アメリカバイオガス協会(American Biogas Council, ABC)が、州別のバイオガス生産量の現況や、潜在的生産量を示すインタラクティブマップを公開しています。
American Biogas Council:American Biogas Council Releases New Data Showing Biogas Systems’ Capacity to Capture Energy from Waste, Reduce Pollution in Every State
このデータによると、アメリカ国内の潜在的なバイオガス生産量が実現された場合、年間2,550億kWhの発電能力があると試算されており、テキサス州とカリフォルニア州の全てを合わせた世帯数に電力を供給できます。
米国バイオガス協会のインタラクティブマップ
このインタラクティブマップでは、全米50州のバイオガスに関するデータが閲覧可能で、表示したい州をクリックすると、現状のバイオガス生産量や潜在的生産量のデータが表示されます。
American Biogas Council:Biogas State Profiles
このマップでは、現在稼働しているバイオガス設備や、利用可能なバイオマス原料、潜在的なRNG(再生可能天然ガス)の生産、電力、熱、投資、雇用、温室効果ガス削減のデータなどを見ることが出来ます。
バイオガス生産量は、埋立処分場、農業廃棄物、食品廃棄物、下水処理場の各項目ごとに分類されています。
全米トップのカリフォルニア州では、すでに年間921億立方フィート(Bcf)のバイオガス生産能力があり、潜在的生産量はその5倍となる4105億立方フィートとなっています。
これは年間283億立方フィートの再生可能天然ガス(RNG)に精製可能で、これはカリフォルニア州の天然ガス消費量のおよそ14%に相当します。
American Biogas Council:米国バイオガス市場の概況
潜在的バイオマス資源活用のメリット
アメリカでは、食品廃棄物、農業(家畜の糞尿)、廃水処理場などから年間1兆トンを超えるバイオマス資源が発生し、大部分が未利用のまま廃棄されるか、温室効果ガスとして大気に放出されています。
バイオガス資源の活用は、これらの課題を解決するための革新的な技術となります。
潜在的なバイオマス資源を活用できれば、電力や燃料などのエネルギーとして利用するだけでなく、さらに地方の雇用、農業廃棄物利活用、温室効果ガス削減にも貢献します。
米国バイオガス協会は、バイオガスが気候変動対策、エネルギー自給率の向上、そして持続可能な循環型経済の「切り札」であることを強調しています。
アメリカの潜在的なバイオガス資源とその効果
アメリカでは現在2,500のバイオガス施設が稼働していますが、潜在的データではその8倍となる17,500か所の施設を稼働させることができます。
経済効果と雇用創出
潜在的バイオガス資源の活用により、約70万人の短期雇用と4万6000人の恒久的な運営・維持管理雇用を創出できます。これは地方経済の活性化に大きく貢献します。
環境改善効果
新たに17,500か所のバイオガス施設を稼働させると、年間で自動車2,560万台分に相当する温室効果ガス排出量を削減できます
クリーンエネルギー供給
潜在的バイオガス資源をエネルギー換算すると、アメリカ家庭1,310万世帯に電力を供給できます。また、年間117億ガロン(約443億リットル)のディーゼル燃料を代替できます。
米国バイオガス協会の政策提言
米国バイオガス協会のパトリック・サーファス事務局長は、「バイオガスは単なる未来の技術ではなく、現実に利用可能なソリューションだ」と述べています。
今回のデータ公表は、連邦政府や州政府、地方自治体の政策立案者に対し、バイオガス産業の成長を加速させるための具体的な政策支援を求めるメッセージとなっています。
米国バイオガス協会は、バイオガスプロジェクトの許認可プロセス支援や、投資税額控除などのインセンティブ拡充などを通じて、潜在的バイオガス資源を活用するための環境整備を訴えています。
米国バイオガス協会:American Biogas Council