リトアニア初のバイオメタン精製設備 独EnviTecが受注

リトアニア初のバイオメタン精製設備

ドイツのバイオガス大手EnviTec Biogas AGは、リトアニアŠakiai(シャケイ)に拠点を置くUAB Citronėに対し、リトアニア初となるEnviThanバイオガス精製設備を供給すると発表しました。

EnviTec NEWS:EnviTec Biogas builds its first EnviThan gas upgrading plant in Lithuania

能力は675Nm³/h(バイオメタン換算6.29MW相当)で、原料の牛ふん尿・スラリーからバイオメタンを製造し、地元の高圧ガス導管へ注入されます。

このプロジェクトはバルト地域の脱化石燃料化と、酪農廃棄物の資源循環を象徴する案件となり、リトアニア政府の補助金スキームに基づき、2026年4月30日が納入期限となっています。

リトアニア初のEnviThan供給事業

UAB Citronėは、リトアニア南西部Šakiai(シャケイ)地区で酪農および乳製品加工事業を営む企業で、自社農場で発生する牛ふん尿・スラリーを原料としたバイオメタン生産プラントを新設します。

UAB Citronė:ĮGYVENDINAMAS PROJEKTAS „Biometano dujų gamyklos statyba“

EnviTecはドイツ・Saerbeck工場で精製設備を製造し、工場立会試験を経て現地に納入する計画です。

精製後のバイオメタンは、リトアニア国内の高圧ガス導管に注入され、輸出向けや輸送用燃料市場での活用が想定されています。

リトアニアは2023年に欧州バイオガス協会(EBA)の集計対象に加わったばかりの新興バイオメタン生産国で、この案件はリトアニアの生産基盤を引き上げる重要な投資になります。

リトアニアEnviThan 事業概要

リトアニアEnviThan事業の主な仕様は以下の通りです。

項目内容
顧客UAB Citronė(酪農・乳製品加工)
所在地リトアニア・Šakiai地区
設備能力675 Nm³/h(バイオメタン)/6.29 MW相当
原料牛ふん尿・スラリー
精製技術EnviThan(膜分離法)
納入期限2026年4月30日(補助金要件)
資金スキームNextGenerationEU連動の国家補助
用途高圧ガス導管注入・輸出・輸送用燃料

EnviTecの事業概要

EnviThanを供給する独EnviTecは、ドイツ最大級のバイオガス専門企業で、世界18カ国で700件以上のプラントを建設した実績を持ちます。

参考記事:EnviTec Biogas(エンヴィテック)の事業概要

EnviThan膜分離技術の特徴とPSA・水洗浄法との違い

EnviThanは、EnviTecとEvonik Industriesが共同開発した膜分離型バイオガス精製システムで、2012年の市場投入以来、世界8カ国で100基を超える稼働実績を持ちます。

精製原理はガス分子の透過速度差を利用したもので、メタン分子より小さい二酸化炭素分子が、膜を高速で透過する特性を活かして両者を分離します。

SEPURAN® Green中空糸膜による高純度精製

EnviThanは、Evonikの「SEPURAN® Green」中空糸膜モジュールを採用しています。

原料バイオガスのメタン濃度(おおむね50vol%)を、最終的に97vol%以上の高純度バイオメタンへと引き上げ、未利用メタン排出量(メタンスリップ)は1%未満という高効率を実現しています。

水洗浄法(Water Scrubbing)や、PSA法(圧力スイング吸着法)と比較して、EnviThanは化学薬品や用水が不要なため、酪農地帯のような水資源管理が課題となる地域で優位性を発揮します。

モジュラー設計によるコスト・運用優位性

EnviThanは、圧縮機・ガス調温・凝縮・濾過・ガス分離の各機器を、コンテナ内に集約したモジュラー構造を採用しています。

工場での事前テストを経て出荷されるため、現地工期が短縮され、将来的な能力拡張も後付け可能です。

膜の改良によって、2014年当時は4インチモジュール270本必要だった処理能力が、現在は6インチモジュール60本で実現できるまで小型化が進んでいます。

リトアニア・バルト諸国のバイオメタン市場と政策

リトアニアを含むバルト3国(リトアニア・ラトビア・エストニア)は、2022年以降ロシアからの天然ガス輸入を完全に停止しており、エネルギー自給と脱炭素化の同時達成が国家戦略の柱となっています。

リトアニア国家エネルギー・気候行動計画(NECP 2021-2030)では、2030年までに発電に占めるバイオガス比率2%、輸送部門におけるバイオメタンを含む再エネ比率15%以上を目標としています。

Ministry of Energy of the Republic of Lithuania:NATIONAL ENERGY AND CLIMATE ACTION PLAN OF THE REPUBLIC OF LITHUANIA FOR 2021-2030

EBAの「Statistical Report 2025」によると、欧州全体のバイオメタン生産は2024年時点で年間52億Nm³に達し、生産国は25カ国に拡大しています。

欧州バイオガス協会(EBA):EBA Statistical Report 2025

NextGenerationEUと国家補助による事業推進

リトアニアは、NextGenerationEUに紐づく復興・レジリエンスファシリティ(RRF)と2021-2027年EU構造基金を組み合わせ、バイオメタン事業者に対して建設費補助を提供しています。

本Citronė案件と同じŠakiai地区では、Akolaグループ系のLukšių ŽŪBも415Nm³/h規模のバイオメタン施設を計画中で、Šakiai地区はリトアニア国内のバイオメタン産業拠点になりつつあります。

また、Green Geniusは35百万ユーロを投じて、バルト地域最大級のバイオメタン転換事業を進めており、2026年に向けて市場は急速に拡大しています。

Green Genius News:Green Genius is to upgrade the largest Baltic biogas portfolio to biomethane

EnviTecのバルト地域戦略と輸送用燃料政策

バルト地域戦略と輸送用燃料政策

EnviTecは2009〜2013年にラトビアで7基、2019年以降エストニアで4基のバイオガスプラントを納入しており、バルト市場では15年以上の実績があります。

EnviTecは今回のリトアニア初進出により、バルト3国すべてでEnviThan供給実績を確保することになります。

ラトビアのリガに拠点を置くEnviTec Biogas Service Baltic SIAが現地サービスを担い、生物学的・技術的サポートを提供する体制が整っています。

リトアニア運輸省は2024年にドイツ・日本との間でe-fuel共同宣言を締結しており、バイオメタンによる輸送燃料の脱炭素化は今後大きく進展する見込みです。

Citronē案件のバイオメタンは、輸出と輸送用燃料市場の両面で活用され、欧州バイオメタン認証スキーム(GOまたはPoS)を介した越境取引にも参入しています。


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