一般財団法人バイオインダストリー協会(JBA)が、2026年3月13日に「二国間クレジット制度(JCM)で加速する海外での脱炭素プロジェクト」と題した説明会を開催します。
JCMを活用したアジア・アフリカ地域での脱炭素インフラ構築と、カーボンクレジット獲得を日本企業に呼びかける内容で、ベトナムやタイなどで具体的な案件形成が進んでいます。
JBAセミナー案内:バイオインダストリー協会/ 二国間クレジット制度(JCM)で加速する海外での脱炭素プロジェクト
GX-ETSの2026年度本格稼働を控え、JCMクレジットの需要が高まる中で、日本のバイオガス精製技術を海外に展開する「技術プロバイダー」モデルが今後広がっていくと予想されます。
JCM海外プロジェクトが拡大 GX-ETSとクレジット需要
JCM(Joint Crediting Mechanism:二国間クレジット制度)は、日本とパートナー国が協力して温室効果ガスの排出削減に取り組み、その成果を両国で分け合う制度です。
2026年2月時点で31カ国との間に枠組みが構築され、プロジェクト数は300件近くに達しています。
2024年6月には地球温暖化対策推進法が改正されてJCMが法制化され、2025年4月には指定実施機関「JCM Agency(JCMA)」が発足するなど、制度基盤が急速に整備されてきました。
この動きを一層加速させているのが、2026年度から本格稼働するGX-ETS(排出量取引制度)です。
plaplat 解説記事:2026年から本格稼働する排出量取引制度(GX-ETS)とは?制度の全体像と今後の見通しを解説
第2フェーズでは、一定規模以上のCO2直接排出事業者に参加が義務づけられ、排出枠の不足分に対してJ-クレジットおよびJCMクレジットによるオフセットが認められます。
経済産業省の中間整理案では、クレジット利用上限は各年度の実排出量の10%、排出枠の上限価格は1トンあたり4,300円と示されました。
タイ・ベトナムで浮上する脱炭素インフラ構築の具体案

JCMのプロジェクト実績をみると、ベトナムでは51事業、タイでは58事業がすでに稼働・計画中であり、両国は日本にとって主要なJCMパートナー国です。
タイでは、キャッサバ残渣やパームオイル搾汁廃液(POME)といった豊富なバイオマス資源が存在しますが、メタンが回収・有効活用されないまま大気中に自然放出されているケースが見られます。
ここに日本の密閉式ラグーン技術や発酵槽を導入することで、莫大なGHG削減(メタン回収)効果を生み出すことができます。
タイ政府は「BCG(バイオ・循環型・グリーン)経済モデル」を推進しており、農業やバイオ資源の活用・バイオガス発電とも親和性が高いことが特徴です。
2025年12月にはバンコクで環境省とタイ温室効果ガス管理機構(TGO)の共催によるビジネスフォーラムが開催され、日タイ企業8社がビジネスピッチを実施しました。
環境省報道発表:タイにおける二国間クレジット制度(JCM)プロジェクト参画・マッチングとパリ協定6条実施推進に関するビジネスフォーラムを開催しました
ベトナムでも急速な経済成長に伴う電力不足と、農業部門からのメタン排出削減が急務となっており、バイオ炭製造・炭素貯留の実証事業などについて、検討やFS調査が進んでいます。
また、過去の事例として、ハノイの生ごみ・腐敗槽汚泥混合処理や、ニンビン省の農産加工廃棄物バイオガス化など、バイオガス系のJCM案件が確認できます。
日本企業はバイオガス分野でEPC(設計・調達・建設)として参画し、現地企業にO&M(運用・保守)ノウハウを移転することで、持続可能な分散型電源のネットワークを構築することが可能です。
日本のバイオガス精製技術 分離膜・消化液回収の技術移転モデル
日本のバイオガス産業は国内の原料不足や収集コストの課題を抱えていますが、技術水準は高く、優れたメタン発酵技術や精製技術を保有しています。
また、バイオガスからCO₂を除去してバイオメタンを得る分離膜技術は省エネ性と小型化に優れ、消化液を液肥として回収する技術は、農業との資源循環を実現する点で現地のニーズに合致します。
国内事業とJCM海外事業の比較
| 項目 | 国内バイオガス事業 | JCMを活用した海外事業(ベトナム・タイ等) |
|---|---|---|
| 主な収益源 | 売電収入(FIT)、一部熱利用 | エネルギー売却益(ガス・電力)、炭素クレジット売却益 |
| 原料の確保 | 原料調達や収集コストが課題 | 未利用の農業残渣(キャッサバ、パーム油残渣等)が豊富 |
| 日本の役割 | プラントのオーナー・運営主体 | 高度な技術・設備の提供(技術プロバイダー)、事業設計 |
日本企業がJCMを通じてこれらの技術をパートナー国に輸出し、削減された温室効果ガスをJCMクレジットとしてカウントする「技術プロバイダー」モデルは、技術輸出とカーボンクレジット獲得を同時に実現できるメリットがあります。
民間JCMの展望 今後の企業戦略と課題
従来のJCMは、政府補助金を前提とした技術導入が中心でしたが、近年は「民間JCM」と呼ばれる企業主導のプロジェクト拡大に向けた制度整備が進展しています。
民間JCMでは、企業が自ら資金を投じてプロジェクトを実施し、その貢献度に応じたクレジットを取得します。クレジットはGX-ETSでのオフセットや温対法報告に利用でき、今後は他社への売却も見込まれます。
2026年2月に開催されたJCMグローバルパートナーシップ第5回会合では、日本企業28社がパートナー国政府と個別面談を実施しています。
環境省:二国間クレジット制度(JCM)グローバルパートナーシップ第5回会合を開催しました
バイオガス分野でも発酵技術の供与だけでなく、プラントのO&M(運営・保守)や副産物(消化液・バイオ炭)の付加価値化まで含めたパッケージ型の提案が望まれます。
GX-ETSの義務化により、クレジット需要が構造的に拡大する局面で、バイオガス分野のJCMプロジェクトは有望な海外事業機会であり、今後は日本企業が技術プロバイダーとして参入すると予想されます。






