横須賀市のし尿・浄化槽汚泥を三浦バイオマスセンターでメタン発酵へ

横須賀市と三浦市が廃棄物処理で提携

横須賀市と三浦市は2026年7月24日、2020年2月から続けてきた一般廃棄物の広域連携をさらに拡大するため、本格的な検討を開始すると発表しました。

三浦市:横須賀市・三浦市の廃棄物処理広域化の拡大について(令和8年7月24日公表)

注目すべきは、横須賀市で発生するし尿および浄化槽汚泥を、三浦市内でメタン発酵によるエネルギー回収を行う「三浦バイオマスセンター」へ搬入する方針が示された点です。

焼却施設と不燃ごみ等選別施設、最終処分場を相互利用してきた従来の広域化とは性格が異なり、有機性廃棄物をエネルギー資源として位置付ける枠組みを構築します。

横須賀市・三浦市の廃棄物処理広域化とは?

横須賀・三浦両市の広域化は、今回突然始まったものではありません。

2008年12月、両市長が可燃ごみ・不燃ごみ・粗大ごみを対象とする基本合意書を交わし、2009年3月には「横須賀市三浦市ごみ処理広域化基本計画」を策定しました。

焼却施設を持たない三浦市に最終処分場を建設し、最終処分場を持たない横須賀市には、焼却施設と不燃ごみ等選別施設を建設して、互いに利用するというものです。

補い合う関係から処理物ごとの機能分担へ

横須賀市リサイクルプラザ アイクル

第1段階の広域化は、施設用地と財源の制約を解決するための補完関係でした。今回の拡大は、その目的が一段進んでいます。

三浦市が排出するプラスチック製容器包装は、分別基準を横須賀市のプラスチック資源と同じ水準に変更したうえで、横須賀市のリサイクルプラザ「アイクル」で処理します。

逆に、横須賀市が排出するし尿・浄化槽汚泥は、三浦市のバイオマス施設で処理します。処理物ごとに最も適した施設へ振り分けるという「機能分担」の考え方が、前面に出た形です。

し尿処理施設が単独では維持しにくい構造的な理由

今回の判断の背景には、し尿処理を取り巻く全国共通の構造問題があります。

下水道の普及に伴い、し尿・浄化槽汚泥の収集量は減少が続いており、横須賀市の下水道普及率は、すでに約98%に達しています。

行政の課題も下水道の新規整備から、既存インフラの維持・更新へと移りました。

その一方で、三浦市の下水道普及率は約36%(令和6年度末)にとどまり、普及が進んでいない西部・南部では、し尿・浄化槽汚泥の処理が必要となっています。

横須賀市とは対照的な状況であり、三浦市に大規模な処理施設が置かれている理由でもあります。

加えて、全国のし尿処理施設では、搬入量の減少や浄化槽汚泥の混入率上昇による処理効率の悪化、設備の老朽化に伴う処理機能の低下が指摘されてきました。

こうした装置産業型の設備は、処理量が減るほど単位当たりのコストが上昇します。そのため、近隣の既存施設へ集約するほうが合理的になります。

三浦バイオマスセンターとは し尿をバイオガスに変える仕組み

搬入先となる三浦バイオマスセンター(三浦市南下浦町毘沙門)は、三浦地域資源ユーズ株式会社が運営する資源循環型施設で、国の交付金を受けて建設されました。

前身は三浦市衛生センターで、老朽化に伴う建て替えにあたり、三浦市と三浦商工会議所の呼びかけによって2006年に同社が設立されました。

三浦地域資源ユーズ株式会社:三浦地域資源ユーズホームページ

建設は三井造船環境エンジニアリング(当時)が受注し、2010年11月から稼働しています。

湿式中温メタン発酵による多品目の混合処理

農産物残渣 三浦市のだいこん

技術面の特徴は、し尿・浄化槽汚泥だけでなく、地域の農水産残渣を一緒に処理する混合発酵にあり、三浦市の特産である大根やスイカなどの農産物残渣や、加工後の小魚などの水産残渣も処理しています。

し尿・浄化槽汚泥のみを扱う従来型の施設と比べると、投入物の有機物量が増えるため、ガス発生量を確保しやすくなります。

参考記事:発酵槽・消化槽の種類と構造

三浦バイオマスセンターの概要

項目計画値
し尿・浄化槽汚泥65kL/日
農作物収穫残渣約20t/日
水産残渣約0.5t/日
公共下水道汚泥等約4t/日
発酵方式湿式中温発酵
バイオガス発生量1,000Nm³/日(メタン濃度60%)
発電量600kWh/日(計画量)
敷地面積11,450m²

発生したバイオガスは、ガスエンジン発電機とボイラで電気と温水に変換され、施設の運転に使われます。

処理施設であり肥料工場でもある設計

発酵後の残渣は堆肥化され、「Mバイオ・たいひくん」の名称で汚泥発酵肥料として肥料登録されています。

生産量は1日平均1.4トンで、窒素とリン酸分が比較的多く、葉物野菜に向くとされ、神奈川県の「かながわリサイクル製品認定制度」の認定も受けています。

施設ではエネルギー回収だけでなく、発酵後の固形分を堆肥化して、窒素・リンを地域の農地へ戻す養分循環まで組み込んでいます。

し尿・浄化槽汚泥の受け入れ余力

横須賀市の生活排水処理基本計画によると、し尿・浄化槽汚泥の排出量は2020年度実績の13,523kLから、2025年度に11,100kL、2029年度には7,700kLまで減少すると予測されています。

横須賀市:生活排水処理基本計画(令和4年3月改定)

三浦バイオマスセンターの計画受入量65kL/日に対し、横須賀市分は直近で約37kL/日です。すでに受け入れている三浦市分は公表されていませんが、これを加えると計画値に迫る可能性があります。

一方で、横須賀市分は今後数年でさらに3割程度減る見通しであり、余力が生まれます。計画受入量に対してどこまで上乗せできるかは、既存施設を活用した広域連携が成立するかどうかを左右します。

今後の方針と三浦半島全体への波及

両市は「早期実現に向けて協力して取り組む」としており、広域処理は本格的な検討に入ります。

今後は三浦市からエコミルへの搬入方法の最適化とあわせ、アイクル・三浦バイオマスセンターへの搬入ルート、搬入時間帯、関係機関との連携強化を詰めていく方針です。

周辺自治体でも再編が同時進行しており、逗子市では当初予定の1年8ヶ月後となる2026年11月から、葉山町クリーンセンターへの生ごみ搬入を開始する方針を固めました。

その遅れの影響で、鎌倉市が横須賀市へ生ごみ処理を依頼する事態も生じました。

タウンニュース:逗子市、生ごみ搬入11月開始 葉山町クリーンセンターめぐり | 逗子・葉山

生ごみバイオガス化を見送った横須賀市 既存施設の活用へ

ここで振り返っておきたいのが、生ごみバイオガス化を見送った横須賀市自身の経緯です。

同市は議会や審議会での検討を経て、2010年8月に「横須賀方式」による生ごみバイオガス化施設の導入を見送っています。

横須賀市:計画の概要|横須賀市

「横須賀方式」とは、生ごみ分別という市民負担を伴わず、燃せるごみから生ごみを効率的に機械選別して、バイオガスを生産する方式です。

その横須賀市では、隣接自治体の既存メタン発酵施設を使うという形で、バイオガス化のメリットを取り込もうとしています。ただし、開始時期や受入量は現時点で公表されていません。

単独整備のハードルが高い自治体にとって、既存施設との広域連携は現実的な判断となりえます。

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