JAおとふけバイオガスプラント 畜産ふん尿と野菜残渣で地域内の資源循環

JAおとふけバイオガスプラント 畜産ふん尿と野菜残渣で地域内の資源循環

北海道十勝地方に位置する音更町(おとふけちょう)では、音更町農業協同組合(JAおとふけ)が2016年からバイオガスプラントを稼働させています。

プラントでは家畜ふん尿と野菜残渣を中温式嫌気性メタン発酵で処理し、FIT(固定価格買取制度)を活用した売電と、消化液の液肥利用を両立させています。

さらに、地域の小学校と連携した「おとふけ学校給食フードリサイクルプロジェクト」では、給食残渣を液肥化して学校農園に還元するという食育・環境教育の循環モデルも構築しています。

JAおとふけ バイオガスプラント導入の背景と目的

音更町の人口は約4.2万人(2026年1月末時点)で、小麦・大豆の収穫量で日本一を誇る畑作地帯である一方、乳牛を中心とした畜産業も盛んな地域です。

音更町では畜産経営の規模拡大が進む中で、家畜ふん尿の処理と悪臭対策は長年の課題となっており、JAおとふけが運営する野菜選別施設からは、年間を通じて規格外品や端材といった野菜残渣が発生していました。

こうした背景から、JAおとふけは2015年度にバイオガスプラントの建設に着手しました。

設計・施工は、北海道内で多数の農業系バイオガスプラント実績を持つ株式会社土谷特殊農機具製作所が担当し、建設費は約5億2,515万円で、2016年1月に稼働を開始、同年6月にFIT売電を開始した。

なお、音更町を含む北海道十勝地域は、2013年度にバイオマス産業都市に選定されており、地域全体でバイオマス資源の活用を推進する土壌が整っていたことも導入を後押ししています。

施設概要と中温式メタン発酵の技術的特徴

JAおとふけバイオガスプラントは、中温域(約37℃前後)メタン発酵方式を採用しており、発酵槽内では数週間~1か月程度の滞留期間をかけて微生物が有機物を分解し、バイオガスと消化液を生成します。

バイオガスは発酵槽上部のガスホルダーに貯留され、脱硫装置で硫化水素を除去した後にCHP(ガスエンジン発電機)へ供給されます。

発電後の消化液は固液分離棟で固形分と液体に分けられ、液体部分は液肥として農地に散布されます。

消化液は堆肥と比較して悪臭が少なく、窒素・リン・カリウムなどの肥料成分を速効性の高い形で含有するため、化学肥料の使用量削減と土壌の性質を改善できます。

注目すべきは、畜産系バイオマスと農業系バイオマス(野菜残渣)を混合処理している点で、一般的に家畜ふん尿のみの処理では窒素過多になりがちですが、野菜残渣の炭素分がこれを緩衝する効果があります。

野菜残渣は粉砕した後に受入槽へ送られ、ふん尿と合流させて発酵槽に投入しています。混合処理によって原料のC/N比(炭素・窒素比)が調整され、メタン生成効率の安定化が期待できます。

JAおとふけバイオガスプラントの施設概要

項目仕様・実績
発酵方式中温式嫌気性メタン発酵(湿式)
処理能力42 t/日(家畜ふん尿 32 t + 野菜残渣 10 t)
年間原料受入量(計画)家畜ふん尿 約11,153 t、野菜残渣 約1,840 t
年間原料受入量(2023年度実績)家畜ふん尿 11,078 t、野菜残渣 1,943 t
発電設備CHP(コージェネレーション)75 kW × 2基 = 150 kW
年間発電量(2023年度実績)771,604 kWh
FIT売電単価39円/kWh
年間売電収入(計画値)約2,934万円
消化液貯留槽4,300 m³ × 2槽
消化液生産量(2023年度実績)22,779 t
建設費約5億2,515万円
稼働開始2016年1月

学校給食フードリサイクルプロジェクトの成果

JAおとふけバイオガスプラントの特筆すべき取り組みとして、音更町教育委員会・音更町役場と連携して2018年度から開始した「おとふけ学校給食フードリサイクルプロジェクト」です。

音更町教育委員会:おとふけ学校給食フードリサイクルプロジェクト

プロジェクトの仕組みですが、モデル校(音更小学校)の給食調理残渣・食べ残しをバイオガスプラントに投入し、メタン発酵で生成された消化液(液肥)を学校農園の肥料として活用します。

農園で栽培した農産物は、再び給食に提供するという「給食→液肥→栽培→給食」の完全循環ループとなっています。初年度の投入量は約5,226 kg(4月〜12月)に達しました。

その効果ですが、食育・環境教育の授業を実施した3年生では、給食残食量が1日あたり16.0%減少するという成果が確認されました。

保護者アンケートでは約9割がプロジェクトの継続を希望し、家庭での食品ロス削減意識にも波及効果が認められました。

音更町は、最終的に町内全18小中学校への取り組み拡大を目指しており、2019年度以降は作成したDVDやマグネットシート・パネル等の教材を活用して、全校での環境授業を実施しています。

バイオガスプラントを食育・環境教育のインフラとして活用する取り組みは、有機性廃棄物処理施設の社会的価値を高めるモデルケースとなっており、環境省の3R促進モデル事業としても採択されています。

ゼロカーボンシティ音更と今後の展望

音更町は2022年3月に「ゼロカーボンシティ」を宣言し、2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロを目指しており、2023年度の実績では、基準年度(2013年度)比で温室効果ガス総排出量を約24.1%削減しています。

音更町:音更町ゼロカーボンシティ宣言

JAおとふけバイオガスプラントのFIT売電による再生可能エネルギー創出と、消化液利用による化学肥料削減の双方が、町全体の排出削減に貢献しています。

今後の注目点としては、FIT認定期間終了後の事業継続スキームがあります。

現在の39円/kWhというFIT単価は、導入当時の農業系バイオガスに適用される高い買取価格ですが、制度移行後にはFIPや自家消費モデル、あるいはバイオメタン精製への転換といった選択肢も考えられます。

北海道十勝地域では、隣接する鹿追町でエア・ウォーターと帯広ガスが連携したバイオメタンの都市ガス利用プロジェクトが進行しており、バイオメタン化は将来的な発展シナリオのひとつとなり得ます。

バイオガステック参考記事:国内初のバイオメタン都市ガス利用へ 北海道鹿追町・エア・ウォーター・帯広ガスが連携

また、バイオガス発電は音更町が推進する脱炭素補助金事業(太陽光発電・蓄電池・EV・高効率給湯機などへの支援)や、省エネポイント事業との相乗効果が見込まれ、地域エネルギーマネジメントにも貢献します。

JAおとふけのバイオガスプラントは、単なる廃棄物処理施設にとどまらず、地域の脱炭素化・食育・循環型農業を統合的に推進するプラットフォームとなっており、多くの見学者や視察者が訪れています。


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