インド政府が国家バイオエネルギープログラムに投資

インド政府が国家バイオエネルギープログラムに投資

インド政府は、深刻化する大気汚染対策とクリーンエネルギーへの移行を推進する「国家バイオエネルギープログラム(National Bioenergy Programme)に、857億ルピー(約1,441億円)の追加投資を検討しています。

Economic Times India:India’s waste-to-energy initiative to get Rs 857 cr boost from Govt: MNRE Secretary

インド政府は国家戦略として、廃棄物を資源として活用する循環型経済への転換を進めており、今回の投資は国家バイオエネルギープログラムの第2フェーズとなります。

インド政府が推進する国家バイオエネルギープログラム

インド新・再生可能エネルギー省(MNRE)は、国のエネルギー安全保障と環境改善を目的とするバイオガス分野への大規模な財政支援策を打ち出しています。

この政策によって、インド国内の農業廃棄物をエネルギー資源へと転換する「Waste-to-Energy(廃棄物発電)」に取り組み、持続可能な循環型経済の構築を加速させます。

2022年11月に発表された「国家バイオエネルギープログラム(NBEP)」では、総額約1,715億ルピー(約2,884億円)の予算が割り当てられ、第1フェーズで858億ルピーが既に承認されています。

それに続く第2フェーズとして、サントーシュ・クマール・サランギ(Santosh Kumar Sarangi)長官は、インド・バイオガス協会の会談で857億ルピーの追加予算投入を発表しています。

国家バイオエネルギープログラムの目的

国家バイオエネルギープログラムは以下3つのサブスキームで構成され、多角的な支援を行います。

  1. 廃棄物発電プログラム (Waste to Energy Programme):都市ごみ、産業廃棄物、農業廃棄物を利用したバイオガス、バイオCNG(圧縮天然ガス)、発電プラントの設置を支援します。
  2. バイオマスプログラム (Biomass Programme):農業残渣などを固形燃料(ブリケットやペレット)に加工する製造プラントの設立を支援します。これらの固形燃料は、石炭火力発電所での混焼利用などが想定されており、化石燃料への依存度を低減させます。
  3. バイオガスプログラム (Biogas Programme):農村地域における家庭用・コミュニティレベルの小規模なバイオガスプラントの普及を促進し、クリーンな調理用燃料の確保や、農家の所得向上を目指します。

MINISTRY OF NEW AND RENEWABLE ENERGY | India:Bio Energy Overview

国家バイオエネルギープログラムのメリット

薪や牛糞などの燃料をバイオガスに転換

国家バイオエネルギープログラムがもたらす効果は、単なるエネルギー創出に留まらず、温室効果ガス削減・大気汚染緩和・農村所得拡大など、様々なメリットを得られます。

また、農村で未だに使われている薪や牛糞などの燃料をバイオガスに転換することで、室内の空気汚染による健康被害を軽減し、女性や子供の負担を減らすことを目指します。

  • 大気汚染の改善: PM2.5などの有害物質を大量に発生させる農業廃棄物の野焼きを根絶し、大気汚染を劇的に改善します。
  • 農家所得の向上: これまで処分に困っていた廃棄物を事業者に売却したり、エネルギーに転換することで、農家は新たな収入源を得ることができます。
  • エネルギー安全保障: 国内の資源を活用してバイオガスを生み出すことで、エネルギーの輸入依存度を下げ、安定供給に貢献します。
  • 新規雇用の創出: バイオガスプラントの建設から、運営、原料の収集・運搬など、サプライチェーン全体で新たな雇用が生まれます。
  • 有機肥料の生産: プラント副産物の消化液は有機肥料として使えるため、化学肥料への依存を減らして土壌の健康を改善し、農家の収益向上にも貢献します。

インド政府はこのプログラムを通じて、2070年までのネットゼロ排出という国際公約の達成を推進します。

バイオガスで大気汚染と農業廃棄物の問題を解決

バイオガスでインドの大気汚染問題を解決

インド、特にデリー首都圏を含む北インドでは、毎年収穫期になると稲わらなどの農業廃棄物の野焼きが横行し、深刻な大気汚染を引き起こす主因の一つとなっています。

また、野焼きはPM2.5などの有害物質を大量に発生させ、国民の健康を脅かしていますが、その一方でこれらの農業廃棄物は、クリーンエネルギーを生み出す巨大な「宝の山」とも言えます。

インド政府は廃棄物を「ごみ」ではなく、「資源」として活用する循環型経済への転換を国家戦略の柱に据えており、国家バイオエネルギープログラムは、このビジョンを具現化するための重要な施策です。

GOBAR-Dhan インド政府のバイオガス普及計画

GOBAR-Dhan(ゴバルダン、Galvanizing Organic Bio-Agro Resources Dhan)とは、農村地域の持続可能な発展を目指し、バイオガスを普及させるインドの国家的プロジェクトです。

今回の投資は、GOBAR-Dhanの一環として推進され、牛糞や農業残渣、食品廃棄物などの有機性廃棄物をバイオガスや有機肥料に転換し、「廃棄物から富へ(Waste to Wealth)」という国家目標を実現します。

GOBARdhan:GOBARdhan Unified Registration Portal For Biogas/ CBG/ Bio CNG plants

また、GOBAR-Dhanはインドの主要な国家ミッションと連携しています。

連携する国家ミッションGOBAR-Dhanによる貢献
スワッチ・バーラト・ミッション(クリーン・インディア)農村地域の衛生環境を改善し、野外での廃棄物投棄を削減します
農家所得倍増計画エネルギーと肥料を自給自足し、余剰分を販売することで新たな収入源を創出します
持続可能な開発目標(SDGs)クリーンエネルギー・衛生・持続可能な農業などに貢献します

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