北海道鹿追町とエア・ウォーター、古河電気工業の3者が、鹿追町で3基目となるバイオガスプラント整備へ向けた基本合意書を締結しました。
北海道十勝地方の北西部に位置する鹿追町は、家畜ふん尿や農業系残渣といったバイオマス資源が豊富で、以前からバイオガス活用の先進地として知られています。
鹿追町では現在稼働中の2基に加え、3基目のバイオガスプラント整備を通じて、2050年カーボンニュートラルの実現や、地産地消型のエネルギーの安定供給に貢献することを目指しています。
エア・ウォーター ニュースリリース:エア・ウォーター、北海道鹿追町、古河電工 バイオガスプラント整備に向けた基本合意書を締結
北海道鹿追町 バイオガス事業の背景と推移
北海道鹿追町では、2007年に1基目のバイオガスプラントとなる鹿追町環境保全センター(中鹿追施設)の稼働を開始し、2016年に2基目のバイオガスプラント(瓜幕施設)を稼働させています。
これらのプラントは、地域課題である家畜糞尿の臭気対策と水質保全を主目的とし、さらに生成されたバイオガスによる発電や余熱利用、消化液の肥料還元など、高度な地域資源循環を実現しています。
北海道鹿追町:鹿追町環境保全センターバイオガスプラント
また、発電プロセスで発生する余剰熱の有効活用策として、70度のお湯を100t貯蔵できる「蓄熱槽」を設置し、チョウザメの養殖やさつまいも貯蔵設備、マンゴー栽培ハウスに配分しています。
バイオガステック参考記事:北海道鹿追町のバイオガスプラントで「鹿追キャビア」商品化
しかし、既存の2基では増加する糞尿処理ニーズや、より高付加価値なエネルギー転換への要望を満たすことが難しく、今回の3基目プラント整備構想が持ち上がりました。
グリーンLPガス合成の技術的意義
今回のプロジェクトで技術的な要となるのが、古河電工と北海道大学・静岡大学の研究による「バイオガス由来のプロパン・ブタン合成技術」です。
バイオガスはメタン(CH₄)と二酸化炭素(CO₂)が主成分ですが、ラムネ触媒を用いた革新的プロセスによって炭素鎖を結合させると、プロパン(C₃H₈)やブタン(C₄H₁₀)を合成することができます。
古河電工 ニュースリリース:NEDOグリーンイノベーション基金事業「グリーンLPガス合成技術開発」に採択
この技術によって、既存のLPガスインフラをそのまま活用できる「カーボンニュートラル燃料」を製造できます。
エネルギー源を電気や水素へ転換するためには大規模な設備投資が必要ですが、グリーンLPガスは既存の設備をそのまま使いながらカーボンニュートラルを実現できます。
古河電工は2030年を目処に、グリーンLPガスを年間1,000トン製造する技術実証を完了させる予定です。
古河電工とエア・ウォーター 鹿追町での取り組み
古河電工は2022年に鹿追町と包括連携協定を締結し、NEDOグリーンイノベーション基金事業「グリーンLPガス合成技術開発」の実証実験用プラント建設を進めています。
2023年に鹿追町で、LPガス転換実証プラントの起工式が行われました。
日本LPガス協会は、2030年までにグリーンLPガスの導入を加速させる方針で、鹿追町での取り組みはその先行事例としての役割を担っています。
エア・ウォーターは鹿追町で「エア・ウォーター水素ステーションしかおい」を運営しており、カーボンニュートラル水素を製造して産業用途や水素自動車向けに販売しています。
また、帯広ガスと連携し、国内初となるバイオメタンの都市ガス導管注入を開始します。
バイオガステック参考記事:国内初のバイオメタン都市ガス利用へ 北海道鹿追町・エア・ウォーター・帯広ガスが連携
鹿追町と古河電工、エア・ウォーターはそれぞれの知見を活かし、共同でカーボンニュートラル燃料の製造や、循環型エネルギー経済圏の創出を進める方針です。
北海道鹿追町 参考資料(PDF):バイオマス利用と施設老朽化対策 鹿追町環境保全センターの取組み






