大阪・関西万博の閉幕まであとわずかとなり、会場は最後の駆け込み来場者でたいそう賑わっています。

中でも人気パビリオンの日本館はなかなか予約が取れませんが、たまたま当日登録で空いた枠に当選したので、運よく見学することができました。

日本館では、会場内の生ごみを微生物で分解するバイオガスプラントも見学できます。こちらは実際に稼働しており、ごみから資源を生み出しリサイクルすることで「いのちの循環」を体現しています。
日本館のコンセプト「いのちの循環」とバイオガスプラント
大阪・関西万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げており、中でも日本館はそのテーマに沿って、会場内の生ゴミからエネルギーを生み出すバイオガスプラントを運営しています。

日本の伝統的な自然観として、森羅万象すべては一体であり、循環しているという考え方があります。
バイオガスプラントは日本館の「いのちと、いのちの、あいだに」というコンセプトに沿って、微生物によるメタン発酵でエネルギーを生み出すとともに、残った消化液は肥料として土に還しています。
バイオガスプラントは、会場内で排出される生ごみ(食品残渣)を、次の「いのち」を育むための貴重なリサイクル資源として活用しており、「いのちの循環」を体現しています。
日本館にバイオガスプラントが設置された理由
日本館にバイオガスプラントが設置された背景には、脱炭素や環境保護、サステナブルな社会モデルの構築という明確なメッセージが込められています。
- 食品ロス問題の解決策:日本国内では、年間約523万トン(令和3年度推計値)ものフードロスが発生しており、食品残渣をその場で資源化するバイオガスプラントは、その具体的な解決策になります。
- カーボンニュートラルへの取り組み:バイオガスは化石燃料の代替となる有望なエネルギー源で、日本の先進的な環境技術をアピールするとともに、日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」目標達成に向けた取り組みとなります。
- 分散型エネルギーシステムの提示:地域内でエネルギーを自給自足する「分散型エネルギーシステム」の重要性が高まっており、エネルギー地産地消や災害時レジリエンス向上の可能性を秘めています。
日本館 プラントエリア
日本館では、ゴミをリサイクルして資源に変わっていく様子を多彩な表現方法で見ることができます。まずはプラントエリアに入ります。

プラントエリアの主役は小さな微生物で、コンセプトは「ちいさないのちが、ささやく」です。まずは円錐のディスプレイが登場し、生ごみをベルトコンベアでタンクに送る展示があります。
こちらは「いのち瞬く光の草原」です。約700枚の発光パネルによる光のダンスで、生ゴミをメタン発酵させるメタン菌や微生物をイメージしています。

底部に発酵タンクをイメージしたインスタレーションが設置され、淡いランプが点灯と消灯を繰り返して微生物の活動を表現しており、とても幻想的です。

醤油や味噌を作る微生物「麹菌」のミュージアムです。醤油、味噌、日本酒、お酢、みりんなどの和食は、麹菌による発酵でアミノ酸を生み出し、うまみを引き出しています。

生分解性プラスチックが分解される様子を5段階で表現しています。プラスチックごみはなかなか分解されず問題となっていますが、生分解性プラスチックは微生物によって分解され自然に戻ります。

生ごみがメタン菌によって水・熱・電気・CO₂・養分(窒素・リン)に分解される様子は、メディコムトイのテディベアをモチーフにしたBE@RBRICK(ベアブリック)のデジタル展示で表現しています。

日本館では生ゴミ分解後に発生する消化液を、微生物とろ過膜によって純水に近いレベルまで浄化します。水がきれいになるとBE@RBRICKが泳ぎだして、中庭の水盤に向かいます。

一般的なバイオガスプラントでは、メタン発酵後の消化液を肥料として利用しますが、日本館では人が飲めるレベルまで浄化して再利用しています。

微生物とろ過装置によって浄化された水は、中庭の水盤に貯留されます。この浄化技術は日本の浄水場で実用化されています。

日本館 ファームエリア
ファームエリアでは、微生物によって分解された物質やエネルギーが、別の微生物によって燃料や食品、医薬品や服などに生まれ変わります。

生ごみ由来のCO₂を詰めたボンベが展示されています。CO₂を原料にした生分解性プラスチックは、CO₂を食べる水素酸化細菌によって作られます。

こちらは水族館で、カラフルな水槽の中では、とても小さな藻類「ボツリオコッカス」を育成しています。石油を作る藻類ともいわれており、石油に代わる資源の有力候補です。

32種類の藻類に変身した「藻類×ハローキティ」です。それぞれ実在する藻類がモチーフになっています。

藻類は丸や四角、正十二面体など、どれも個性的な形状です。「藻類×ハローキティ図鑑」で各藻類の名前や形状、特徴を見ることができます。
日本館ガイド: ハロー! かたちで選ぶ「藻類×ハローキティ図鑑」

まるで森のような緑のチューブ、これは「フォトバイオリアクター」という藻類を育てる装置で、中にはスピルリナという栄養豊富で食品にも使われる藻類が育っています。

日本館 ファクトリーエリア
ファクトリーエリアでは、ごみから生まれた物質やエネルギーが実際の「もの」に変わっています。こちらの工場では、ロボットアームが3Dプリントでスツールを製作しています。

ギャラリーでは、循環するものづくりをテーマとした展示が行われています。桶や着物はやわらかく作ることで力を受け止めたり、簡単に直せるようになっています。

小型月着陸実証機「SLIM」は、月面着陸時にわざと脚部がこわれるようにして衝撃を吸収し、機体を安全に着陸させます。

ドラえもんが解説する伊勢神宮の式年遷宮です。1,300年も続くこの儀式は、20年ごとに建物や神具を新調することで技術継承を行い、木材やわらぶきは再利用してリサイクルしています。

珪藻土の石盤に水滴が落ちて、静かに跡をつけていきます。古くから壁材などに使われてきた珪藻土は、微細藻類の死骸が海や湖の底にたまって化石になったものです。

日本館のバイオガスプラント
万博会場内の生ゴミは破砕機で細かく破砕され、メタン発酵槽で発酵させるとバイオガスが発生します。水は微生物とろ過装置によって浄化し、発生したバイオガスは電気に変換して館内で利用します。

大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、持続可能な社会の実現に向けた様々なソリューションを世界に提示する場です。
日本館のバイオガスプラントは単なる技術展示に留まらず、高効率な資源循環システムやフードロスの解決、未来のエネルギーを学ぶ場としても大きな意義があります。
経済産業省 METI Journal ONLINE: 【万博60秒解説】日本館は「リアル」なプラントだった ~パビリオンの常識を変える試み~
日本館 バイオガスプラント見学ツアー
日本館に併設されたバイオガスプラントは、カナデビア(旧日立造船)が設計施工・運営を担当しています。
日本館のバックヤードで行われている裏側のプロセスは、カナデビアが実施しているバイオガスプラントの一般来場者向け見学ツアーに参加すると見ることができます。
プラント見学ツアー: 大阪・関西万博の日本館バイオガスプラント見学ツアー カナデビアが実施
大阪・関西万博 日本館の詳細情報
- 会館時期: 2025年4月13日〜2025年10月13日
- 会館時間: 9:20 ~ 21:00
- 所要時間: 約40分
- 会場場所: 東ゲートゾーン(以下マップ参照)
日本館の場所は東ゲートゾーン、大屋根リングの外側にあります。

日本館のチケット情報や各種お知らせは、以下のサイトから入手できます。
日本館ガイド: 日本館まるごとガイド丨大阪・関西万博 日本館公式サイト
日本館まるごとガイドやライブラリ、施設情報などの他に、公式Webマガジン「月刊日本館」では、日本館の展示物やコンセプトについて、より深く知ることができます。
日本館チケットの予約方法
日本館チケットはEXPO2025デジタルチケットサイトで予約が必要です。現在は以下の予約方法で受付中です。
- 7日前抽選
- 空き枠先着予約
- 当日登録
- 団体予約
事前に予約できなかった場合、来場して当日登録で申し込むという方法もありますが、当選する可能性は低いです。
夜の事前予約なしの入館は、19:20からとなります。ただし、かなり前から並んで待機しないとすぐに満杯になるので注意してください。






