カナデビアのスイス子会社、Kanadevia Inova AGが、米国ミネソタ州のルイスビルタウンシップで、大規模嫌気性消化施設「Louisville Township Renewable Gas Project」の建設に着手しました。
地元廃棄物事業者 Dem-Con Companies, LLC との共同事業として、年間最大75,000トンの有機廃棄物を処理し、再生可能天然ガス(RNG)とバイオチャーを同時生産する北米初の施設となります。
稼働開始は2027年を予定しており、ミネソタ州の脱炭素政策と循環型経済への寄与が見込まれます。
カナデビア ニュースリリース:Kanadevia Inova が米国ミネソタ州でバイオメタンガス事業を実施~ 循環型社会と再生可能エネルギー分野に貢献 ~
カナデビア・イノバ ミネソタ州バイオメタン事業の概要
2026年2月2日、カナデビア・イノバと地元パートナーの Dem-Con Companies は、ミネソタ州スコット郡ルイスビルタウンシップで、新施設の起工式を実施しました。
この施設は「DCHZI BioEnergy」の名称で運営され、ツインシティーズ都市圏(ミネアポリス・セントポール)周辺の自治体から収集される食品廃棄物や有機性廃棄物を主な原料とします。
施設の主な原料供給元は、ラムゼー郡とワシントン郡の公的廃棄物処理機関である Ramsey / Washington Recycling & Energy(R&E)です。
同機関は「Food Scraps Pickup Program」を通じて、住民から分別回収した生ごみを搬入する予定です。
Ramsey/Washington Recycling & Energy(R&E):RELEASE: State-Of-The-Art Regional Anaerobic Digestion Facility One Step Closer to a Reality in Minnesota
Louisville Township Renewable Gas Projectの概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プロジェクト名 | Louisville Township Renewable Gas Project |
| 所在地 | 米国ミネソタ州スコット郡ルイスビルタウンシップ |
| 事業主体 | Dem-Con HZI (DCHZI) BioEnergy (Kanadevia InovaとDem-Con Companies, LLCの共同事業) |
| 年間処理能力 | 有機廃棄物 最大75,000トン |
| RNG年間生産量 | 約200,000 MMBtu(約2,700世帯分相当) |
| バイオチャー年間生産量 | 約8,000トン |
| 稼働開始予定 | 2027年 |
| RNG供給先 | CenterPoint Energy / Xcel Energy |
ミネソタ州のRNG政策と事業推進の背景
このプロジェクトは、ミネソタ州が掲げる温室効果ガス(GHG)削減、埋立処分量の低減、再生可能エネルギー生産の拡大という政策目標に沿ったものです。
ミネソタ州では、2021年に「Natural Gas Innovation Act(NGIA)」が成立し、天然ガス事業者がバイオガスやRNG、水素などの資源を活用する「イノベーションプラン」を立案できるようになりました。
Public Utilities Commission:Natural Gas Innovation Act (NGIA)
CenterPoint Energyは、2024年に州公益事業委員会(PUC)からイノベーションプランの承認を受け、RNG調達を含む17のパイロットプロジェクトに取り組んでいます。
この施設で製造されるRNGは、このNGIAの枠組みのもとで CenterPoint Energy、および Xcel Energy とのオフテイク契約により、地域のガス配管網に供給されます。
資金面では、ミネソタ環境天然資源信託基金やミネソタ州商務局の助成金、米国環境保護庁(EPA)の気候汚染削減助成金、州競争力基金マッチングファンドなど、複数の機関から支援を受けています。
ミネソタ汚染管理局(MPCA)は、2023年にツインシティーズ都市圏に対して廃棄物削減の方針を示していますが、ごみ焼却施設の閉鎖や埋立容量の逼迫を受け、有機廃棄物の転換先確保が急務となっています。
DCHZI BioEnergyは、有機廃棄物の受け皿として重要な役割を果たすことになります。
HSAD+ガス化によるバイオチャー同時生産技術

この施設の技術的特徴は、高固形物嫌気性消化(HSAD: High-Solids Anaerobic Digestion)とガス化技術を統合し、バイオチャーを同時生産する処理プロセスにあります。
HSADプロセスでは、密閉された無酸素タンク内で微生物が有機物を分解し、バイオガスを生成します。
このバイオガスをアップグレーディング(精製)して、CO₂や不純物を除去することで、パイプライン品質のRNGを製造します。
カナデビア・イノバは2014年に取得した乾式メタン発酵技術「Kompogas®」をはじめ、欧州・北米で100基以上のバイオガスプラントを運営してきた実績があります。
通常の嫌気性消化施設では、消化残渣(ダイジェステート)の処理が課題となりますが、本施設ではガス化工程を後段に組み合わせることで、残渣をバイオチャーに変換します。
バイオチャーは炭素を安定的に固定する素材として、農業用土壌改良材や工業用途に活用でき、施設全体のカーボンインテンシティ(炭素強度)を低減する効果があります。
カナデビアの世界バイオガス戦略
カナデビアグループは、2014年にスイスの電力大手Axpoグループから乾式メタン発酵技術「Kompogas®」を取得してバイオガス事業に参入して以来、積極的なM&A戦略によって事業を拡大してきました。
会社概要:カナデビア(旧:日立造船)
2021年にはドイツのSchmackグループから湿式メタン発酵技術を、2024年にはイタリアのSchmack Biogas Srlを買収し、乾式・湿式両方の発酵技術を保有する体制を構築しています。
会社概要:Kanadevia Inova / Schmack Biogas (カナデビアイノバ / シュマック)
2025年には英国のIona Capital Ltdおよびグループ4社を買収して11カ所のバイオガスプラントを取得し、同年にはオランダのバイオメタン事業会社Groengas Cothen B.V.も傘下に加えました。
さらに2025年11月には英国で2カ所のプラントを追加買収し、欧州4カ国で計17施設を保有・運営する規模に成長しています。
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転換期を迎える米国バイオガス業界
一方、米国のバイオガス業界は転換期にあります。American Biogas Council(ABC)の報告によると、2025年に米国で稼働を開始したバイオガス施設は70件で、2019年以降で最少の水準でした。
しかしながら、2020年以降にRNGを生産する施設数は3倍に増加し、RNG生産量も倍増しています。
ABCは現在回収可能なバイオガスの約25%しか活用されていないと推計しており、特に農業分野や埋立地での潜在的な成長余地が大きいと指摘しています。
カナデビア・イノバにとって、本プロジェクトはEPC(設計・調達・建設)事業に加えて、施設の所有・運営まで手掛ける垂直統合型ビジネスモデルへの転換を示す重要な案件です。
今後も欧州のREPowerEU政策や北米のRNG需要拡大を追い風に、グローバルなバイオガス事業の拡大が見込まれます。






