東邦ガス株式会社は、2026年3月6日に「東邦ガスグループ 2050年 カーボンニュートラルへの挑戦 ~これまでの取組みと持続可能な未来に向けたアクションプラン~」を発表しました。
東邦ガス プレスリリース:「東邦ガスグループ 2050年 カーボンニュートラルへの挑戦 ~これまでの取組みと持続可能な未来に向けたアクションプラン~」の公表について
2040年度に販売するガスのうち、e-メタン(合成メタン)やバイオガスなど、脱炭素ガスの比率を40%とする目標を新たに掲げており、電力についても再生可能エネルギー活用を進め、脱炭素比率50%を目指します。
2021年に策定された従来計画では、2030年度のガス脱炭素化比率5%以上が目標でしたが、今回は2040年度までの新たな中間目標を追加し、ロードマップを具体化しています。
東邦ガス CNロードマップ更新の背景と業界動向

画像:東邦ガスプレスリリースより
東邦ガスがCN(カーボンニュートラル)ロードマップを更新した背景には、日本のエネルギー政策の見直しに加え、エネルギーを取り巻く環境変化があります。
第7次エネルギー基本計画では、水素やアンモニア、合成メタン(e-メタン)がカーボンニュートラル化の鍵となる次世代エネルギーとして、導入拡大の方向性が示されています。
こうした政策動向を受け、日本ガス協会は2025年6月に「ガスビジョン2050」および「アクションプラン2030」を策定し、2030年度にe-メタンやバイオガスの1%供給を目指す業界目標を掲げています。
参考記事:日本ガス協会「ガスビジョン2050」公表 バイオガスとe-メタンの役割
東邦ガスの今回の更新は、この業界目標を踏まえつつ、さらにその先の2040年度・2050年度に向けた具体的なマイルストーンを示した点に意義があります。
東邦ガスの基本的な考え方は「S+3E」をベースとしています。
- Safety = 安全性の確保
- Energy Security = エネルギーの安定供給
- Economic Efficiency = 経済効率性
- Environment = 環境への適合
現在は移行期として、天然ガスの普及拡大と低炭素ソリューションの提供に注力しつつ、中長期では複数の脱炭素手段を組み合わせてカーボンニュートラルを実現するという段階的アプローチを採用しています。
2040年度ガスCN化率40%に向けたeメタン・バイオガス戦略
今回のロードマップで注目されるのは、2040年度の脱炭素ガス比率40%という具体的な数値目標です。この達成を支える柱がe-メタンとバイオガスの本格導入です。
e-メタンは、再生可能エネルギー由来のグリーン水素とCO₂を原料として製造される合成メタンであり、都市ガスの主成分であるメタンと同じ組成を持ちます。
e-メタンのメリットは、既存のLNG輸送船、都市ガス導管、消費機器といったインフラをそのまま活用できる点で、水素やアンモニアなどと比べて、追加の社会的インフラ投資を大幅に抑えることが可能です。
東邦ガスはIHIと共同で、2024年3月からバイオガス由来のCO₂と冷熱発電による電力を活用したe-メタン製造実証を開始しており、国内初のe-メタン都市ガス利用を実現しました。
参考記事:IHIの小型メタネーション装置 合成メタンの製造実証へ
実証設備を知多LNG共同基地に設置し、原料のCO₂は愛知県知多市の南部浄化センターから供給しています。この知多市での実証は、2026愛知環境賞「金賞」を受賞するなど高い評価を得ています。
さらなるe-メタン製造に向けて、下水由来以外のCO₂確保にも動いており、名古屋大学と共同で大気中からCO₂を回収する技術開発を進めています。
バイオガスについては、生ごみや下水汚泥などの有機物をメタン発酵させ、得られるガスを都市ガス原料として活用する取り組みを拡大する方針です。
また、北米や東南アジアでバイオガス・e-メタン調達先の調査検討も進めており、2040年度ガスCN化率40%に向けて、国内外の多様なソースから調達する体制を構築します。
米国Live Oakプロジェクトと海外サプライチェーン構築の進捗
東邦ガスは2025年12月、大阪ガス・伊藤忠商事とともに、米国ネブラスカ州のe-メタン製造事業「Live Oakプロジェクト」への参画を発表しました。
このプロジェクトは、フランスのTotalEnergiesとベルギーのTES(Tree Energy Solutions)が主導する世界最大級のe-メタン製造事業です。
参考記事:大阪ガス・東邦ガス・伊藤忠が米国eメタン事業に参入
ネブラスカ州は全米屈指のコーンベルト地帯であり、多数のバイオエタノール工場が集積しているため、発酵過程で生じる高純度のバイオマス由来CO₂を大量かつ安定的に確保できます。
再生可能エネルギーのコストも他地域より低く、さらに米国インフレ抑制法(IRA)の税額控除適用も見込めることから、経済性の面でも優位性があります。
年間約7.5万トンのe-メタン製造を計画し、2027年度の最終投資意思決定(FID)を経て2030年度の製造開始と日本への輸出を目指しています。
製造されたe-メタンは既存のガスパイプラインとLNG基地を経由して日本に輸送する計画であり、新規のインフラ投資を最小限に抑えた効率的なサプライチェーンが特徴です。
なお、東邦ガスは2025年9月に米国子会社Toho Gas USA Corporationを設立し、北米でのカーボンニュートラル関連事業の推進体制を整えています。
電力のゼロエミッション化とCCUS 2050年CN実現への複合戦略

画像:東邦ガスプレスリリースより
東邦ガスのカーボンニュートラル戦略は、e-メタンとバイオガスだけにとどまりません。電力分野では、太陽光・風力・バイオマスなど幅広い再エネ電源の確保を進めています。
火力発電最大手JERAとの共同事業では、2029年度に稼働予定の知多火力発電所7・8号機(愛知県知多市)を起点に、2030年代前半に水素混焼を導入し、将来的にはCO₂排出ゼロを目指す計画です。
また、CO₂分離回収技術「Cryo-Capture®」の社会実装に向けた開発推進や、J-クレジットの創出、カーボンクレジットの活用など、CCUSとクレジットを組み合わせた複合的なアプローチを採用しています。
2024年6月には知多緑浜工場で、水素製造プラント(1.7トン/日)の運転を開始し、地域の水素サプライチェーン構築にも着手しています。
ものづくりの集積地である東海エリアでは、電化が困難な高温熱需要が多く存在します。こうした産業分野のCO₂排出削減は、e-メタンやバイオガスといったガスエネルギーの脱炭素化が不可欠です。
東邦ガスのカーボンニュートラルロードマップは、地域産業の脱炭素化に向けた方向性を示しています。






