英国の合成天然ガススタートアップRivanが欧州最大級SNGプラント建設

英国の合成天然ガススタートアップRivanが欧州最大級SNGプラント建設

英国の合成天然ガス(SNG)スタートアップの Rivan Industries が、2026年4月にベンチャーキャピタルや投資家から大規模な資金調達(約2,500万ポンド)を行いました。

これにより、Rivanは欧州最大級となる合成天然ガス(SNG:Synthetic Natural Gas)製造プラントの建設計画を本格化させます。

Rivan Industries:Rivan raises £25m to scale synthetic fuel production

また、地域ガス配送会社のWales & West Utilitiesと提携し、英国初となる商用の都市ガスグリッド(ガス導管網)への注入プロジェクトにも乗り出します。

Rivan Industries 合成天然ガス(SNG)スタートアップ

Rivan Industriesは、2024年に英国の起業家 Harvey Hodd 氏によって設立されたスタートアップ企業です。

Rivanの強みは、太陽光由来のグリーン水素と、大気中から回収したCO₂(DAC)を用いて、合成メタンを製造するまでの全工程を、自社で一貫して行える点にあります。

Rivanは欧州のエネルギー安全保障強化を目指す合成燃料企業として、ベンチャーキャピタルや投資家から資金を集めており、累計資金調達額は4,600万ドルに達しました。

Rivanの事業計画 商用SNGプラント建設

Rivanは今後12ヶ月で、商用SNGプラント「Project Starwell」をはじめとする以下の展開を予定しています。

  • Project Starwell(15MW):英国ウィルトシャー州に建設される欧州最大級の商用SNGプラント。英国のガス網にSNGが注入される初の事例となる予定
  • Production Base 1(50,000 sq ft):南ロンドンの新製造拠点で、年間最大50MW分のシステムを生産
  • R&D投資強化:DAC・電解装置・反応器・太陽光の各領域で、2〜3年以内の化石燃料価格との競争力獲得を目標
  • Wales & West Utilitiesとの提携:英国初の商用グリッド接続SNGプロジェクトを共同推進

長期的には、今後10年以内に年間10億立方メートル以上のSNGを生産し、現在の英国産業用ガス需要の約20%を代替することを目標としています。

また、SNG生産によって数百万トン規模のCO₂を回収可能で、これは炭素循環利用という意義もあります。

欧州の合成燃料セクターには、ドイツのIneratecや、スイスのSynhelionなどの企業も存在しますが、Rivanは「オフグリッド太陽光 + 全工程内製 + ガス網直接注入」という統合戦略で差別化を図ります。

RivanのSNG製造技術 DACとグリーン水素を統合

RivanのSNG製造技術

Rivanの技術的な特徴は、SNG製造に必要なほとんどの工程を、自社で一体的に設計・運用している点です。

同社のSNGシステムは、カルシウムルーピング方式のDAC装置で大気中のCO₂を回収し、アルカリ電解槽で水素を製造、そのCO₂と水素をサバティエ反応器で結合してメタンを生成します。

つまり、e-メタン(合成メタン)と同じ化学プロセスを、太陽光由来の再生可能エネルギーと、大気中のCO₂だけで完結させるモデルです。

英国ガス安全規格 GS(M)Rに適合するSNG実証

英国ガス安全規格 GS(M)Rに適合するSNG実証

2025年9月、Rivanは100kW級のパイロット反応器で、英国のGS(M)R(Gas Safety (Management) Regulations)に適合するSNGの生成に成功しています。

Rivan Industries:Rivan achieves GS(M)R grid-specification reactor performance

GS(M)Rは英国のガス安全規格であり、特にSNG中の水素濃度を0.1%未満に抑える必要があります。これは水素を10%まで許容するドイツの基準と比べても、かなり厳しい条件です。

太陽光発電は出力が変動しやすく、生成されたSNGの品質に影響を与える可能性があります。

Rivanはこの高い純度を、流量が変動する条件下でも維持できることを実証しており、将来のSNG商用ガス導管注入に向けた重要な技術的成果といえます。

英国・欧州のガス輸入依存とSNGの戦略的位置づけ

Rivanの事業が注目される背景には、英国や欧州が抱えるガス輸入依存の問題があります。

2024年時点で、英国はガス需要の約49%、欧州全体では85%を輸入に依存しており、LNGの国際競争や、2022年以降のウクライナ紛争、中東情勢の緊迫化など、価格変動の影響を受けやすい構造にあります。

そのため、欧州の主要産業団体11組織は「共同バイオメタン宣言」を発表し、バイオメタン増産や許認可促進などの政策加速を要請しています。

参考記事:欧州共同バイオメタン宣言 EU産業団体が政策加速を要請

合成天然ガス(SNG)は、化学的には天然ガスとほぼ同じメタンであるため、既存のパイプラインや貯蔵設備にそのまま利用しやすいという利点があります。

また、水素のように大幅なインフラ改修を必要としない点も重要で、鉄鋼・セメント・化学など電化が難しい工業分野では、SNGは現実的な脱炭素手段の1つになります。

Rivanの強み 主要設備内製で合成メタンコストを低下

Rivanが他社と大きく異なるのは、DAC装置、電解装置、反応器などの主要設備を、ロンドンの自社工場で内製している点です。

創業者のHodd氏は「当社は電力グリッドより2桁安く太陽光を展開できる。すべては平準化メタンコスト(LCOM)という1本の曲線の上に立っている」と述べています。

Rivan Manifesto:The case for synthetic fuels

メタネーションはコスト面で課題がありますが、Rivanはハードウェアの内製化と太陽光コストの低下を組み合わせ、合成メタンの製造コストを下げる戦略を志向しています。

参考記事:メタネーションのデメリットとコスト面の課題

他のメタネーション事業者・日本国内e-メタン実証との違い

Rivanを合成メタンの米国スタートアップ、Terraform Industriesと比較すると、技術構成や事業モデルに明確な違いがあります。

日本勢は、IHI・カナデビア・東京ガス・大阪ガス・INPEXなどがメタネーションの実用化を進めています。

項目Rivan(英国)INPEX・大阪ガス(日本)Terraform Industries(米国)
CO₂源DAC(カルシウムルーピング)分離回収(既存ガス田CO₂)DAC
水素源オフグリッド太陽光+電解外部調達オフグリッド太陽光+電解
事業モデル垂直統合(装置自社製造+自社運営)INPEX主導の実証コンソーシアム垂直統合(装置自社製造)
処理規模(公表)15MW(Project Starwell)400Nm³-CO₂/hパイロット段階
主用途英国ガスグリッド注入・重工業都市ガス導管注入産業用合成燃料

参考記事:日本企業のe-メタン・メタネーション技術開発と実用化事例

参考記事:Terraform Industries e-メタンの劇的コストダウンを目指す米国スタートアップ


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