三菱重工業は2026年6月1日、バイオマス前処理技術「AdBio®」が、一般財団法人日本環境衛生センターの廃棄物処理技術検証事業で、実用化レベルにあると評価されたことを発表しました。
三菱重工:バイオマス高効率回収・資源化システム「AdBio」、資源循環型社会の実現に貢献 日本環境衛生センターより廃棄物処理技術検証結果書を取得
都市ごみや未分別の食品廃棄物には、これまで燃やして処理してきた紙類や生ごみが大量に含まれています。
AdBioは、これらの廃棄物から効率よくバイオマスを取り出して、メタン発酵の原料に変える前処理技術で、従来の破砕選別方式と比べて、バイオガス発生量を約4割増やせるとされます。
AdBioは既存施設への追設も可能で、多様化するメタン発酵の原料ニーズに対応できます。
メタン発酵原料の前処理技術
2050年カーボンニュートラルに向け、メタン発酵によるバイオガス利活用への期待は高まっています。
しかし、日本は欧州や北米と比べて、生ごみや食品廃棄物を受け入れるメタンガス化施設の伸び率は低く、潜在的ポテンシャルを活かしきれないのが現状です。
その最大の壁の一つが原料の質と量の確保で、都市ごみは紙・プラスチック・金属など、様々な物質が混ざる廃棄物であり、バイオマスだけを選んで取り出すのは容易ではありません。
特に紙類などの繊維質(セルロース系)は発酵槽で分解が進みにくく、バイオガスの収率を下げる要因となっていました。
AdBioが評価される背景には、こうした入口の課題を解く前処理技術への期待があります。
AdBioとは バイオマスを発酵原料に変える仕組み

三菱重工パワー環境ソリューションが開発したAdBio®は、Waste to Biomass(廃棄物からバイオマス資源へ)をコンセプトとするバイオマス高効率回収・資源化システムです。
技術の核となるのは、受け入れた廃棄物を飽和蒸気と反応させて微細化・低分子化する水熱処理で、これまで分離が難しかったバイオマスを容易に分別・回収できます。
また、熱処理によって分解性が高まり、再資源化効率が向上します。反応プロセスでCO₂やダイオキシンが発生しない点も特徴です。
三菱重工パワー環境ソリューション:AdBioについて
従来の破砕選別方式との違い
従来の破砕選別方式は、機械的に砕いて選り分ける方式のため、都市ごみに含まれるバイオマスの回収率に限界があり、とりわけ紙類は発酵しにくく、原料から外れがちでした。
AdBioは独自の前処理で紙類を含むバイオマスまで高効率に回収し、発酵槽での分解性そのものを引き上げる点が大きな違いです。
- 回収対象:未分別の食品廃棄物、紙ごみ(セルロース系)、農業残渣など
- 従来は埋立・焼却していた原料を発酵原料へ転換
- 減容化・悪臭抑制により搬送・保管などのハンドリング性も向上
バイオガス約4割増と運転安定化
三菱重工によると、都市ごみを対象とした場合、AdBio導入でバイオマス回収量が増加し、紙類などの分解性が向上することで、バイオガス発生量は従来比で約4割増加すると見込まれています。
原料の質が安定することは、発酵槽の運転安定化にも直結します。バイオガス収率は原料性状や運転条件に大きく左右されるため、前処理によってプラント全体の稼働率と、採算性を底上げすることができます。
日本環境衛生センターの技術検証とは
今回評価を行った日本環境衛生センター(JESC)は、1954年創立の一般財団法人で、廃棄物・環境保全分野の調査研究や技術支援を担う機関です。
参考サイト:一般財団法人日本環境衛生センター
同センターの廃棄物処理技術検証事業は、民間企業が開発した技術の内容や性能を第三者として検証し、信頼性の高い技術情報として公表する制度です。
メーカーの自社データではなく、第三者評価で実用化レベルを確認するため、自治体が施設導入を検討する際は、この検証結果が公的なお墨付きに近い判断材料となります。
既存施設へのAdBio追設 地域のバイオマス事情に対応
AdBioは新設のメタン発酵施設だけでなく、既存施設への追設が可能とされています。すでに稼働中の施設でも、前処理としてAdBioを組み込めば、原料の安定確保と増産につながります。
さらに、農業残渣など多様な原料をメタン発酵に活用できるため、地域ごとに異なるバイオマス事情にも柔軟に対応できます。
三菱重工はAdBioによる前処理技術の高度化を通じて、持続可能な資源循環型社会の実現に貢献したいと述べており、地産地消型エネルギーへの波及効果も期待されます。






