大阪ガス・東邦ガス・伊藤忠が、米国からeメタンを輸入するための調査を開始すると発表しました。
フランスのTotal EnergiesとベルギーのTESが主導するLive Oakプロジェクトに日本の3社が参加し、全米屈指のコーンベルト地帯である米国ネブラスカ州でe-メタンを製造する計画です。
日本政府は「2050年カーボンニュートラル」実現の目標を掲げており、大阪ガスと東邦ガスは米国からのe-メタン(合成メタン)調達を通じて、その取り組みを加速させる方針です。
米国Live Oakプロジェクトの概要
2025年12月2日に、大阪ガス、東邦ガス、伊藤忠商事の3社が、米国ネブラスカ州のe-メタン製造事業「Live Oakプロジェクト」の基本設計(FEED)実施に向けた共同開発契約を締結したと発表しました。
大阪ガス プレスリリース:米国ネブラスカ州におけるe-メタン製造事業(Live Oakプロジェクト)の基本設計(FEED)実施に向けた共同開発契約の締結について
このプロジェクトは、再生可能エネルギー資源が豊富な米国でe-メタン(合成メタン)を製造して、日本へ輸出する大規模なサプライチェーン構築事業です。
この計画では、グリーン水素とバイオマス由来CO₂を原料として年間約7.5万トンのe-メタンを生産し、2030年までに日本への輸出を目指すことが掲げられています。
この計画は、フランスのエネルギー大手Total Energies(トタルエナジーズ)と、ベルギーのTES(Tree Energy Solutions)が主導して進めてきましたが、今回新たに日本の3社が参画します。
Total Energies 会社概要:TotalEnergies(トタルエナジーズ)
TES 会社概要:Tree Energy Solutions(TES, ツリー・エナジー・ソリューションズ)
ネブラスカ州立地のメリット バイオ由来CO₂と米国IRA
Live Oakプロジェクトの拠点となる米国ネブラスカ州は、e-メタン製造に適した立地条件を備えています。
TotalEnergiesとTESは、ネブラスカ州に集積するバイオエタノール産業からのバイオマス由来CO₂と、米国インフレ抑制法(IRA)の税額控除適用を見込めるグリーン水素を組み合わせてe-メタンを製造します。
e-メタンは、米国内の既設ガスパイプラインと既設LNG基地を経由して日本に輸出される予定で、インフラ投資を抑えたサプライチェーン構築が特徴です。
豊富なバイオマス資源
このプロジェクトは、世界最大級の農業地帯である米国中西部を選定することで、原料の安定確保という課題をクリアしています。
ネブラスカ州は全米屈指のコーンベルト地帯で、多数のバイオエタノール工場が存在しており、発酵過程で高純度のバイオマス由来(Biogenic)CO₂が大量に排出されます。
大気中のCO₂を回収するDAC(Direct Air Capture)と比べて、工場から直接回収するCCU(Carbon Capture and Utilization)は効率が非常に高く、ライフサイクル全体での排出削減効果も明確です。
米国インフレ抑制法(IRA)によるインセンティブ
米国のIRA(インフレ抑制法:Inflation Reduction Act)には、脱炭素燃料や炭素利用への補助金(税額控除)が含まれており、大きな経済的インセンティブがあります。
- Section 45V(クリーン水素生産税額控除):製造される水素のクリーン度に応じて、最大3ドル/kgの税額控除が受けられます。
- Section 45Q(CO₂回収・貯留税額控除):回収したCO₂を利用(CCU)または貯留(CCS)する場合のインフラ整備を支援します。
環境省や経済産業省の試算によると、日本国内で再生可能エネルギーを用いてeメタンを製造する場合、コストは天然ガスの数倍に達すると見込まれています。
しかし、これらの補助金制度によって、米国内でのe-メタン製造コストは日本国内の製造と比べて圧倒的に低く抑えることが可能となり、国際的な価格競争力を確保できる見通しです。
e-メタンはカーボンニュートラル実現の切り札
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、e-メタンが注目される理由は、ドロップイン(代替可能性)の高さにあります。
e-メタンは天然ガスと成分がほぼ同一であり、以下のメリットがあります。
- 都市ガスと同じメタン分子のため、既設のパイプライン・LNG基地・需要家機器をほぼそのまま活用できる
- 再エネ由来の水素と回収CO₂を利用することで、ライフサイクルでの温室効果ガス排出を大幅に抑制できる
- CCUSやバイオガスと組み合わせることで、ガス部門のカーボンニュートラル化を段階的に進められる
水素やアンモニア燃料への転換には、巨額の投資が必要ですが、e-メタンは既存の都市ガス導管やガス機器をそのまま利用できるため、社会的コストを抑えつつガスの脱炭素化を進めることが可能です。
e-メタン国際取引の課題
ただし、Live OakプロジェクトはまだFEED(基本設計)の段階であり、2027年度のFID(最終投資判断)までに以下の課題を解決する必要があります。
- グリーン水素コストとIRA 45V税額控除の制度運用
- 国際的なカーボンアカウンティング(IPCC・GHGプロトコル)の整理
- 日本側でのクリーンガス証書制度や環境価値取引の枠組み
- 長期オフテイク契約の条件(価格・期間・ボリューム・フレキシビリティ)
- LNGスポット価格や為替の変動
e-メタン等導入目標1%に向けた取り組み
日本政府と日本ガス協会は、第6次エネルギー基本計画や業界ロードマップで、2030年度に都市ガス供給量の1%を合成メタンやバイオガスで置き換える方針を示しています。
日本ガス協会 参考資料(PDF):ガスビジョン 2050・アクションプラン 2030
大阪ガスと東邦ガスは、2030年度の「e-メタン等導入目標1%」を達成する手段として、Live Oakプロジェクトからのe-メタン輸入を計画しています。
伊藤忠商事は、日本企業グループの取りまとめ役として、原料調達や国際物流の他に、プロジェクトファイナンス組成、長期オフテイク契約、クレジットや環境価値を含むトレーディングの知見を提供します。
伊藤忠商事はクリーンテック事業をグループの重点領域と位置づけており、e-メタンを含む脱炭素ソリューションの拡大を掲げています。
大阪ガスはLive Oakの他に、米国Archaea Energyからバイオメタンを調達する計画も発表しています。
バイオガステックニュース:大阪ガスが米国産バイオメタンを調達






