牛のルーメン微生物でメタンガス生成 環境微生物研究所「エコスタンドアロン」

牛のルーメン微生物でメタンガス生成 環境微生物研究所「エコスタンドアロン」

石川県立大学発のスタートアップ、環境微生物研究所では、牛の第一胃(ルーメン)に棲む微生物を活用して、難分解性物質から効率よくメタンガスを生成する技術を研究しています。

環境微生物研究所はその技術を活用し、雑草や農業残さからメタンガスを生成する小型メタン発酵システム「エコスタンドアロン」を開発しました。

環境微生物研究所: エコスタンドアロン|雑草発電・野菜発電 防災と脱炭素を両立

メタンガスで発電すれば、電気で明かりを灯したり携帯電話を充電することも可能で、災害時にも活用できる分散型エネルギーシステムとして注目を集めています。

すでに災害対応機能を備えた小型メタン発酵システムを開発する「RUMENプロジェクト」が始動しており、スーパーに設置したプラントで野菜クズを使ったメタン発酵の実証実験を行っています。

また、電源開発株式会社(J-POWER)と、スタートアップスタジオのSpireteが共同で運営する「SX lab」に採択され、J-POWERからの出資が決定しており、事業化に向けた動きも加速しています。

牛のルーメン微生物によるメタン発酵の仕組み

牛のルーメン微生物によるメタン発酵の仕組み

環境微生物研究所は、石川県立大学の研究成果である牛ルーメン液を活用して、雑草や農業残さからバイオガスを生成する高効率メタン発酵技術「GEP(ゲップ)ソリューション」を開発しました。

牛は第一胃(ルーメン)に生息する微生物によって、食べた牧草を分解しています。環境微生物研究所の技術は、この第一胃(ルーメン)微生物を活用する点に特徴があります。

通常のメタン発酵では植物性残渣を効率的に分解できませんが、このルーメン微生物を牛の体内から取り出して活用すれば、雑草や農業残さのメタン発酵効率を飛躍的に向上させることができます。

石川県立大学准教授で、環境微生物研究所の代表も務める馬場保徳先生は、ルーメン微生物によるメタン発酵について研究を重ねてきました。

KAKEN 研究成果報告書: 牛ルーメン微生物共生機構の解明に基づく難分解性バイオマスのメタン発酵の実現

ルーメン微生物の特徴

  • セルロースなどの難分解性物質を効率的に分解
  • 多様な微生物群集による相互作用で安定した発酵を実現
  • 雑草や農業残渣など幅広い原料に対応可能
  • 通常のメタン発酵よりも高い分解効率

ルーメン微生物群では、一般的に3つのセルロース分解酵素群と7つのヘミセルロース分解酵素群が作用して、植物繊維のセルロースを効率的に分解しています。

植物の繊維(セルロース)は難分解性物質ですが、牛の第一胃(ルーメン)内のpHは6.5~7.0とほぼ中性で、セルロースを分解するルーメン微生物の活動に適しています。

繊維分解の際は、セルロース鎖から離れることなくセルロースを効率的に分解できるという研究結果も報告されており、この高い分解能力が「エコスタンドアロン」の技術的優位性を支えています。

災害時のBCP対策 電気やエネルギー確保に

エコスタンドアロンの開発に取り組む馬場先生は、東北大学の研究員時代に発生した東日本大震災で被災し、当時のひどい状況を経験しています。

東日本大震災の影響で電気が止まり、明かりもない状態の中で「外を見ると雑草と落ち葉だけはあったので、これを電気に変えれば」という発想が研究の原点になりました。

エコスタンドアロンは災害対応機能を備えており、災害発生時は雑草や農業残さから都市ガスと電気を生産することで、BCP対策や防災施設のエネルギー拠点として活躍します。

また、平時は食品廃棄物などを原料とすることで、廃棄物処理費の削減および低炭素化社会に貢献し、将来は分散型エネルギー供給システムなどの開発を目指します。

RUMENプロジェクト スーパーでの実証実験

RUMENプロジェクト スーパーでの実証実験

環境微生物研究所では株式会社リバネス他2社とともに、災害対応機能を備えた小型メタン発酵システムの開発を行うRUMENプロジェクトを開始しています。

リバネス プロジェクトリリース:災害対応機能を備えた小型メタン発酵システムの開発を行うRUMENプロジェクトを開始

プロジェクト第一弾の取り組みとして実証第一号機を開発し、2024年1月から石川県川北町のスーパーで、野菜くずからメタンガスと電気をつくる実証実験を始めました。

店内で出る野菜くずをルーメン微生物で分解・発酵させてメタンガスを生成します。他に農園やハウス栽培施設などでも活用が可能で、メタン発酵消化液は肥料として利用できます。

活用場所原料期待される効果
スーパーマーケット野菜くず廃棄コスト削減、電力の自家消費
農園農作物の栽培残さ廃棄代削減、肥料代削減
ハウス栽培施設茎や葉っぱCO2供給によるカーボンニュートラル

2025年度には能登の被災地エリアへの設置も予定しており、今後の南海トラフ地震など大きな災害が予想される中で、避難所のエネルギー確保や生活向上への貢献が期待されます。


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