東京ガスは2026年7月21日、横浜市で2027年3月に開幕する国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」において、横浜市の出展施設への協賛契約を同市と締結しました。
東京ガス横浜テクノステーションで製造したe-メタン由来の環境価値を、「クリーンガス証書」を通じて都市ガスに移転し、その都市ガスを発電効率63%の高効率燃料電池(SOFC)に投入して発電します。
e-メタンの製造から、環境価値の証書化・移転、都市ガスによる発電、そして横浜市の発信拠点での電力利用(施設電力の一部)までを、一連の仕組みとして実装する計画です。
東京ガス:GREEN×EXPO 2027 横浜市出展への協賛について
GREEN×EXPO 2027 SOFC発電の仕組み

GREEN×EXPO 2027は、2027年3月19日から9月26日まで、横浜市の旧上瀬谷通信施設で開催されます。
横浜市:横浜グリーンエクスポ 横浜市出展「建物空間を活用した発信拠点」
東京ガスはグループ3社とともに、Urban GX Village内に出展される横浜市の「建物空間を活用した発信拠点」に協賛します。
高効率燃料電池の設置・運転・保守に加え、会場までのガス管の敷設や維持管理も東京ガスグループが担当します。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 1. e-メタン製造 | 横浜テクノステーションで回収CO₂などを原料にe-メタンを製造 |
| 2. 環境価値の証書化 | e-メタン由来の環境価値をクリーンガス証書として認証・発行 |
| 3. 環境価値の移転 | クリーンガス証書を通じて会場で使用する都市ガスに環境価値を移転 |
| 4. SOFC発電 | 環境価値を付与された都市ガスを高効率燃料電池で発電 |
| 5. 電力利用 | 発電した電力を横浜市の発信拠点で使う電力の一部に充当 |
会場へ物理的に供給されるのは通常の都市ガスであり、横浜テクノステーションからe-メタンそのものをパイプライン等で直接輸送するわけではありません。
e-メタンが持つ環境価値を証書として切り離し、会場で消費する都市ガスへ紐付ける(移転する)点が運用のポイントです。
具体的な展示内容については、今後、横浜市と東京ガスグループの協議を経て決定されます。なお、東京ガスは発表資料の協賛概要において、クリーンガス証書の使用を「予定」と位置づけています。
参考記事:e-メタン(合成メタン)とは? 作り方や課題・バイオメタンとの違い
大阪・関西万博との違い 環境価値と証書の使い方

今回の取り組みを理解するうえで参考になるのが、2025年の大阪・関西万博で実施されたe-メタン実証との対比です。
大阪ガスは万博会場内の実証拠点「化けるLABO」で、会場内の生ごみ由来バイオガスに含まれるCO₂や、DAC(直接空気回収)、排ガス、日本館バイオガスプラントなどから回収したCO₂とグリーン水素を原料に、7Nm³/hのe-メタンを製造しました。
参考記事:大阪ガス「化けるLABO」が大阪・関西万博で稼働開始
製造されたe-メタンは、迎賓館の厨房やガスコージェネレーション設備などで直接利用されました。
これに対し、GREEN×EXPO 2027では会場外の横浜テクノステーションでe-メタンを製造し、ガス自体ではなくその環境価値をクリーンガス証書によって会場側へ移転して利用します。
| 項目 | 大阪・関西万博 | GREEN×EXPO 2027 |
|---|---|---|
| e-メタン製造場所 | 会場内の化けるLABO(オンサイト) | 会場外の横浜テクノステーション(オフサイト) |
| 現物のe-メタンの利用 | 迎賓館厨房・ガスコージェネレーション | なし(環境価値のみ移転) |
| 証書の活用 | 会場に供給する都市ガス全体に、全国のe-メタン・バイオガスの証書を割り当て | 横浜テクノステーション製e-メタンの証書を、展示施設のSOFC発電に充当 |
なお、大阪・関西万博においても、会場内製造分の利用とは別に、他地域で製造されたe-メタンやバイオガスのクリーンガス証書を、会場に供給する都市ガスに移転するスキームが併用されていました。
発電効率63%を誇るSOFC「FC-6M」の特徴
会場に導入される高効率燃料電池は、東京ガスと三浦工業が共同開発した固体酸化物形燃料電池(SOFC)システム「FC-6M」です。
東京ガス:高効率燃料電池システム
東京ガスが培った「SOFCスタックの二段化」技術と「燃料再生プロセス」を組み合わせることで、交流送電端ベースで63%という高効率な発電性能を達成しています。
これは一般的なSOFCシステムが持つ発電効率(50〜55%程度)を大きく上回る水準です。
定格出力は1台あたり5.8kWで、複数台の連結運転により最大8台・約46kWまで容量を拡張できます(2026年度から対応予定)。
FC-6Mは、排熱を利用しなくても省エネやCO₂削減に貢献できる、発電専用の「モノジェネレーション」システムとして設計されています。
熱需要の小さい展示施設でも、証書で環境価値を移した都市ガスを効率よく電気に変えられる点が、今回の用途に適しています。
クリーンガス証書でe-メタンの環境価値を移転する仕組み

クリーンガス証書とは、e-メタンやバイオガスが持つ「燃焼させても大気中のCO₂を実質的に増やさない環境価値」を、物理的なガスから切り離して移転できるようにする仕組みです。
認定を受けた製造設備でつくられたガスについて、クリーンガス証書評価委員会が相当量を認証し、その量に応じた証書が発行されます。
証書は物理的なガスの流れとは独立して移転できるため、製造拠点と利用場所が離れていても、専用の輸送インフラなしで環境価値を届けられます。
クリーンガス証書評価委員会:クリーンガス証書評価委員会
e-メタン由来の証書を山下公園通りのガス灯で活用
横浜市と東京ガスは2024年10月、横浜テクノステーションで製造したe-メタンに由来するクリーンガス証書を用いて、山下公園通りのガス灯に環境価値を移転しました。
e-メタン由来の証書による環境価値の移転は、これが日本初となります。
東京ガス:日本初、e-メタン由来のクリーンガス証書で環境価値を移転します
GREEN×EXPO 2027では、この実績をベースに、ガス灯による「熱・燃焼利用」からSOFCを介した「高効率な電力利用」へと適用領域を拡張する形となります。
大阪・関西万博では会場全体の都市ガスに全国から集めた証書を割り当てましたが、今回は特定の製造拠点で生まれた環境価値を、特定の展示電源に結び付けて来場者に見せる点が特徴です。
また、大和ハウス工業も食品残さ由来のバイオガスから、常温で合成したバイオメタノールを会場へ運び、冷風設備の発電に使う実証を行います。
証書で環境価値を移す東京ガスに対し、自社製の燃料を現物で持ち込む点が対照的です。
参考記事:バイオガスを常温でバイオメタノールに 大和ハウスが発電実証へ
横浜テクノステーションでは、下水の消化ガスに含まれるCO₂をe-メタンの原料にする実証も行われてきました。バイオガスとe-メタンをつなぐ拠点としても、今後の展開が注目されます。
東京ガス:下水道施設で発生する再生水と消化ガスを活用したe-メタン製造実証を開始
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