東レがオールカーボン製CO₂分離膜でCO₂と水分の同時除去に成功

東レがオールカーボン膜でCO₂と水分の同時除去に成功

画像:東レニュースルームより

東レが開発したオールカーボン製CO₂分離膜で、CO₂と水分の同時除去に成功したと発表しました。

東レは大阪府内の下水処理場に設置されたバイオガス製造設備で実証実験を行い、既存技術(高分子膜やPSA法)と比較して、水分除去コストを約70%削減できることを確認しました。

この技術は、従来のCO₂吸収法よりもエネルギー消費量を軽減できるという特徴があり、CCUS(CO₂回収・利用)や、e-メタン(合成メタン)製造への応用も期待されています。

東レニュースルーム:CO₂とメタン分離用のオールカーボン膜で、CO₂と水分の同時除去に成功

東レ オールカーボンCO₂分離膜の技術概要と特徴

東レは炭素繊維とろ過膜の分野で世界トップレベルのシェアと技術を持ち、海水淡水化に用いられるRO膜(逆浸透膜)や、水処理用の精密ろ過膜などを販売しています。

東レは長年培ってきた炭素繊維技術と水処理膜技術を融合し、過酷な湿潤環境下でもCO₂と水分を選択的に透過する革新CO₂分離膜の開発に成功しました。

東レが公開している技術資料によると、この膜は中空糸状の多孔質炭素繊維支持体の上に、髪の毛より薄い数μmのガス分離機能層を形成した二層構造を持っています。

東レ オールカーボン膜の技術概要と特徴

この機能層にあるナノレベルの細孔が、メタン(CH₄)よりも分子径の小さいCO₂とH₂O(水蒸気)を選択的に透過させます。

また、炭素繊維支持体の細径化によって高密度の充填が可能となり、膜モジュールの軽量化・コンパクト化を実現できます。

NEDO資料(PDF)高温・不純物耐久性CO₂分離膜システムの実用化開発

高い耐熱性・化学耐久性

オールカーボン膜はすべて炭素で構成されており、酸・アルカリや有機溶媒への耐久性に優れています。これによって、CO₂分離性能低下の原因となる不純物の影響を最小限に抑えることができます。

また、熱に対する耐性も高く、一般的な高分子膜の耐熱性は約60℃ですが、180℃の高温環境でも使用可能とされています。

水分共存下でもCO₂分離性能を維持

従来の膜分離方式は水分による劣化が課題でした。一般的にCO₂の分離性能を上げようとすると、水分の影響を受けやすくなります。

オールカーボン膜は炭素素材特有の表面特性と細孔構造によってその弱点を克服し、水分共存下でも高いCO₂分離選択性(メタン透過の抑制)を維持することに成功しました。

バイオメタン精製の課題 CO₂と水分除去

バイオガスを精製して産業用途へ供給したり、ガス導管に注入する際は、CO₂除去による高メタン化や、水分の確実な除去が不可欠となります。

バイオガスに含まれる水分は、配管や圧縮機の腐食、凍結、膜性能の劣化を引き起こすため、バイオメタン精製工程では最も管理コストがかかる要素の一つとされてきました。

従来のバイオガス精製では、PSA(圧力変動吸着)やアミン吸収、ポリマー膜などによるCO₂分離工程の後に、冷却チラーや吸着塔を用いた脱水工程を設ける構成が一般的です。

これらの方式は十分な実績があるものの、設備点数が多いため、イニシャルコスト(CAPEX)とランニングコスト(OPEX)を押し上げる要因となっていました。

東レのオールカーボン膜を用いた今回の実証実験では、水分除去コストを約70%削減できると見込まれ、バイオメタン事業のコスト改善に大きな役割を果たします。

バイオメタン・CCUSへの影響

東レのオールカーボン膜は不純物に強く、その耐熱、耐薬品性を活かし、CCUS(CO₂回収・利用・貯留)などのCO2分離・回収用途へ展開する計画です。

バイオガス由来のCO₂は、合成燃料や化学品原料としての利用や、貯留と組み合わせたBiCRSやBECCSにも直結しており、CO₂利用・回収の価値向上にもつながります。

この技術はバイオメタン製造にとどまらず、e-メタン(合成メタン)製造にも応用できます。

今後、e-メタンや合成メタンの生産が進む中で、バイオメタン精製のコスト改善が見込めるこの技術は、大きな脚光を浴びると予想されます。

東レは現在、顧客と連携して1年間の長期実証を進めており、季節変動によるガス組成の変化や、長期運用における膜の耐久データを収集しています。

用語解説CCS / CCUS とは

用語解説BECCS / BiCRS とは


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