エア・ウォーター「地球の恵みファーム・松本」でメタン発酵・発電を開始

エア・ウォーター「地球の恵みファーム・松本」でメタン発酵・発電を開始

産業ガス大手のエア・ウォーターが、長野県松本市に建設した「地球の恵みファーム・松本」で、地産地消エネルギーによる資源循環モデルの実証を行います。

施設に地域の未利用木材を用いたバイオマス発電プラントや、食品廃棄物を原料とするメタン発酵プラントを設置し、電力や熱、CO₂を農業や陸上養殖に再利用することで、資源循環モデルを実証する計画です。

エア・ウォーター ニュースリリース:地産地消エネルギーを活用した資源循環モデルの実証施設
「地球の恵みファーム・松本」本格稼働開始

「地球の恵みファーム・松本」で資源循環モデルの実証

エア・ウォーターグループは、全国で農業・食品事業を展開しており、野菜のカット工場や飲料工場(ゴールドパック株式会社など)、惣菜工場から、日々多くの食品残渣が発生しています。

「地球の恵みファーム・松本」は、これらの未利用資源をエネルギーに変換し、地域内で循環させるための実証施設として設立されました。

地球の恵みファーム・松本 エネルギー・資源循環の仕組み

施設には、未利用木材から合成ガスを製造するバイオマスガス化発電プラントや、お茶やコーヒー粕などの食品廃棄物を原料とするメタン発酵プラントを設置し、カーボンニュートラルなエネルギーを生み出します。

また、バイオガス発電の電力や熱を使用したサーモンなどの養殖や、スマート農業ハウスでの農業、排気ガスからCO₂を回収してドライアイスを製造し、地産地消エネルギーによる資源循環モデルを実現します。

開所式当日にオープニングセレモニーや施設見学が行われ、臥雲義尚松本市長をはじめ、各省庁や地元関係者などの来賓60名が出席しました。

メタン発酵・発電プラントと資源循環の仕組み

実証施設は、主に4つの設備(メタン発酵プラント、バイオマスガス化プラント、スマート農業ハウス、スマート陸上養殖プラント)で構成されています。

中でもメタン発酵プラントは、この循環モデルの心臓部として機能し、グループ内の飲料工場から出るお茶やコーヒー粕など、1日あたり約30トンの食品廃棄物を原料として受け入れます。

発生したバイオガスは発電設備(発電規模:300kW)によって電力に変換し、施設内での利用やFIT(固定価格買取制度)を活用した売電を行います。

また、排熱やCO₂、メタン発酵後の消化液などもすべて再利用して、ゼロ・エミッション型の資源循環を実現します。

  • 排熱の利用:発電時に発生する排熱は、メタン発酵槽の加温や、併設する「スマート農業ハウス」「スマート陸上養殖プラント」の温度調整に利用されます。
  • CO2の利用:CO2回収・ドライアイス製造装置(ReCO2 STATION)によって、バイオガス発電の排気ガス中のCO2を分離・回収し、農業ハウスでトマトやキュウリの光合成促進に利用するほか、1日100kgのドライアイスも製造します。
  • 消化液の利用:メタン発酵後の消化液は、脱水処理を経て肥料となり、地域への還元や農業ハウスの作物栽培に利用されます。

バイオマスガス化プラント

竹や剪定枝などの未利用木材を、人工の薪(ブリケット)に加工してバイオマスガス化炉に投入し、合成ガスを生成して発電(発電規模:150kW)を行います。

発生した熱やCO2は他の設備に供給し、農業や養殖、ドライアイス製造に用いられます。

スマート陸上養殖プラント

プラントの排熱を利用し、人工海水を用いた半閉鎖型循環システムによってサーモンを養殖します。

直径5mの水槽や小型水槽も多数設置され、魚種に応じた養殖システムを開発するとともに、養殖プラント・育成ノウハウをパッケージで提供します。

スマート農業ハウス

プラントの排熱やCO₂を再利用し、トマトやきゅうり、いちごなどを栽培します。

メタン発酵後の消化液は肥料となり、栽培後の葉や茎もメタン発酵の原料として用いることで、持続可能な農作物生産およびスマート農業技術を確立します。

CO₂回収・ドライアイス製造装置

バイオマスガス化プラント、メタン発酵プラントから排出されるCO₂を分離・回収し、スマート農業ハウスでの光合成促進や、液化炭酸ガス・ドライアイス製造に再利用します。

ドライアイス製造装置は、1日100kgのドライアイスを生産することができます。

地球の恵みファーム・松本 今後の展開

エア・ウォーターは、「地球の恵みファーム・松本」での実証を通じて、地域資源の循環モデルを確立させ、各地域ごとの課題や特性に応じてカスタマイズした形で、他地域への展開を目指しています。

地球の恵みファームは一般にも公開されており、工場内見学ツアーを実施しています。今後は地元の小学生などの学習の場としても活用される予定です。

ホームページ:資源循環モデルの実証施設 – 地球の恵みファーム・松本

地球の恵みファーム・松本 基本情報

所在地: 長野県松本市梓川倭4047-2
敷地面積: 約10,000㎡

敷地内には緑化ゾーンとして、シラカバ、ブナ、クヌギなどを植林した「里山ゾーン」も整備されています。


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