パナソニック・ド・ブラジルと、カナダのバイオガス精製大手 Greenlane Renewables は、埋立地ガス精製装置の生産に関する確定契約を2026年5月11日に結んだと発表しました。
PR Newswire:Greenlane Signs Definitive Agreements with Panasonic as Cascade LF Production Partner in Brazil
サンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポスにあるパナソニックの既存工場に拠点を置き、次世代の埋立地ガス精製装置「Cascade LF」と、膜分離式のバイオガス精製装置「Cascade MS」をブラジル国内で生産します。
初期投資額は800万〜1,000万ブラジルレアル(約2.5億〜3.2億円)を見込んでおり、2026年末までに初号機を出荷する予定です。
ブラジルでバイオメタン精製装置を現地生産する理由

ブラジルは世界最大級のバイオガス生産能力を有し、ブラジルバイオガス協会(ABiogás)の試算によると、技術的な生産ポテンシャルは年間約846億Nm³に達します。
原料の多様性も特徴で、サトウキビのビナッセ(vinasse)や家畜の糞尿、食品加工の廃棄物、都市ごみの埋立地から出るガスなど、幅広い基質から生産が可能です。
ブラジルのバイオメタン推進法「Fuel of the Future Law」
ブラジルでは、2024年に成立した法律 Lei nº 14.993/2024(通称:Fuel of the Future Law)に基づき、2026年から天然ガス事業者に対して、バイオメタン利用等を通じたGHG排出削減義務が導入されました。
法律では最低1%のバイオメタン混合を目標としており、この割合は最大10%まで段階的に引き上げられる計画です。
CIBiogas:NATIONAL PROGRAM TO INCENTIVE BIOMETHANE IN THE FUEL OF THE FUTURE LAW
また、国営石油会社ペトロブラスも、2026年から大規模なバイオメタン買い取り方針を示しており、需要が急速に高まっています。
設備・装置の輸入依存から脱却
ブラジルではバイオメタン需要が拡大する一方で、精製装置を輸入に頼っており、関税や輸送費、為替変動のリスクが事業の利益を圧迫してきました。
Greenlane Renewablesは、ブラジル現地生産の切り替えによってプロジェクトの収益性を向上させることで、バイオメタンのさらなる普及を進める方針です。
Cascade LF と Cascade MS の技術的特長
今回現地生産される2つの製品は、用途や対象となる原料が明確に異なります。
| 項目 | Cascade LF | Cascade MS |
|---|---|---|
| 主な用途 | 埋立地ガス(LFG)の精製 | 大規模バイオダイジェスター用 |
| 対象原料 | 都市ごみ埋立地ガス(窒素・酸素が多い) | 農業・畜産廃棄物、サトウキビ残渣など |
| 分離の仕組み | 独自のLinear NRU(平衡型PSA方式) | メンブレン(膜)分離方式 |
| 処理能力 | 2,500または5,000 Nm³/h | 大型施設向けに最適化 |
| メタン回収率 | 窒素除去1段あたり最大99% | 大型用途で高い効率を発揮 |
Cascade LFの特徴 埋立地ガスの課題解決
埋立地から発生するガスには空気が混じるため、窒素(N₂)や酸素(O₂)が多く含まれます。
これらをメタンと分けるのは技術的に困難ですが、Greenlaneの「直線型窒素除去ユニット(Linear NRU)」は、小型の装置で効率的に窒素を取り除くことができます。
これにより、初期費用や維持費を抑えつつ、99%という極めて高いメタン回収率を実現しました。これは事業の経済性を左右する決定的な強みとなります。
Greenlane:Greenlane Cascade LF
装置生産能力とスケジュール
- 初期生産能力:2,500 Nm³/h機で年12台、5,000 Nm³/h機で年6台相当(1日1交代制ベース)
- 初号機出荷目標:2026年末を予定
- 役割分担:パナソニックが製造と資金面を担当、Greenlaneが設計、販売、設置・保守を担う
- 今後の計画:市場の拡大に合わせて段階的に生産ラインを増強する予定
Greenlane Renewables(グリーンレーン・リニューアブルズ)
Greenlaneはバイオガスアップグレーディング技術のパイオニアで、世界32カ国で500基以上の納入実績を持っています。
アップグレーディングの主要3技術(水洗浄式、PSA式、膜分離式)を持つメーカーは少なく、原料やプロジェクトの規模に応じて、最適なソリューションを提案できます。
北米のRNG設備メーカー:Greenlane Renewablesの概要
パナソニックのバイオメタン戦略と今後の展開
精製装置の製造を担うサンジョゼ・ドス・カンポス工場は、1974年に稼働した歴史ある拠点ですが、近年はB2B(企業向け)のエネルギー事業へと軸足を移しています。
今回の提携は、2030年までの脱炭素目標「Panasonic GREEN IMPACT」の一環であり、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への貢献を目指すものです。
パナソニック ホールディングス:Panasonic GREEN IMPACT
これまでのバイオメタン供給網は、DMT、Wärtsilä、Greenlaneなどの欧州・北米企業がリードしてきましたが、日系企業のパナソニック参入により、ブラジル市場の競争構造を一変させる可能性があります。
ブラジルのバイオメタン生産能力は、2035年までに最大7倍に急増すると予測されており、その成長性を見込んで、日本企業もブラジルのバイオメタン市場に参入しています。
参考記事:豊田通商・東邦ガスがブラジルでサトウキビ由来バイオメタン実証へ






