北海道の帯広近郊にある鹿追町が、バイオガスプラントの余剰熱で育てたチョウザメの「キャビア」を商品化し、7月から本格的に販売開始することを発表しました。
十勝毎日新聞:待望のキャビア11年がかりで商品化 鹿追バイオガスプラントで養殖
バイオガスプラントの余剰熱でチョウザメ養殖
北海道鹿追町では、環境保全と資源循環型農業の推進を目的に、町内の家畜ふん尿や生ごみなどを発酵させてメタンガスを生成し、発電に利用するバイオガスプラントを運営しています。
この発電プロセスで発生する余剰熱の有効活用策として、70度のお湯を100t貯蔵できる「蓄熱槽」を設置し、チョウザメの養殖やさつまいも貯蔵設備、マンゴー栽培ハウスに配分しています。
北海道鹿追町:バイオガスプラントからの余剰熱を活用した事業について
チョウザメの成長に適した水温は15℃から20℃とされ、北海道でこの水温を維持するには多大なエネルギーコストが発生します。鹿追町ではバイオガスプラントの排熱を養殖場の加温に活用し、年間を通じてチョウザメ養殖を可能にしました。
北海道大学の協力を得て、2017年からはチョウザメの人工ふ化にも成功し、安定的な供給と出荷体制を整えてきました。
現在はプラント施設で、卵質の良さと成熟の早さを併せ持つ「ベステル種」約5000匹を養殖しています。オスは食肉用、メスは食肉と高級食材キャビアの生産に利用します。
鹿追町の取り組みは、エネルギーの地産地消を実現するだけでなく、新たな特産品を生み出すという一石二鳥のモデルケースです。
11年かけて「鹿追キャビア」商品化
来月から販売を開始するキャビアは「鹿追キャビア」と命名され、バイオガスの余剰熱活用というストーリー性を活かした鹿追町ならではの特産品として期待されています。
商品化にあたっては、事業担当者が塩分濃度や熟成期間など、最適な加工法を研究し、「日本キャビアソムリエ協会」の出口彰代表理事も養殖現場を訪れ、鹿追キャビアを評価しています。
当初は町内のAコープ鹿追店をはじめ、町内のふるさと納税返礼品や、地域の宿泊施設、レストランへ向けた販売を予定しています。今後は生産体制の拡大を図り、全国の市場へと販路を広げていく計画です。
キャビアは世界三大珍味として有名ですが、チョウザメの身も高級食材として珍重され、タイやヒラメのような上品な味わいから西洋では「ロイヤルフィッシュ」と呼ばれています。鹿追町の飲食店でも、特産品としてチョウザメ料理や加工品の研究を進めています。
食用の他に、うろこを活用したストラップや、アクセサリーといった加工品も試作しています。
「鹿追キャビア」は、酪農と環境政策が融合した鹿追町ならではの特産品です。鹿追町の喜井知己町長もキャビアPRのため、新聞社訪問など様々な取り組みを行っています。
北海道鹿追町 脱炭素の取り組み
鹿追町では、環境保全センターで稼働中のバイオガスプラントを活用しながら、未整備地区のバイオガスプラントについても建設に向けて調査を進めるとともに、水素の活用や、LPG・ギ酸生成の実証実験に協力しています。
また、鹿追町内の複数の施設で脱炭素化を図る「ZEC(ゼロ・エネルギー・コミュニティ)」に取り組み、町で自前の電線「自営線」を整備し、太陽光発電から役場周辺の9つの公共施設に電気を供給しています。
鹿追町は第一回の脱炭素先行地域にも選定されており、鹿追型ゼロカーボンとして、町内に設立した地域エネルギー会社「鹿追未来エネルギー株式会社」と連携し、町内全体の脱炭素化を推進しています。
北海道鹿追町:鹿追町環境保全センターバイオガスプラント