気候変動や持続可能な社会の構築に向けて、バイオガスプラントは有機性資源の有効活用、再生可能エネルギー供給、そしてメタンやGHGなど温室効果ガス削減に貢献するテクノロジーとして、世界的にその重要性を増しています。

この記事ではバイオガス利用の歴史や起源から、地域別の市場動向、政策的背景など、世界のバイオガスプラント状況について詳しく解説します。

目次

バイオガス利用の歴史 古代から産業革命まで

自然界における嫌気性発酵、すなわち有機物が微生物によって分解されメタンガスが発生する現象は、古くから知られていました。

「燃える水」や「沼気」として認識されていたこのガスを、人類が意図的に利用し始めたのは近代以降のことで、その試みは後のバイオガス技術開発の礎となります。

19世紀ヨーロッパ メタンガス利用の試み

記録に残る最初のバイオガス利用として、18世紀末にイタリアの科学者アレッサンドロ・ボルタが、マッジョーレ湖の堆積物から発生するガス(メタン)を発見したことが挙げられます。

ヨーロッパで都市インフラとして最初にバイオガスを利用したのは、1895年のイギリス、エクセター市です。同市の下水処理場で発生した消化ガス(下水汚泥ガス)を回収し、街灯の燃料として供給しています。

市の測量技師だったドナルド・キャメロン(Donald Cameron)は、空気を遮断した状態で下水を貯留し、微生物(嫌気性菌)の働きで汚泥を分解させる処理方法を開発・導入しました。これは現代の嫌気性消化技術の先駆けと言えます。

この事例は、下水処理技術とバイオガスエネルギー利用の歴史において、非常に重要なマイルストーンとして知られており、他の都市で同様の試みを促すきっかけとなりました。

中国・インドの家庭用ダイジェスター

中国では初期バイオガス利用の記録として、1930年代にLuo Guorui (羅国瑞)氏による小規模な嫌気性消化槽(ダイジェスター)の設計・開発という事例が見られます。

国家レベルでは、1950年代後半(大躍進政策期)や、1970年代に中国政府主導で進められた農村エネルギー政策によって数百万基の家庭用ダイジェスターが建設され、バイオガスの利用が一気に広まりました。

インドでは、19世紀半ば(1859年頃)にムンバイのハンセン病療養施設で、嫌気性消化によるガス利用の記録があり、世界で最も初期のバイオガスプラント実用例の一つとして知られています。

また、1950年代にインド農業省主導で牛糞を原料とする家庭用バイオガスプラント「ゴバルガスプラント(Gobar Gas Plant)」の開発・普及が始まりました。

この取り組みは、農村部における調理用燃料の確保(薪への依存を減らし、女性の労力を軽減)、照明、そして発酵後の消化液を有機肥料として活用することを通じて、農村の生活向上と農業生産性の改善に大きく貢献しました。

初期のバイオガスプラント 嫌気性消化技術の原型

これら初期のダイジェスターやバイオガスプラントは、現代の高度に制御されたシステムとは異なり、多くは自然な微生物活動に依存するシンプルな構造でした。

密閉された空間で有機物を嫌気状態に保ち、発生したバイオガスを回収するという嫌気性消化の基本原理は共通していましたが、温度制御、pH調整、攪拌といったプロセス最適化の概念はまだ確立されていませんでした。

しかし、これらの経験を通じて、原料の種類とガス発生量の関係をはじめ、ガス漏れを防ぐための二重蓋構造や、撹拌による発酵均一化といった概念が生まれ、後の技術改良の基盤が形成されました。

オイルショックとバイオガスの技術加速

バイオガス技術が本格的に注目され、研究開発が進んだのは、20世紀に勃発した二度の世界大戦と、特に1970年代のオイルショックがきっかけです。

特にオイルショックは世界のエネルギー供給体制を揺るがし、化石燃料への過度な依存リスクが明らかになりました。

これにより、代替エネルギー源の開発が国家的な優先課題となり、バイオガス技術はエネルギー安全保障と環境保全の両面から再評価され、技術開発と実用化が飛躍する契機となりました。

オイルショック後の日本・デンマーク政策

オイルショックを受けて、日本では代替エネルギー技術開発を目指す「サンシャイン計画」(1974年〜)が始動し、バイオマスエネルギーもその対象となりました。

農林水産省や通商産業省(当時)主導で、家畜ふん尿、下水汚泥、食品廃棄物などを利用したメタン発酵技術の研究開発や実証プラント建設が進められました。

一方、エネルギー輸入依存度が高かったデンマークは、国家レベルでエネルギー自給率向上と環境調和型エネルギーへのシフトを強力に推進しています。

特に農業分野におけるバイオガスプラント導入に対し、積極的な補助金制度や技術指導プログラムを展開し、これが「バイオガス先進国」としての地位を確立することになります。

フルスケールバイオガスプラントと標準化

当時のヨーロッパでは、家畜ふん尿を主原料とする実用規模(フルスケール)のバイオガスプラントの設計・建設技術が確立されました。

攪拌機能付きのコンクリート製または鋼製の発酵槽、ガス貯留用のメンブレン式ガスホルダー、そして発電と熱利用を同時に行うコージェネレーション(CHP)システムが標準的な構成となります。

ドイツなどでは、プラントメーカーが提供する標準化されたプラントパッケージが登場し、農業経営者が導入しやすい環境が整備されました。これにより、バイオガスプラントの信頼性向上とコスト低減が進みました。

ヨーロッパのバイオガス市場 ドイツのプラント導入数

21世紀に入ると、欧州連合(EU)主導の気候変動対策と再生可能エネルギー導入目標の設定が、バイオガス市場の拡大を強力に後押ししました。

特にドイツは世界をリードするバイオガスプラント導入数を誇り、成熟した市場を形成しています。

再エネ指令RED IIとFIT/FIPの普及率押し上げ

EUの再生可能エネルギー指令(RED II)は、2030年までに最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を32%以上(現在は42.5%目標に引き上げ議論中)とする目標を掲げ、バイオガスの利用、特に輸送燃料としてのバイオメタンの普及を促進しています。

これに加えて、ドイツで長年施行されてきた固定価格買取制度(FIT)は、バイオガス発電事業者に対し、長期にわたる安定収入を保証することで、投資リスクを大幅に低減させました。

近年はFIP(プレミアム制度)や入札制度への移行が進んでいますが、この強力な政策支援が、ドイツ国内に約1万基(2023年末時点、出典:ドイツバイオマスリサーチセンター DBFZ等)ものバイオガスプラントが普及する最大の原動力となりました。

北欧・バルト諸国のプラント高稼働率モデル

デンマークスウェーデンでは、複数の農家や食品工場から原料を集約し、大規模なプラントで処理する集中型モデルが発展しています。

これによりスケールメリットを追求し、高度な運転管理技術と効率的な原料ロジスティクスによって高いプラント稼働率を実現しており、生成されたバイオメタンは、既存の天然ガスパイプライン網に注入され、広域的に利用されています。

また、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)でも、EUの構造基金などを活用し、農業残渣や森林資源を利用したバイオガス・バイオメタンプロジェクトが増加しており、北欧モデルに倣った高効率運用を目指す動きが見られます。

欧州最大級のバイオメタン精製設備

発電(CHP)から、より市場価値の高いバイオメタン製造へのシフトは欧州全体のトレンドです。その象徴的な事例として、ドイツ北部のKöhnにあるReVis Bioenergy社のプラントが挙げられます。

年間70万トン以上の多様な有機性廃棄物を処理し、年間約1.4TWh相当のバイオメタンを生産、天然ガスグリッドへ供給する能力を持ちます。

ここでは、エネルギー効率とメタン回収率に優れたアミン洗浄法によるガス精製技術が採用されており、再生可能ガス供給における大規模化と技術的高度化の方向性を示しています。

アジア・ラテンアメリカの導入動向

ヨーロッパ市場が成熟期に入る一方で、アジアやラテンアメリカでは、著しい経済成長に伴うエネルギー需要の増大、都市化による廃棄物問題の深刻化、そして再生可能エネルギー導入への政策的意欲の高まりを背景に、バイオガス市場が急速な拡大期を迎えています。

中国農村バイオガス政策と五か年計画

中国政府は、長年にわたる農村部での家庭用ダイジェスター普及に加え、近年の五か年計画では、環境規制強化と再生可能エネルギー目標達成のため、大規模・中規模の産業・農業系バイオガスプラントの建設と、発電およびバイオメタン利用の高度化を強力に推進しています。

家畜飼養規模の拡大に伴うふん尿処理問題や、都市部の有機性廃棄物処理の解決策として、補助金や優遇税制を通じてバイオガスプラントの導入が加速しています。

2022年末時点で、発電を伴う中・大規模プラントは中国全土で約5,000ヶ所以上に達し、導入規模では世界最大となっています(出典:中国農業農村部関連データ等)。

ブラジルRenovaBioのクレジット創出モデル

ブラジルでは、国家バイオ燃料政策「RenovaBio」(2020年施行)が、バイオガス・バイオメタン市場の活性化に大きく貢献しています。

この政策は、バイオ燃料製造時のライフサイクルでのGHG排出削減量を評価し、脱炭素化クレジット(CBio)を発行します。

化石燃料販売業者にCBioの購入義務を課すことで、バイオ燃料の競争力を高める仕組みです。

サトウキビ産業から大量に発生する圧搾残渣(バガス)や廃液(ビナス)を利用したバイオエタノール製造に加え、これらの残渣や家畜ふん尿を利用したバイオメタン製造プロジェクトに対してもCBioが発行されるため、新たな収益源として投資を促進しています。

インド・タイの都市ごみメタネーション

インドタイをはじめとするアジアの多くの国では、急増する都市ごみ(MSW)の適切な処理が喫緊の課題です。

これらの国々では、廃棄物発電(焼却)に加え、分別された有機性廃棄物を原料とするメタネーション(メタン発酵)プラントの導入が、廃棄物減量とエネルギー回収の両面から注目されています。

インド中部インドール市では、2022年にアジア最大級とされるMSW由来のBio-CNG(圧縮バイオメタンガス)プラントが稼働を開始し、市バス等の燃料として利用されています。

タイでも、食品工場排水やMSWを利用したバイオガス発電・バイオメタン製造プロジェクトが政府の支援を受けて増加しています。

日本国内のバイオガスプラント普及状況と政策支援

バイオガスプラントは日本でも再生可能エネルギー源、および地域資源循環の担い手として期待されていますが、ヨーロッパ諸国とくらべると
普及はまだ限定的です。

国内のプラント導入数・発電量の推移と地域分布

環境省や農林水産省の調査によると、日本国内で稼働中のメタン発酵によるバイオガス化施設(下水汚泥、廃棄物系、家畜ふん尿系)は、2022年度時点で約400~500箇所程度と推計されます。

特に北海道の酪農地帯では家畜ふん尿を利用したプラントが多く見られます。発電設備容量の合計は約150~200MW程度と推定され、FIT制度開始以降、増加傾向にはありますが、ポテンシャルに対して導入はまだ十分に進んでいない状況です。(出典:環境省、農林水産省関連資料より推計)

FIT/FIP制度や関連補助金などの政策

日本のバイオガスプラント導入を支える主な政策は、FIT(固定価格買取制度)および2022年度から導入されたFIP(Feed-in Premium)制度です。

これにより、バイオガス発電による電気は、一定期間、国が定める価格で電力会社が買い取ることが保証(FIT)またはプレミアムが付与(FIP)され、事業の採算性確保に寄与しています。

加えて、環境省や農林水産省などが、施設整備に対する補助金制度を設けており、初期投資負担の軽減を図っています。

日本特有の課題(原料確保、コスト、地域合意形成)

日本での普及を阻む課題としては、以下のような点が挙げられます。

  • 原料の確保と輸送:家畜ふん尿や食品残渣などが地域に分散しており、収集・運搬コストがかかる。特に小規模な発生源からの効率的な収集システム構築が課題。
  • 建設・運営コスト:欧州と比較してプラント建設費や運営費が高くなる傾向がある。特に小規模プラントではスケールメリットが出にくい。
  • 地域住民の理解と合意形成:プラント建設に対する臭気や安全性への懸念から、地域住民の理解を得るプロセスが重要となる。
  • 消化液の利用先確保:生成される消化液を肥料として利用するための農地へのアクセスや、需要と供給のマッチングが課題となる場合がある。

これらの課題解決に向け、技術開発によるコストダウン、効率的な原料収集システムの構築、地域との丁寧なコミュニケーションなどが求められています。

発酵効率向上の技術と乾式/湿式ダイジェスター・PSA精製

バイオガスプラントの経済性と適用範囲を向上させるため、中核技術である嫌気性消化プロセスと、生成ガスの高付加価値化を実現する精製技術は進化を続けています。

発酵効率向上に貢献する技術(高温・乾式・二相発酵等)

より短時間で多くのバイオガスを生成するため、発酵プロセス自体の効率化が進められています。

  • 高温発酵:中温発酵(35-40℃)より高い温度(50-55℃)で発酵させることで、反応速度を高め、発酵時間を短縮する。病原菌の殺菌効果も高い。
  • 乾式メタン発酵:含水率の低い固形有機物(刈草、剪定枝、分別された生ごみなど)を対象とした発酵技術。
  • 二相発酵:酸生成段階とメタン生成段階を別々の槽で行うことで、それぞれの微生物に適した環境を最適化し、全体の効率を高める。
  • 添加剤・共基質利用:発酵を促進する微生物資材や、異なる種類の原料(共基質)を混合投入することで、発酵効率や安定性を向上させる。

高固形分を処理する乾式嫌気性消化の進化

含水率の高い液体状の原料(家畜ふん尿、下水汚泥など、全固形分濃度TS: 15%以下)に適した湿式嫌気性消化に対し、分別収集された生ごみや刈草、食品残渣など、固形分濃度が高い(TS: 20-40%程度)原料を効率的に処理できる乾式嫌気性消化技術が実用化され、その適用が広がっています。

代表的なプロセス(例:Dranco, Kompogas, Valorgaなど)は、プラグフロー型やバッチ式など様々な形式があります。

加水量を最小限に抑えることで、消化槽容量の縮小、高濃度消化液の生成、排水処理負荷の軽減といったメリットをもたらし、都市ごみ処理分野などで導入が進んでいます。

PSA・膜分離によるバイオメタン化

バイオガス(メタン約60%, CO2約40%)からCO2や不純物を除去し、メタン濃度を95%以上に高めて天然ガス代替として利用可能なバイオメタンを製造する技術は、プラントの高付加価値化に不可欠です。

従来の水洗浄法や化学吸収法に加え、近年では運転コストやメンテナンス性に優れる圧力変動吸着法(PSA)膜分離法が主流技術となっています。

PSAは吸着剤(活性炭、ゼオライト等)を用いてCO2を選択的に吸着・脱離させ、膜分離法はメタンとCO2の膜透過性の違いを利用します。

両技術ともに、メタン回収率の向上やエネルギー消費量の削減に向けた改良が続けられています。

デジタルツインとAI最適制御の導入事例

プラント運転の効率化と安定化、省力化を目指し、デジタル技術の導入が進んでいます。

各種センサーから得られるリアルタイムデータ(温度、pH、ガス成分、流量など)をIoTプラットフォームで収集・分析し、AI(人工知能)が原料投入量や攪拌、温度などを最適制御するシステムが実用化されつつあります。

また、プラントの物理的な挙動を仮想空間に再現するデジタルツイン技術を活用し、運転シナリオのシミュレーションによるリスク評価や、オペレーターの訓練、予知保全によるダウンタイム削減を図る取り組みも始まっています。

これにより、経験豊富なオペレーターへの依存を減らし、より高度な運転管理が可能になります。

世界のバイオガス市場規模と成長予測

世界のバイオガス市場は、各国の脱炭素政策、エネルギー安全保障への関心、そして循環型経済への移行というメガトレンドに乗り、今後も持続的な成長が見込まれます。

各種市場調査レポート(例:IEA, IRENA, BloombergNEF, Frost & Sullivanなど)を総合すると、2023年の市場規模は約650~700億米ドルと推定され、2024年から2035年にかけて年平均成長率(CAGR)5~7%で拡大し、2035年には1,500億ドルを超える規模に達するとの予測が示されています。

原料別シェア 食品廃棄物・下水汚泥・エネルギー作物

原料ソース別に見ると、歴史的に農業系バイオマス(家畜ふん尿、作物残渣)が大きな割合を占めてきましたが、今後は都市化の進展に伴い、食品廃棄物および下水汚泥の利用が、特にアジアや北米市場の成長を牽引すると予測されます。

食品ロス削減の観点からも、食品廃棄物のエネルギー転換は重要性を増しています。エネルギー作物は、食料との競合や持続可能性への懸念から、特に欧州では利用が伸び悩む一方、土地利用が可能な地域では依然として重要な選択肢です。

廃棄物処理インフラとしての役割が、市場の原料構成に影響を与えています。

原料別バイオガスプラントの動向(推定)

原料カテゴリ現状の主な利用地域今後の成長ドライバー
農業廃棄物欧州、中国、北米大規模畜産、メタン排出規制
食品廃棄物欧州、北米、東アジア都市化、食品ロス削減政策、廃棄物処理費高騰
下水汚泥全世界(都市部)下水道普及率向上、エネルギー自立型下水処理場
エネルギー作物ドイツ、米国、ブラジル政策支援(地域限定的)、土地利用可能性

用途別需要 発電・熱併給・モビリティ燃料

バイオガスの利用形態としては、発電および熱電併給(CHP)が主流ですが、政策的な後押しもあり、バイオメタンとして精製し利用する需要が急速に伸びています。

特に、天然ガスインフラが整備されている地域では、ガスグリッドへの注入が効率的な利用法として注目されています。

また、運輸部門の脱炭素化要求に応える形で、輸送用燃料(Bio-CNG/Bio-LNG)としての利用が、欧州、北米、インドなどで拡大しており、今後の大きな成長ドライバーと目されています。

一部では水素製造の原料としての利用も検討されています。

世界のバイオガス発電設備容量(2022年末推定)

地域設備容量 (MW)主要国
欧州約 11,800ドイツ, イタリア, イギリス, フランス
アジア約 7,000中国, タイ, インド
北米約 2,800アメリカ, カナダ
その他約 1,400ブラジルなど
合計約 23,000

(出典:IRENA, World Bioenergy Associationなどのデータを基に推定)

地域別成長予測 欧州・北米・APAC

地域別では、ヨーロッパが最大の市場シェアを維持しつつも、成熟市場として安定成長(CAGR 4-6%)に移行すると見られ、政策主導のバイオメタン化が成長を支えます。

北米は、RFS(米国)やクリーン燃料基準(カナダ)などの政策に支えられ、堅調な成長(CAGR 5-7%)が予測されます。

最も高い成長が期待されるのはアジア太平洋(APAC)地域(CAGR 7-9%)であり、中国、インド、東南アジア諸国におけるエネルギー需要増、廃棄物処理ニーズ、政府の積極的な導入支援がその背景にあります。

中南米、アフリカも潜在的な成長市場として注目度が高まっています。

バイオガスの規制・インセンティブ比較

バイオガスプロジェクトの事業性は、各国の規制や導入支援策(インセンティブ)に大きく左右されます。国や地域によって制度が異なるため、投資判断には詳細な比較検討が不可欠です。

税制優遇・FIT/FIP・RPSの最新トレンド

主要な支援制度には以下のようなものがありますが、その内容は常に変化しています。

  • 買取制度 (FIT/FIP):ドイツ、日本などで導入。近年はコスト効率化のため入札制への移行や、市場価格に連動するFIPへのシフトが進む。買取価格の低下傾向も見られる。
  • 義務化制度 (RPS/RFS):米国(州レベル)、英国(輸送燃料)、ブラジル(RenovaBio)などで導入。再エネ導入やバイオ燃料混合を義務付け、需要を創出。
  • 税制優遇:米国(ITC/PTC、インフレ抑制法IRAで拡充)、カナダなど。設備投資や生産量に応じた税額控除が大きなインセンティブ。
  • 設備補助金:各国で初期投資負担軽減のために実施されているが、財政状況により変動。

(2025年4月時点の考察)全体的に、政策支援は「量」から「質」へ、すなわちコスト効率性や持続可能性基準(GHG削減効果、原料調達)を重視する方向へシフトする傾向が見られます。

炭素クレジット市場とメタン排出削減価値

バイオガスプラントによるメタン(CH4)排出削減は、地球温暖化係数(GWP)が高いため、CO2削減以上に炭素クレジット市場で高く評価される可能性があります。

国際的な枠組み(パリ協定6条市場など)や、各国の排出量取引制度(EU-ETS、カリフォルニア州など)、ボランタリー市場において、創出されたクレジットを売却することで、プロジェクト収益の向上が期待できます。

クレジット価格の変動リスクはありますが、メタン削減価値への注目度は高まっており、重要な収益ドライバーとなり得ます。

サーキュラーエコノミー指標との整合性

EUを中心に進められているサーキュラーエコノミー(循環経済)政策は、廃棄物ヒエラルキー(発生抑制>再利用>リサイクル>エネルギー回収>処分)を重視します。

バイオガス化は、有機性廃棄物を資源(エネルギー、肥料)としてカスケード利用する点で、サーキュラーエコノミーの原則に合致しています。

EUタクソノミーなどのサステナブルファイナンス基準においても、バイオガス事業は「気候変動緩和」や「循環経済への移行」に貢献する活動として分類され、投融資を受けやすくなる可能性があります。

事業計画において、資源効率性、廃棄物削減貢献度、消化液の有効利用率などを定量的に示し、政策との整合性をアピールすることが重要です。

バイオガスプラントのGHG排出削減効果

バイオガスが広まるにつれ、バイオガスプラントの価値は単にエネルギーを生み出すだけでなく、地球温暖化防止にも貢献する点にあることが認識されるようになりました。

家畜ふん尿や有機性廃棄物を適切に管理せず放置すると、強力な温室効果ガスであるメタン(CH4)が大気中に放出されます。

バイオガスプラントは、このメタンを回収してエネルギーとして利用するため、直接的なGHG排出削減効果があります。

さらに、発酵後の消化液(残渣)を化学肥料の代替として農地に還元することで、化学肥料の製造・輸送に伴うエネルギー消費とCO2排出を削減し、間接的なGHG削減効果も生まれます。

メタン排出削減宣言(GMI)とバイオガスの国際連携

2021年のCOP26で発足し、160カ国(2025年現在)が参加する「グローバル・メタン・プレッジ(Global Methane Pledge)」は、2030年までにメタン排出30%削減目標を掲げており、各国のメタン削減政策を加速させる国際的な推進力となっています。

この目標達成において、特に廃棄物分野と農業分野からのメタン排出削減ポテンシャルが大きいバイオガス化技術への期待は高く、GMI(Global Methane Initiative)などの国際パートナーシップを通じた技術移転やベストプラクティスの共有、資金協力がさらに強化されるでしょう。

これにより、途上国を含めたバイオガスプラントの世界的な市場拡大が進むと考えられます。

バイオガスの合成燃料(e‑Fuel)利用

再生可能エネルギー由来の水素とCO2から製造されるe-Fuel(合成燃料)は、将来の脱炭素エネルギーシステムにおいて重要な役割を担うと期待されています。

バイオガスプラントは、このe-Fuel製造プロセスと高い親和性を持ちます。バイオガス精製時に分離される高純度のバイオジェニックCO2は、e-Fuel合成の理想的な炭素源となりえます。

また、バイオメタンを水素に改質したり、あるいはバイオガスプラントに隣接して水電解装置を設置し、生成したグリーン水素とバイオジェニックCO2からe-Fuel(特にe-Methane)を製造するハイブリッドシステムは、インフラや用地の共有、エネルギーの相互利用により、効率性と経済性を高める可能性があります。


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