JR東日本グループが再開発を進める TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)では、街の飲食店から出る生ごみを発酵処理し、JWマリオット・ホテル東京の給湯に活用しています。
2025年7月には、地区内の食品廃棄物メタン発酵事業が、港区から再生利用業の指定を受けており、食品廃棄物リサイクルでは東京23区初となります。
この事例は、都市部の再開発に組み込まれた「ビルイン型バイオガス設備」の先駆けとなるもので、今後は他地域の再開発や、スマートシティ案件への活用が期待されます。
JR東日本 NEWS RELEASE:水素・バイオガス・多様な再生可能エネルギーを活用したヒト・街・地球に優しいまちづくりTAKANAWA GATEWAY CITY
東日本エリア初のビルイン型バイオガス設備が稼働
JR東日本が品川車両基地跡で手掛ける高輪ゲートウェイシティは、約10ヘクタールの広大な敷地を再開発したエリアで、2025年3月に街びらきを迎えました。
高輪ゲートウェイシティ:TAKANAWA GATEWAY CITY
高輪ゲートウェイシティは、街全体でCO₂排出量の実質ゼロを目指しており、JR東日本グループが掲げる「ゼロカーボン・チャレンジ2050」を実証するプロジェクトとなっています。
その中核の一つが、複合棟「THE LINKPILLAR 1 SOUTH」内に設置されたビルイン型バイオガス設備です。
これまで国内のメタン発酵プラントは、家畜ふん尿を処理する酪農地域や、郊外の大型処理施設に建設されるのが一般的で、都市部のプラントは小規模利用に留まっていました。
都心のオフィス・商業・ホテル複合ビル内にプラントを組み込み、発生したガスを同じ街区中で熱エネルギーとして使い切るビルイン型モデルは、東日本エリア初の事例となります。
その背景には、食品リサイクル法でメタン化が有効な再生利用手法に位置づけたことや、都心部での事業系食品廃棄物のリサイクル率向上が長年の課題であったことが挙げられます。
バイオガス生成の仕組み 食品廃棄物を給湯エネルギーに
高輪ゲートウェイシティのバイオガス設備は、街の飲食店などから出る食品廃棄物を、回収車で投入ホッパーへ運び込むことから始まります。
続いて、破砕分別機でビニールなどの異物を取り除いて水と混ぜ合わせ、酸素を嫌う微生物の働きを利用する嫌気性バイオマス発酵槽でメタン発酵させる仕組みです。
生成されたバイオガスはガスタンクに貯蔵され、バイオガスボイラーで燃焼させて温水を作り出します。この温水は2025年10月開業の「JWマリオット・ホテル東京」の給湯に利用されています。
食品廃棄物の処理能力と発生ガス量
この施設は、1日あたり最大4.3トンの処理能力を持ち、3基のバイオガス発酵槽により、1日約760m³のバイオガスを生成することができます。
本格稼働フェーズでは、街全体の食品廃棄物が1日約4トンに達すると見込まれ、施設の受け入れ上限に近い効率的な運用が想定されています。
食品廃棄物そのものの量を約7割減らす(減容化)効果があり、残渣も大きく圧縮されるため、清掃工場へ搬出するごみの量も大幅に削減できます。
給湯エネルギーへの貢献
生成されたバイオガスは、都市ガスより熱量はやや低いものの、ボイラー燃料としては十分なレベルで、ホテルが給湯に必要とする全熱エネルギーの約10%をカバーします。
高級ホテルは、客室のシャワーや厨房などで大量の温水を使います。必要な給湯熱の約1割を地産地消のバイオガスに置き換えることは、環境面だけでなく実用的にも大きな意味を持ちます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 処理能力 | 最大4.3t/日 |
| 発酵槽 | 3基 |
| バイオガス生成量 | 約760m³/日 |
| 食品廃棄物減量効果 | 約7割 |
| 給湯熱への貢献 | ホテル給湯熱の約10% |
メタン発酵事業が港区の再生利用業に指定
2025年7月1日に、施設内の食品廃棄物メタン発酵事業が、港区から再生利用業(再生活用業)として正式に指定を受けました。食品廃棄物リサイクルでは東京23区内で初の事例となります。
東京都港区 プレスリリース:TAKANAWA GATEWAY CITY の食品廃棄物リサイクル施設を再生利用業に指定しました
再生利用指定制度は廃棄物処理法の特例で、確実にリサイクルされると認められた一般廃棄物のみを扱う事業者に限り、通常必要となる一般廃棄物処理業の許可を免除する仕組みです。
しかし、自治体による厳格な指定基準の審査があるため、ハードルは決して低くありませんでした。
今回の事例は、事業系食品廃棄物の域内循環を制度的に裏付けるもので、他の地域や開発エリアでも、バイオガス設備による食品リサイクルの枠組みを応用しやすくなります。
水素・蓄熱との統合とエネルギーマネジメント
高輪ゲートウェイシティのバイオガス設備は単独の取り組みではなく、水素利活用や大型蓄熱設備と連携したエネルギーマネジメントの一部として設計されています。
隣接する複合棟 THE LINKPILLAR 2 の地下には、空調のピークカットや災害時の非常用水を兼ねた、国内最大級となる約2万トン規模の蓄熱槽が整備されています。
水素に関しても、現在は外部からの水素カセットで自動走行モビリティを動かしていますが、2028年度以降は再生可能エネルギーを用いて、街の中で水素を作り出すオンサイト製造の方針が示されています。
生成したバイオガスの用途拡大も検討されており、ガスを精製すればコージェネレーションシステムによる熱電供給や、都市ガス導管への注入も可能になります。
欧州では、都市部の有機性廃棄物をバイオメタン化することが、エネルギー安全保障とサーキュラーエコノミーの両面から推進されています。
高輪ゲートウェイシティの事例も同様の資源循環モデルとして、首都圏のような超高密度地区の再開発や、スマートシティ案件に活用されることが期待されます。






