千代田化工建設がVertus Energyと提携 微生物制御でメタン発酵効率化

千代田化工建設がVertus Energyと提携 微生物制御でメタン発酵効率化

千代田化工建設は2025年4月16日、オーストリアの Vertus Energy AG(ヴァータス・エナジー)と、メタン発酵を効率化する技術の共同開発、および商業化に向けた覚書を締結したと発表しました。

千代田化工建設:Vertus Energy とメタン発酵効率化技術の商業展開に向けた協業に関する覚書を締結

Vertus Energyはウィーンに拠点を置くバイオテクノロジー企業で、発酵槽内のバクテリアを高度に管理し、効率的にバイオガスを生成する技術の研究開発を行っています。

千代田化工建設は今回の提携によって、バイオガス生成や運営の技術を取得し、将来はVertus Energyの技術や機器を、グローバルに展開していく方針です。

BRIO技術の特徴 嫌気性発酵における微生物制御

Vertus Energyが提供する「BRIO」は、既存のメタン発酵槽(嫌気性消化プラント)に後付けできるモジュール型のハードウェアです。

最大の特徴は、新しい微生物を追加するのではなく、今いる微生物を電気的にコントロールするという独自のアプローチにあります。

Vertus Energy:Vertus Energy secures €8.75m seed funding to drive delivery of European renewable energy agenda

BRIOは、嫌気性微生物群に電気的刺激を与える「生体電気化学(bioelectrochemistry)」を応用し、微生物群全体を制御しています。

従来メタン発酵技術とBRIOの比較

Vertus Energyの発表によると、BRIOを導入することで、従来のメタン発酵と比べて以下のような改善が見込まれます。

  • 同一原料あたりのエネルギー生成量:最大60%増
  • バイオメタンの生成速度:最大3倍
  • 導入方式:既設プラントへの後付け(レトロフィット)が可能
  • 原料対応:既存の微生物群を制御するため多様な原料に対応

メタン生成菌の特性と科学的知見

近年の欧州の研究(Micro4Biogasプロジェクトなど)によると、メタン生成古細菌と共生してメタン生成を促進する微生物(Darwinibacteriales目など)の存在が明らかになってきています。

Phys.Org:A whole new order of bacteria could hold the key to improving biogas production

微生物群の特性に注目して発酵を最適化するアプローチは、世界的な研究トレンドであり、BRIOもそのトレンドに沿う形で微生物を管理し、実際のビジネス現場に応用しています。

メタン発酵の基礎知識については、以下の記事をご参照ください。

参考記事:メタン発酵の仕組みと微生物の役割 バイオガス生成技術

千代田化工の脱炭素戦略とベンチャー提携の背景

今回の提携は、両社の約3年間にわたる技術検証を経て実現したもので、千代田化工が得意とするパートナーの優れた技術と、自社のエンジニアリング力を掛け合わせるビジネスモデルを採用しています。

Vertus Energyの共同創業者Benjamin Howard氏は「3年間の共同作業を土台に、両社の関係をさらに強化していく」と述べています。

千代田化工建設は、水素の貯蔵・輸送技術(SPERA水素)や、燃料アンモニア、CO2回収・利用(CCS/CCU)、合成燃料(e-fuel)など、多面的な脱炭素ソリューションを展開しています。

世界のLNGプラント建設で圧倒的な実績を持つ同社は、既存の化石燃料からグリーンエネルギーへの転換を急いでおり、バイオガス・バイオメタンもそのうちの一つに位置づけています。

欧州の2030年目標とバイオメタン投資の加速

欧州連合(EU)は2030年までに、年間350億立方メートル(35 bcm)のバイオメタンを生産するという高い目標を掲げています。

しかし、一例としてオーストリアでは、固定価格買取制度(FIT)のピークを過ぎた2017年以降、バイオガス生産量が減少傾向にあります。

欧州では、既存プラントの収益性改善とインフラの活用が課題となっており、後付けで生産効率を高める「レトロフィット型」技術が評価されています。

技術の実証から商用化へ 日本市場への展開

BRIOは欧州(イタリアなど)で試験運用が始まっていますが、日本で本格普及させるには、水分や窒素量の比率が異なる畜産廃棄物や下水汚泥での性能検証が必要です。

また、国内バイオガス設備の認可や、補助金制度との適合も重要なポイントとなります。

千代田化工は、この協業で得られるバイオガスの知見を活用し、将来的に日本の牧場や下水処理場、食品工場などへVertus Energyの技術を普及させていく方針です。

想定される日本市場への展開

  • 畜産バイオガス:北海道などの酪農地帯では家畜ふん尿の活用が進んでいますが、収益性の向上が共通の課題です。BRIOのような後付け技術によって、巨額の追加投資を抑えつつ、売電や熱利用の効率を最大化することが可能です。
  • 下水処理場:下水処理施設の「消化槽」で発生するガスをより効率的に回収し、エネルギーを自給自足するカーボンニュートラルな処理場への転換を加速させます。
  • 食品工場・産廃由来:食品廃棄物から作られたバイオメタンを、都市ガス導管に注入して再利用するバイオNGや、e-メタンとも非常に相性が良い技術です。

Vertus Energyの概要

  • 設立:2021年
  • 本社:オーストリア ウィーン
  • 事業概要:バイオエネルギー全般の技術研究・開発・事業化活動
  • ウェブサイト:https://www.vertusenergy.com/

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