総合商社の双日が、インドでバイオメタンの製造・販売事業に本格参入することを発表しました。
双日 ニュース:双日、インドのバイオメタン製造・販売事業に参入
双日はインド最大の国営石油会社である IOCL と、バイオメタンプラントの設計や保守を手掛ける GPS Renewables の合弁会社「IGRPL」に出資し、バイオメタン事業をインドで展開します。
双日は合弁会社を通じて、2026〜27年度にインド国内で30基のバイオメタンプラントを稼働させ、年16万トンのバイオメタン生産・販売を計画しています。
稲わらなどの農業残渣からバイオメタンを生産
インドは世界有数の農業国であり、年間数億トンもの農業残渣(稲わら、もみ殻、バガス等)が発生します。
しかし、インドではその多くが有効活用されないまま野焼きされ、深刻な大気汚染の原因となっています。インド政府の調査によると、デリー首都圏では大気汚染の最大40%が近隣州での野焼きに起因しています。
双日とIGRPLが進めるバイオメタン事業は、原料となる稲わらなどの農業残渣を農家から買い取って、農家に新たな収入源をもたらすとともに、野焼きを減らす経済的インセンティブを生み出します。
農家から回収した稲わらなどの原料は、嫌気性消化によるメタン発酵を経てバイオガスに転換し、メタン濃度を高めてCBG(圧縮バイオガス、RNG)として供給します。
インドでは環境問題への対処と、エネルギー自給率の向上が課題となっており、バイオメタン事業を通じて野焼きによる大気汚染低減や、農家の所得向上、地方経済の活性化に貢献します。
インドのバイオエネルギー国家政策
インドは世界第3位のエネルギー消費国であり、今後も経済成長に伴う化石燃料由来のエネルギー需要拡大が見込まれています。
しかし、インドでは石油の多くを輸入に頼り、自給率の高い石炭は大気汚染の原因となるため、エネルギー安全保障や環境対策の面で問題となっていました。
インド政府はその対策として、バイオエネルギー分野の大規模な支援策を発表しており、エネルギー安全保障の強化と、深刻化する大気汚染や農作物の野焼き解決を目指しています。
インドのエネルギー戦略 SATAT
また、インドは国家戦略として「SATAT(Sustainable Alternative Towards Affordable Transportation)」を推進しており、以下の野心的な目標を掲げています。
- 2025年までに国内で5,000カ所のCBG(圧縮バイオガス)プラントを設置
- 年間1,500万トンのCBGを生産
- 生産したCBGを自動車用の圧縮天然ガス(CNG)や家庭用の都市ガスに混合利用
SATATでは、国営の石油・ガス会社等と長期(おおむね15年)の商業契約を結ぶ枠組みが整備されており、バイオメタン事業者は大規模な初期投資のリスクを低減することができます。
IndianOil for Environment:SATAT (Sustainable Alternative Towards Affordable Transportation)
双日のGX戦略 IOCLとGPS Renewablesとの提携
双日は中期経営計画2026で、インドをはじめとする成長市場の取り込みを掲げており、グリーントランスフォーメーション(GX)分野を戦略的強化領域に指定しています。
IOCLの販売力とGPS Renewablesの技術力を組み合わせた合弁会社「IOC GPS Renewables Pvt. Ltd.(IGRPL)」は、双日のインドGX戦略にとって心強いパートナーとなります。
- IOCL:インド最大の国営石油会社で、生産されたCBGの長期的な買い手となります。
- GPS Renewables:インドの大手バイオガスプラント技術・建設会社で、CBGプラントの設計、建設、運転・保守を提供します。
双日はIOCLのガス需要家ネットワークと、GPS Renewablesのバイオメタン製造技術を活かし、IGRPLを通じてインド国内全域でバイオメタン事業を展開する予定です。
また、双日はGX戦略の一環として、インドのパートナー企業と共に東南アジアなど他の新興国へ進出し、バイオメタン事業を展開することも検討しています。