネサールのプラントは、いずれも嫌気性消化(メタン発酵)でバイオガスを生産します。

主な原料となるのは、社員食堂から出る食品廃棄物や、現地で調達しやすいネピアグラス、稲わらなどです。将来的には牛糞をブレンドすることも視野に入れています。

生み出されたガスは塗装工程の熱源や食堂の調理用ガスとして使われ、発酵後に残る残渣(有機肥料・FOM)は工場敷地内の緑化や周辺農家へ提供されます。

無駄なく資源を循環させるエコシステムが、両プラントに共通する設計思想です。

カルコーダ工場 自動車業界では最大級のプラント

ハリヤナ州カルコーダ工場に新設するプラントは、2026年度内の稼働を予定し、フル稼働時には年間約9,490トンのCO2削減と、同工場のガス需要の約2割を賄う計画です。

インド自動車業界では最大級のバイオガス設備となる見込みで、大きな注目を集めています。

マネサール工場 2024年のパイロットから本格運用へ

マネサール工場の設備は、2024年度に日産0.2トンで始まったパイロットプラントが原点です。

Maruti Suzuki Press release:Maruti Suzuki strengthens commitment to renewable energy, commences a pilot Biogas plant at Manesar facility

今回の投資で、処理能力を3.5倍の0.7トンへと拡張し、年間約36万Nm³のバイオガス生産と約664トンのCO2削減を見込んでいます。

このプロジェクトは、プラント実験から本格運用へとステップアップを果たした実証例となります。

マネサール工場とカルコーダ工場の概要

項目マネサール工場(拡張)カルコーダ工場(新設)
処理能力0.2→0.7TPD(3.5倍)10TPD
稼働時期拡張完了済み(2026年)2026年度内
年間生産量約36万Nm³工場ガス需要の約20%
年間CO2削減約664トン約9,490トン
主な用途塗装工程・食堂塗装工程・食堂

スズキのバイオガス事業 自社工場の脱炭素へ

スズキはこれまで、インド子会社のSuzuki R&D Center Indiaが、NDDB(全国酪農開発機構)やBanas Dairyと連携し、牛糞を原料とした圧縮バイオガス(CBG)の生産事業を進めてきました。

参考記事:スズキのインドCBG拠点 BANAS SUZUKIバイオガスプラント始動

これらの事業は、農村地域の所得向上や、クリーンな燃料供給という社会課題の解決を目的としていました。

それに対し、今回の2工場での取り組みは、工場から出る廃棄物などを原料とし、生産したガスを自分たちで使って製造工程のCO2を減らす「自家消費型」モデルです。

スズキはインドのバイオガス事業を、従来の地域支援・流通目的から、自社工場の脱炭素化へと拡大しており、その活用戦略を進化させていることがわかります。

スズキのグリーンエネルギー計画とソーラー連携

これらのバイオガス投資は、同社が2030年度(FY2030-31)までに進める総額約92.5億ルピー(約155億円)のグリーンエネルギー計画に沿って実行されます。

この計画では、太陽光発電の設備容量を現在の79MWpから319MWp相当へ引き上げ、工場で使用する電力の再生可能エネルギー比率を85%まで高めるという野心的な目標を掲げています。

Maruti Suzuki Press release:Maruti Suzuki expands solar capacity by 30MWp with new projects at Kharkhoda and Manesar

すでにグジャラート州のハンサルプル工場では、使用する天然ガスの約1割をバイオガスに置き換えており、今後はこうした取り組みが複数の拠点へ横展開される見通しです。

バイオガスと太陽光発電をうまく組み合わせ、製造業の脱炭素化を現実的なアプローチで進めるスズキの戦略は、製造現場のバイオガス活用における参考事例となります。

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