さがみはらバイオガスパワー 食品廃棄物リサイクルの仕組み

さがみはらバイオガスパワー

さがみはらバイオガスパワーは、神奈川県相模原市に拠点を置くバイオガスプラント事業者です。

隣接する日本フードエコロジーセンターと連携して、メタン発酵を活用した食品リサイクルを行っており、日本の食品ロス問題解決や、脱炭素・循環型社会の構築に取り組んでいます。

さがみはらバイオガスパワーとは

さがみはらバイオガスパワーは、これまでリサイクルが困難とされてきた油分や塩分の多い食品廃棄物をメタン発酵させ、エネルギーと肥料原料を生み出す食品リサイクル施設として、2023年秋に本格稼働しました。

さがみはらバイオガスパワー:食品循環資源のエネルギー化と肥料化に挑戦しています

この事業の背景には、日本が抱える深刻な食品ロス問題があります。年間約464万トン(2023年度推計値、環境省)もの食料が廃棄される中、その有効活用は脱炭素社会の実現に向けた課題となっています。

この社会課題に対する一つの解として、さがみはらバイオガスパワーは食品廃棄物の活用に取り組んでおり、環境省が推進する「地域循環共生圏」のモデルケースとなっています。

日本フードエコロジーセンターと連携 カスケード利用の仕組み

さがみはらバイオガスパワーの最大の特徴は、隣接する食品リサイクル(飼料化)施設「日本フードエコロジーセンター」との連携による食品循環資源のカスケード利用です。

日本フードエコロジーセンター:株式会社日本フードエコロジーセンター

日本フードエコロジーセンター 食品廃棄物リサイクル

まず日本フードエコロジーセンターで飼料化に適した食品廃棄物を選別・処理し、飼料化に不向きな液体状の食品循環資源をさがみはらバイオガスパワーが受け入れます。

続いて、別途受け入れた廃棄牛乳や焼酎の廃液などを投入し、原料のph(酸性・アルカリ性の度合い)を調整した上で発酵タンクに移して、メタン菌によって60日程度発酵させます。

発生したメタンガスはCHP(コジェネレーションシステム)によって熱と電気に変換され、売電もしくは施設内で利用します。発電能力は528kW(一般家庭1,000戸分)となっています。

電力は固定価格買取制度(FIT)によって、1kWhあたり39円で東京電力に売電され、メタン発酵後の消化液もCHPの廃熱を活用し、水と汚泥に分離して肥料の原料を製造します。

さがみはらバイオガスパワーでは資源循環効率を最大化するため、日本フードエコロジーセンターとの連携によって、廃棄物を段階的(カスケード)に、かつ余すことなく資源として使い切る仕組みを構築しています。

バイオガス発電の仕組みとメタン発酵技術

さがみはらバイオガスパワーでは、日量50トンの液状の食品循環資源を原料として受け入れ、メタン発酵技術を活用してエネルギーや肥料を生み出しています。

メタン発酵とは、微生物の働きを利用して食品循環資源に含まれる有機物を分解し、メタンガスを主成分とするバイオガスを発生させるプロセスです。

メタン発酵から発電、肥料化までのプロセス

バイオガス生成のプロセスは、大きく分けて4つのステップで構成されます。

  1. 受入・前処理:事業所から排出された液状の食品廃棄物を受け入れ、異物を取り除き、発酵に適した状態に調整します。
  2. メタン発酵:酸素のない嫌気状態に保たれた発酵タンク内で、メタン菌などの微生物が有機物を分解し、バイオガスを生成します。
  3. ガス発電:生成されたバイオガスを燃料として、ガスエンジンを稼働させ発電します。
  4. 消化液の肥料化:メタン発酵後に残った消化液は、発電時に発生する排熱を利用して水分を蒸発・乾燥させ、りん酸を豊富に含む肥料原料を製造します。

発電した電力は、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)を活用して東京電力に売電しています。

小田急電鉄ではカーボンニュートラルの実現を目指し、グループ内の商業施設等から排出された食品廃棄物を利用してバイオガス発電を行い、FIT非化石証書を通じて電力を購入しています。

小田急グループ:海老名でチャレンジ 資源循環の取り組み

メタン発酵後の消化液から製造した肥料は、「菌体りん酸肥料」として公定規格に登録されており、メタン発酵施設由来の残さ汚泥としては、全国初の登録となります。

さがみはらバイオガスパワー:全国初!食品循環資源のメタン発酵残さ汚泥を「菌体りん酸肥料」として登録完了しました!

バイオガス設備設計 オランダHoSt社

さがみはらバイオガスパワーのバイオガス設備設計は、オランダHoSt社が担当しています。

HoSt社は1991年に設立されたオランダ最大のバイオガス技術プロバイダーで、世界35カ国で450以上のバイオガスプラントプロジェクトを実施しています。

HoSt Energy Systems(英語サイト):HoSt Energy Systems | Empowering Sustainability Ambitions

HoSt社ではバイオガスプラント建設だけでなく、feasibility study(実現可能性調査)から設計、建設、試運転、アフターサービスまで、一貫したターンキーソリューションを提供しています。

食品循環資源による食品リサイクルの促進

食品リサイクル法は、食品の製造・販売・外食などを行う食品関連事業者に対して、食品廃棄物の発生抑制とリサイクルを義務付ける法律です。

農林水産省は食品リサイクル法に基づく再生利用等実施率の目標を設定しており、2029年度までに食品製造業は95%、食品卸売業は75%、食品小売業は65%、外食産業は50%を達成することが求められています。

食品リサイクル法解説:食品リサイクル法を分かりやすく解説! その対象範囲と定期報告の概要まで| おしえて!アミタさん

この法律では、食品廃棄物の再生利用方法が定められており、バイオガスプラントは肥料化とメタン化(バイオガス化)を同時に達成できます。

  • 飼料化:家畜のエサにする
  • 肥料化:農作物のための堆肥や液肥にする
  • メタン化:微生物に分解させてバイオガスを発生させる
  • その他:エタノール、炭化、油脂化及び油脂製品化、熱回収

バイオガスプラントは食品廃棄物を大規模かつ安定的に処理できるため、食品リサイクル法と相性が良く、食品リサイクル法が目指す循環型社会の受け皿となっています。


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