廃棄物処理を手がける新潟特殊企業(新潟市)は、新潟県阿賀野市の自社施設内に下水汚泥を主原料とするメタン発酵バイオガス発電所を新設し、2026年5月に稼働を開始しました。
新潟特殊企業株式会社:バイオガス発電プラントが竣工いたしました
下水汚泥による発電は下水処理場内で行われるのが一般的ですが、この事業は民間の廃棄物処理業者が処理場の外で汚泥を受け入れて発酵させる点に特徴があります。
投資額は約30億円で、食品廃棄物に依存しない構成を採用し、飲食店が少ない地方部でも成立する発電所モデルの確立を目指しています。
有機性廃棄物を1日最大100トン処理 発電所の概要

同発電所は、周辺の下水処理施設から受け入れた汚泥などを1日最大100トン処理し、年間7,000〜8,000MWhを発電します。日本経済新聞の報道による概要は次のとおりです。
- 所在地:新潟県東部産業団地(阿賀野市)内の「バイオマスエコセンター」
- 発酵槽:半球状メタン発酵槽2基
- 運転条件:粉砕・分別した原料を38℃で30日間発酵
- 年間発電量:7,000〜8,000MWh(一般家庭約2,000世帯分)
- CO₂削減効果:年間約3,800トン(同社推定)
- 売電先:FITを活用し、地域新電力の新潟スワンエナジーへ
日本経済新聞:新潟特殊企業、汚泥活用のバイオガス発電所 超音波技術で効率改善
年間発電量を年間の総時間数で割ると、平均出力は約0.8〜0.9MWと試算されます(編集部試算、定格出力は非公表)。
バイオマスエコセンターは、汚泥や食品残渣の脱水・乾燥・炭化などを行う汚泥処理施設です。
同社は2024年5月、第四北越銀行を主幹事とするシンジケートローンで増設資金を調達し、メタン発酵設備と発電設備を新設しました。
第四北越銀行:シンジケートローンの主幹事獲得について(新潟特殊企業 株式会社)
下水処理場の外で汚泥を集める 場内型との違い

この発電所は、下水汚泥を処理場の外部へ搬出し、民間施設に集約して発酵させる「場外型」です。
国土交通省によると、下水汚泥の約8割は有機分で構成されており、このうちバイオガスや固形燃料などのエネルギーとして利用された割合(下水汚泥エネルギー化率)は2024年度時点で約31%です。
下水汚泥バイオガス発電は処理場内の消化槽で生じるガスを利用する方式が主流で、民間事業者が発電する場合も、自治体から消化ガスを買い取って処理場内に発電設備を設置する形態が一般的です。
参考記事:下水処理場のバイオガス発電 下水汚泥のエネルギー化
処理場内で民間が発電する代表例として、沖縄県の西原浄化センターが挙げられます。
民間の発電事業者が県から消化ガスを買い取って、2023年7月からFIT売電しており(発電能力175kW、年間推定発電量約1,060MWh)、阿賀野市の発電所の年間発電量は、その約7倍規模に相当します。
| 項目 | 場内型(西原浄化センター) | 場外型(新潟特殊企業) | 食品廃棄物型(十和田市) |
|---|---|---|---|
| 事業主体 | 民間の発電事業者 | 廃棄物処理業者 | 廃棄物処理業者 |
| 発電に使う資源 | 消化ガス(処理場内で発生) | 下水処理施設の汚泥など | 食品残渣、有機汚泥など |
| 年間発電量 | 約1,060MWh(推計) | 7,000〜8,000MWh | 約5,250MWh |
| 運転開始 | 2023年7月 | 2026年5月 | 2020年4月 |
沖縄県:公民連携によるバイオガス発電を開始(西原浄化センター)
農林水産省 東北農政局:取組事例 食品廃棄物等によるメタン発酵バイオガス発電(バイオガスエネルギーとわだ)
国内大手が難色 EPCは仏ヴェオリアに
汚泥を主な原料とするプラントの実績がない複数の国内大手メーカーは協業に難色を示し、最終的にプラント全体の設計・調達・建設(EPC)は、水処理世界大手の仏ヴェオリアが担いました。
発電設備の建設工事を請け負ったのは、ヴェオリアグループのヴェオリア・ジェネッツです。キヤノンマーケティングジャパンは、同社から臭気対策の「次亜塩素酸水式脱臭システム」を受注しています。
キヤノンマーケティングジャパン株式会社:バイオガス施設の臭気対策として「次亜塩素酸水式脱臭システム」を受注
超音波技術は汚泥の分解を補う前処理

下水汚泥には微生物菌体である余剰汚泥が多く含まれ、細胞壁に覆われた有機物は、発酵槽内での生分解が進みにくい課題があります。
細胞を超音波等で破砕して、有機物を溶出させる前処理技術は「可溶化」と呼ばれ、ガス発生量を高める有効策の一つです。
同社は超音波技術などによって発電効率を高めたとしていますが、採用した装置の方式や具体的な改善効果は公表されていません。
新潟県内で広がる下水バイオガスの利用先
発電した電力は、新潟スワンエナジーを通じて県内の公共施設や食品工場へ供給されます。
新潟スワンエナジーは、新潟市、JFEエンジニアリング、第四北越フィナンシャルグループが2019年に設立した地域新電力で、清掃工場の廃棄物発電をベース電源に位置づけ、2025年3月時点で708カ所に電力を供給しています。
新潟スワンエナジー:新潟スワンエナジーのご紹介(地域脱炭素フォーラム2025 in 新潟)
新潟県内では、処理場の消化ガスを発電以外の用途に振り向ける動きも進んでいます。県流域下水道では消化ガス利用率が約85%(2023年時点)にとどまり、未利用分を焼却処理していました。
そこで県は2023年6月、新井郷川浄化センターの未利用ガスを三菱ガス化学へ売却する基本協定を締結し、同社新潟工場でバイオメタノール原料として利用されています。
参考記事:三菱ガス化学が下水消化ガスからバイオメタノール製造
また村上市では、開成が食品残渣と下水汚泥を原料とするプラントを2012年に操業し、同年10月から売電しています。
場外型プラントは地方部モデルとして広がるか
同様の「場外型」プラントが他地域へ波及する条件として、原料調達、消化液処理、長期運転実績の3点を考慮する必要があります。
日本有機資源協会も、メタン発酵バイオガス発電の課題として、安定した原料調達と消化液の処理・活用を挙げています。

- 汚泥の調達:周辺の下水処理施設からの受け入れを継続して確保できるかどうか。調達先の施設名や契約形態は公表されていません。
- 消化液の処理:施設には排水処理設備が含まれています。発酵後に残る消化液を肥料として農地で使うか、処理して放流するかによって、運転費が変わります。下水汚泥を原料とする肥料は、重金属の基準などに適合したうえで汚泥肥料として登録する必要があります。
- 長期運転の実績:下水処理場内の消化設備は全国に約300カ所ありますが、民間が処理場の外で下水汚泥を主原料に発酵させるプラントは例が少なく、前処理や臭気対策を含めた運転データが、他地域での導入判断の材料になります。
なお、この事業におけるFIT認定年度や適用買取単価、定格出力、原料に占める下水汚泥の正確な配合比率は公表されていません。
他の自治体や事業者が場外型モデルの採算性を比較するには、これらの数値が判断材料になります。
バイオガスプラントのご相談はお気軽に

プロジェクトの事前調査
事業実現性を検証するため、事業性評価(FS)や各種規制、FIT・FIP、補助金の調査を行います。
バイオガスプラントの設計施工
バイオガスプラントの設計から施工まで、プラント工事に関する関連業務を支援します。
設備・CHPの保守メンテナンス
バイオガスプラントを安定的に運転するため、設備機器やCHPの保守メンテナンスを行います。

