UAE(アラブ首長国連邦)のバイオマテリアル企業Emirates Biotechと、UAE大学(UAEU)は2026年9月17日、食品廃棄物とコンポスタブル包装を一体処理するパイロットプロジェクトを発足させました。
アルアインに日量最大40kgの設備を設置し、嫌気性消化でバイオガスを回収した後に消化残さを堆肥化します。期間は2028年8月までの2年間で、2027年8月までに据付と試運転を完了させる計画です。
埋立処分と比べて、大規模化した場合はCO₂排出量を89%削減できる可能性があるとしています。
WAM(Emirates News Agency):UAE launches first organic waste-to-biogas pilot plant
食品廃棄物とコンポスタブル包装を一体処理するUAE初の実証

このプロジェクトの特徴は、食品廃棄物に混ざったコンポスタブル包装も分別せずに投入し、バイオガスと堆肥へ一体的に資源化する点です。
嫌気性消化でバイオガスを回収し、消化残さは堆肥化処理します。2年間の実証を通じて、処理性能・環境負荷・経済性を多角的に評価し、将来の大規模プラント設計に向けた技術・運転指針を策定します。
発足式には、アブダビの廃棄物管理会社Tadweer Groupや、中東最大級の食品包装メーカーHotpackなど6者が同席しましたが、プロジェクト上の役割は公表されていません。
なお「UAE初」となるのは、食品廃棄物とコンポスタブル包装を混合し、嫌気性消化と堆肥化を組み合わせた「統合型」パイロットプラントです。
ドバイのワルサン下水処理場では、すでに下水汚泥を活用したバイオガス発電設備が2023年5月から稼働しています。
Government of Dubai Media Office:Dubai announces completion of biogas-to-energy project at the Warsan Wastewater Treatment Plant
参考記事:食品リサイクル法とフードロス発電とは? 食品廃棄物バイオガス発電による資源循環
コンポスタブル包装を嫌気性消化と堆肥化で処理

コンポスタブル包装の代表的な原料であるポリ乳酸(PLA)は生分解性を持つ一方で、一般的なメタン発酵槽内では短期間で分解されるとは限りません。
学術誌「Journal of Hazardous Materials」の先行研究によると、PLAの中温嫌気性消化による分解は極めて緩慢であり、高温条件で大幅に促進されると報告されています。
ただし、実プラントでは滞留時間に制約があるため、運転条件次第では未分解物が残存するリスクがあります。
Journal of Hazardous Materials:Active microbial communities during biodegradation of biodegradable plastics by mesophilic and thermophilic anaerobic digestion
後段の堆肥化で消化残さを処理
今回の実証は、嫌気性消化の後段に堆肥化をつなげて、消化残さを堆肥にする構成です。消化槽で分解しきれなかったPLAの受け皿になり得る構成です。
ただし、発酵温度、滞留時間、PLAの混入割合などは現時点では公表されていません。どの程度まで嫌気性消化で分解し、後段の堆肥化でどこまで処理できるかが技術評価のポイントになります。
日本では大阪ガスなどが、廃棄PLAを前処理で乳酸へ分解してから、下水処理場の消化槽へ投入する方法を検証しています。
前処理によって分解を促進する日本の実証に対し、UAEでは嫌気性消化と堆肥化を組み合わせる点に、設計思想の違いが見られます。
参考記事:廃棄バイオプラスチックからバイオガス製造 大阪ガス・大阪公立大学・大阪市と連携
UAEが食品廃棄物と包装の一体処理を進める背景

今回の実証の背景には、埋立処分への依存を減らす政策と、食品で汚れた包装のリサイクルが難しいという課題があります。
UAEでは一般廃棄物の約40%を食品廃棄物が占め、その大部分が埋立処分されています。
また、食品残さで汚れた従来のプラスチック包装はリサイクルが難しく、食品廃棄物と包装をまとめて処理できる方法が検討されています。
アブダビ首長国は、2031年までに廃棄物の80%を埋立から転換する目標を掲げています(2026年時点の転換率は34%)。
中核を担うTadweer Groupは、アル・ビフースやアルアインで統合型廃棄物処理施設を整備する計画で、連邦レベルでも国家主導のイニシアティブ「Ne’ma」が、2030年までの食品廃棄物半減を目指しています。
The National:Abu Dhabi to significantly cut landfill use in sweeping waste overhaul
さらに、設置地であるアルアインは、伝統的な灌漑システム「ファラジ」に支えられた農業拠点であることも立地選定の理由となっています。
PLAメーカーEmirates Biotechが実証する狙い
Emirates Biotechは、PLAを製造・販売するバイオマテリアル企業で、アブダビのKEZAD(ハリーファ経済特区)にて大規模生産工場の建設を進めています。
計画規模は第1期で年産8万トン、将来的には第2期と合わせて年産16万トン体制を目指しています。
Emirates Biotech:Emirates Biotech Selects Sulzer technology to Build World’s Largest Polylactic Acid Production Facility
同社のCTOは今回の実証について、コンポスタブル包装を使いながら、廃棄物の埋立回避を進める循環型モデルとしての可能性を示すと述べています。
Emirates Biotechは2025年から、UAEUと共同でPLAの用途や使用後の処理方法に関する研究を進めています。
The National:New UAE organic waste plant puts faith in time-honoured composting methods to boost food security
バイオガスからの水素製造もラボで評価
今回のプロジェクトでは、回収したバイオガスを原料とした再生可能水素の製造適性についてもラボスケールで検証されます。
ただし、製造方式や処理量、エネルギー効率、コストなどは未公表であり、現段階では将来の用途開拓を見据えた基礎的な検討にとどまります。
2027年以降の実証データが大型化の判断材料に
今回のパイロット設備は最大40kg/日の小規模であり、商用化の可能性を判断するには運転データの蓄積が不可欠です。
今後、商用化検証に向けて注視すべきポイントは以下の通りです。
- PLAなどコンポスタブル包装の混入率と分解率
- 嫌気性消化の温度と滞留時間
- 原料1kg当たりのバイオガス発生量とメタン濃度
- 消化後に残る包装素材と堆肥化工程での分解状況
- 生産した堆肥の品質と農業利用の可否
- 埋立比89%削減とするCO₂評価の算定条件
- 大型化した場合の処理コストと設備規模
2027年8月までに設備の据付と試運転を終え、2028年8月までデータ収集と評価を継続する予定です。
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