旭化成が岡山県倉敷市児島下水処理場にて実施中のバイオガス精製システムの実証試験において、バイオメタンの高純度(97%以上)および高回収率(99.5%以上)の両立に成功したと発表しました。
旭化成 プレスリリース:バイオガス精製システムの技術ライセンスパートナー探索を本格的に開始
この技術はバイオガスから主成分であるメタンを高効率かつ低コストで分離・精製する画期的な技術であり、今後はライセンスパートナーを探索して早期の社会実装を目指します。
バイオガスへの期待とメタンロスの問題点
地球温暖化対策や脱炭素社会に向けた動きが加速する中、家畜糞尿や食品廃棄物、下水汚泥などの有機性廃棄物をメタン発酵させる「バイオガス」は、クリーンな再生可能エネルギー源として期待されています。
特に欧州では、ロシアのウクライナ侵攻を契機とするエネルギー安全保障の観点も加わり、官民を挙げたバイオメタンの導入目標が進んできます。
また、既存の天然ガスインフラを活用できるため、欧州ではパイプライン注入やバイオRNG化の需要が拡大しており、インドではゴミ処理やエネルギー供給手段として政策的に推進されています。
しかし、既存のバイオメタン精製方法(膜分離法、吸着法、吸収法など)は、その過程でメタンロスが発生し、多くのエネルギーを消費するため、高効率で低コストな新技術が求められていました。
触媒技術を用いたバイオガス精製システム
旭化成は長年培ってきた触媒開発やガス分離技術の知見を活かし、CO₂を選択的に吸着するゼオライトと、圧力と真空を交互に用いる「PVSA(Pressure Vacuum Swing Adsorption)」プロセスを組み合わせた独自のバイオガス精製システムを開発しました。
これによって、バイオメタンの「高純度」と「高回収率」を同時に達成することに成功しています。
- 世界最高水準のメタン回収率(99.5%以上): 従来技術では避けられなかったメタンロスを最小限に抑制し、原料となるバイオガスを無駄なくエネルギーに変換できます。
- 高純度メタンの実現(97%以上): 天然ガスパイプラインへの注入基準を満たす、高品質なバイオメタンを安定して生産可能です。
- シンプルなプロセスと低コスト化: 従来の多段階の精製工程や大規模な付帯設備が不要となり、設備投資(CAPEX)と運転費用(OPEX)の両方を大幅に削減します。
岡山県の下水処理場で実証実験
この技術を検証するため、2025年2月から岡山県倉敷市の児島下水処理場にて、実証試験を開始しました。
約1か月にわたる連続運転の初期評価では、バイオメタンの純度が97%以上、回収率が99.5%以上という高い成果を確認しました。
これは、天然ガスのパイプライン注入やCNGなどの燃料として使用可能な水準であり、技術的にも商業的にも高いポテンシャルを示す成果です。
児島下水処理場 汚泥バイオガス発電
児島下水処理場では、2015年5月から下水汚泥のバイオガスを利用した発電が行われており、出力は約125kW(25kW×5基)、発電量が68MWh/年(計画値)となっています。
バイオガス精製システムの性能評価、実証を行う契約は、2022年9月に旭化成水島製造所と倉敷市との間で締結されました。
旭化成 プレスリリース:旭化成、岡山県倉敷市の下水処理場にバイオガス精製システムを設置
また、児島下水処理場の発電機には「クラ敷のゲ水ででンキを作る」を意味する「くらげんき」という愛称が付いています。
倉敷市長室:児島下水処理場汚泥消化ガス発電設備 発電開始式
技術を欧州やインドへ展開
旭化成はこの優れた技術を世界中に普及させるため、世界各地のエンジニアリング企業やプラントメーカーなどと協業し、各地域の市場や規制に合わせた形でこの技術を提供します。
当初は市場が大きく環境意識の高い欧州やインドをターゲットとし、家畜糞尿や食品廃棄物由来の比較的小規模なプラントから、大規模な下水処理施設まで、幅広いニーズに応えていく計画です。
旭化成では、すでに技術ライセンスパートナー探索を開始しており、商用スケールでの実証を経て、2027年の本格的な市場投入を目指します。






