自動車メーカーのスズキが、インドで5か所目となるバイオガス生産プラントの設置で基本合意しました。
スズキはインド政府機関や現地企業と共同でバイオガスプラント設置に取り組んでおり、2025年より順次5か所のプラントを設置し、インドの成長とカーボンニュートラルの実現に貢献する方針です。
また、スズキはインド子会社の Maruti Suzuki India(マルチ・スズキ・インディア)で自動車を生産しており、バイオガスの生産や活用を通じて、工場から排出される二酸化炭素(CO2)の削減を目指しています。
スズキが取り組むインドのバイオガスプラント
スズキは長年にわたってインド子会社で自動車を生産しており、インドの乗用車市場では「国民車」として、約40%という圧倒的なシェアを維持しています。
また、スズキはインドでカーボンニュートラルの実現に取り組んでおり、バイオガス生産プラントの設置と、バイオガスを使用した農村向けモビリティサービスの実証について、100%子会社と現地企業との3者間で覚書を締結し、基本合意しました。
スズキ企業ニュース:スズキ、インドで5つ目のバイオガス生産プラント設置で基本合意
バイオガスプラント設置の覚書は、研究開発子会社の Suzuki R&D Center India Private Limitedと、インドの政府機関 National Dairy Development Board(全国酪農開発機構、NDDB)、アジア最大規模の乳業メーカー Banas Dairy社との3者間で締結しています。
覚書締結式はBanas Dairy Sanadar 工場(グジャラート州バナスカンタ)で行われ、Banas Dairy のシャンカール・チョードリー会長、NDDB のS・ラジーブ取締役、スズキの鈴木俊宏社長が出席しました。
3者はグジャラート州バナスカンタ地域でバイオガス生産プラントの設置に取り組んでおり、2025年から順次4か所のプラント設置を計画していましたが、今回新たに5か所目のバイオガス生産プラントを設置することで合意しました。
これらのプラントでは、牛ふんからバイオガスを生産します。スズキはこの他に、食品廃棄物や牧草のナピアグラスからバイオガスを生産する事業も進めています。
バイオガスを使用した農村向けモビリティサービス
スズキはインド子会社のMaruti Suzukiで圧縮天然ガス(CNG)車を生産しており、2010年の導入開始からこれまでに180万台以上のCNG車を販売しています。
Maruti Suzuki:Maruti Suzuki Company Fitted CNG Cars at Best Prices in India
今回の農村向けモビリティーサービスは、車の燃料として牛の糞尿から発生したバイオメタンガスを用います。
牛の糞尿に含まれるメタンはCO2の28倍の温室効果を持つと言われており、牛の糞尿からバイオメタンガスを発生させて自動車の燃料にすることで、メタンの放出を抑えることができます。
糞尿由来のカーボンニュートラル燃料を地域内で生産し、マルチ・スズキのCNG車にバイオメタンガスを供給するエコシステムの構築を目指しています。
スズキ企業ニュース:スズキ、インドでのバイオガス実証事業を開始
覚書締結式に出席した鈴木社長は、「Banas Dairy、NDDBと協力して、バイオガス生産プラントと農村向けモビリティサービスの2つの事業を始めます。3者がアイデアを出し合って、新しい生活のモデルを作り上げ、バナスカンタの発展に貢献してまいります。」と語っています。
スズキはこのサービスをインド全土の農村地域に展開することで、メタン放出の抑制やカーボンニュートラル燃料を普及させ、さらに農村地域の活性化や新たな雇用の創出によって、インドの循環型社会形成に貢献することを目指しています。
スズキのインドバイオガス事業がUNIDOに採択
スズキがインドで展開しているバイオガス事業は、国連工業開発機関(UNIDO)の産業協力プログラムに採択されています。
バイオガステック ニュース記事:スズキのインドバイオガス事業がUNIDO産業協力プログラムに採択
スズキのバイオガス事業は、自らクリーンな燃料を生産することでインド国内のカーボンニュートラルに貢献するだけでなく、エネルギー自給率の向上や新たな雇用の創出、牛糞の買い取りによる農村所得や生活水準の向上につながります。
また、バイオガスはインド国内自動車の約2割を占めるCNG車の燃料として使用可能で、温室効果ガスの排出抑制にも貢献します。
今回の採択は、スズキがインドで推進するバイオガス事業の社会的意義が評価されたことを示しています。