鹿島が高温固定床式の小型メタン発酵装置「メタクレス・ミニ」開発

鹿島が高温固定床式の小型メタン発酵装置「メタクレス・ミニ」開発

大手ゼネコンの鹿島建設は、ヴァイオス(和歌山市)と共同で、国内唯一となる高温固定床式の小型メタン発酵装置「メタクレス・ミニ」を開発したと発表しました。

この装置は同社のメタン発酵技術「メタクレス」を小型化したもので、少量のバイオマスからオンサイトで再生可能エネルギーを創出することができます。

鹿島建設プレスリリース:国内唯一の高温固定床式・小型メタン発酵装置「メタクレス・ミニ」を開発

食品リサイクル法の改正によりメタン発酵への注目が高まる中、中小規模の食品工場や事業者でも高温固定床式の高効率メタン発酵を導入できる技術として注目されます。

小型メタン発酵装置メタクレス・ミニ 開発の背景

日本では年間約464万トン(環境省 2023年度推計値)の食品ロスが発生しており、食品廃棄物のリサイクル手法としてメタン化(バイオガス化)の重要性が増しています。

また、2025年3月に食品リサイクル法に基づく新たな基本方針が策定され、エネルギー利用の推進が明記されました。

農林水産省:食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針

しかし、従来のメタン発酵プラントは大規模な設備投資が前提であり、大型プラントの運営に必要な原料を確保できない中小規模の食品工場や事業所では、導入が困難でした。

このような背景から、少量のバイオマスでもオンサイトで処理・エネルギー回収が可能な小型・分散型メタン発酵システムへのニーズが高まっています。

鹿島建設はこうした市場ニーズに対し、独自の高温固定床式技術を小型装置化するという形で応えています。

他にも、小型バイオガスプラントを手掛けるビオストック社やヴァイオス社などが市場参入しており、実用化に向けた動きも進んでいます。

高温固定床式メタクレス・ミニの技術的特徴

メタクレス・ミニの最大の特徴は、鹿島建設が独自に開発した「高温固定床式」メタン発酵技術を小型装置として実装した点にあります。

この技術の核心は、発酵槽(バイオリアクタ)内部に担体を充填し、メタン発酵菌を高密度に定着させる「固定床」構造と、55℃前後の高温域で運転する「高温発酵」の組み合わせです。

固定床式では、担体が微生物のすみかとして機能するため、流入する原料の負荷変動に対しても安定した分解性能を維持できます。

一般的な完全混合式(CSTR)と異なり、微生物が槽外に流出しにくいことから、小さな槽容量でも高い有機物分解率を実現できます。

また、高温発酵(55℃)は中温発酵(37℃前後)と比較して分解速度が速く、同等の原料処理量であれば発酵槽をコンパクトにできるというメリットがあります。

鹿島建設の発表によれば、性能実証で発酵槽のサイズを従来比で3分の1に縮小できることを確認しています。

さらに、メタクレスは従来のメタン発酵と比べて、槽容量あたり1.5~2倍のバイオガスを発生させることが可能で、メタクレス・ミニも同様のガス収率が期待されます。

鹿島建設 技術紹介:メタクレス(固定床式高温メタン発酵システム)

メタクレスの導入実績とヴァイオスの技術

メタクレス・ミニのベースとなったメタクレスは、霧島酒造の焼酎粕リサイクル施設(宮崎県都城市)をはじめ、食品リサイクル分野で豊富な導入実績を持っています。

霧島酒造の施設では、焼酎粕を最大1,200t/日で受入れ処理する国内最大クラスの規模であり、回収したバイオガスを発電や製造用の蒸気として利用しています。

また、鹿島建設は北海道十勝地域(鹿追町・帯広市)で、家畜ふん尿由来のバイオガスから水素を製造し、酪農施設や燃料電池車で利用する環境省の実証事業にも参画しています。

ヴァイオスの小型コンテナプラント技術

共同開発パートナーの株式会社ヴァイオスは、和歌山市に本社を置く環境メンテナンス企業で、20フィートコンテナに収まる小型メタンガス発電プラントを自社開発し、国内10か所以上での導入実績があります。

コンテナ型プラントは2日間での据付・稼働開始が可能な可搬型設計が特徴であり、梅調味廃液のメタン発酵処理など地域資源の活用にも実績を持ちます。

経済産業省の「地域未来牽引企業」に選定されているほか、NEDOの実証事業にも採択されています。

株式会社ヴァイオス:小型メタンガス発電プラント

鹿島建設の高温固定床式メタン発酵技術と、ヴァイオスの小型コンテナプラント製造・運用ノウハウを組み合わせることで、メタクレス・ミニの開発が実現しました。

メタクレス・ミニの今後の展開

鹿島建設は、今後ヴァイオスと共同でメタクレス・ミニの普及・展開を図り、カーボンニュートラルと循環型社会の実現に貢献するとしています。

少量のバイオマスからエネルギーを創出できるメタクレス・ミニの特性は、食品工場やリサイクル事業者・農業法人・中小自治体など、大型プラントの導入が難しい事業者層にアピールできます。

バイオガス市場全体をみると、日本では環境省や農林水産省によるメタン化推進施策、FIT/FIP制度による売電インセンティブ、食品リサイクル法のエネルギー利用推進方針など、制度面での後押しが整いつつあります。

一方で、小型メタン発酵市場には、ビオストック(NTTグループとの連携によるコンテナ型プラント)や、Hipotech(パイロットプラント向け装置)など、複数の事業者が存在しています。

メタクレス・ミニが他社製品と大きく異なるのは、高温固定床式というコア技術にあります。中温・完全混合式が主流の小型市場で、高温固定床式の高い分解効率とコンパクトな設備は、他との差別化要因になります。

ただし、高温発酵は加温エネルギーの消費が大きくなる傾向があるため、エネルギー収支の最適化や運転管理の難易度が実際の導入判断に影響する可能性があります。

また、共同開発パートナーのヴァイオスは東南アジアを中心とした海外展開にも意欲を示しており、メタクレス・ミニが海外市場に展開される可能性もあります。

発展途上国の廃棄物処理とエネルギー不足の同時解決というニーズに対して、可搬型・高効率の小型メタン発酵装置は有力なソリューションとなるでしょう。


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