食品廃棄物のメタン発酵によるバイオガス発電事業に携わっていた株式会社西東京リサイクルセンター(東京都羽村市)が事業を停止し、2026年8月13日付で事後処理を弁護士に一任しました。
負債総額は約14億2,400万円にのぼり、近く破産手続開始を申し立てる予定です。
TBS NEWS DIG:【債務超過】創業11年「西東京リサイクルセンター」9.5億超の債務超過で自力再建困難に…事後処理を弁護士に一任 設立当初から営業赤字が続く東京・羽村市【東京商工リサーチ】
メタン発酵ガスのFIT買取価格は39円/kWhと、バイオマス発電の区分では高い水準にありましたが、設立から営業赤字が続いていました。
食品リサイクル制度全体の枠組みは、食品リサイクル法とフードロス発電をご参照ください。
破綻までの経緯 設立から一度も営業黒字にならず
西東京リサイクルセンターは、食品メーカーやスーパーマーケットから食品廃棄物を引き取り、メタン発酵によって減量・減容する中間処理業者です。
2015年8月に、アーキアエナジー株式会社の100%子会社として設立されました。
日量80トンの食品廃棄物を処理できる羽村バイオガス発電所は2020年に完成し、同年8月に産業廃棄物処分業許可を取得して本格稼働に入りました。
株式会社西東京リサイクルセンター:プラントのご紹介 | 株式会社西東京リサイクルセンター
しかし、収益基盤は最後まで固まりませんでした。直近の決算内容は以下のとおりです。
| 項目 | 2025年12月期 |
|---|---|
| 売上高 | 3億6,734万円 |
| 最終損益 | ▲2億7,300万円 |
| 債務超過額 | 9億5,210万円 |
| 負債総額 | 約14億2,400万円 |
売上高の7割を超える最終赤字は、単年度の不振ではなく構造的な問題があったことを示しています。2026年8月には本社も閉鎖されました。
なお、「事業停止」と「破産」は同じ意味ではありません。事業停止は操業を止めた事実を指すのに対し、破産は裁判所の手続きを経て法人格が清算される段階を指します。
この違いは本件で重要な意味を持ちます。後述のとおり、発電設備を保有しているのは運営会社とは別の法人であり、法的整理の対象と設備の動向は必ずしも連動しないためです。
FIT39円でも赤字だった理由 発電所と運営会社は別法人

この案件を読み解くうえで重要なのは、発電所の所有主体と操業主体が分離していた点です。
発電設備を保有していたのは「合同会社羽村バイオガス発電所」という別法人で、報道によれば総事業費は約35億円、地元金融機関やリース会社、事業会社などが出資するSPC(特別目的会社)でした。
一方の西東京リサイクルセンターは、運営会社として廃棄物を受け入れ、メタン発酵で生成したバイオガスをSPC側へ供給する立場にありました。
| 合同会社羽村バイオガス発電所 | 西東京リサイクルセンター | |
|---|---|---|
| 役割 | 発電設備の保有・売電 | 廃棄物の受入・前処理・メタン発酵 |
| 主な収入 | FITによる売電収入 | 廃棄物処理料金、受託運転収入 |
| 主なコスト | 設備投資の回収、金融費用 | 人件費、電力・薬品、排水処理、残渣委託費 |
売電収入FIT39円の帰属先
羽村バイオガス発電所の年間発電量は約850万kWhと見込まれていました。買取価格は2016年度のFIT認定時に決まった39円/kWhで、調達期間は2041年3月までの20年間です。
経済産業省のFIT認定情報によると、認定事業者は合同会社羽村バイオガス発電所です。売電収入はSPC側に帰属するため、運営会社の西東京リサイクルセンターにFIT単価の恩恵はありませんでした。
つまり、高いFIT単価は設備投資を回収する側の採算を支えるものであり、原料調達リスクと日々の運転コストを負う運営会社の採算まで自動的に保証するわけではありません。
収益モデルとファイナンス構造の一般的な考え方は、バイオガスプラントの事業化 初期投資コストと資金調達で整理しています。
なお、2026年度のメタン発酵ガス(バイオマス由来)の調達価格は35円/kWh、調達期間は20年間です(FIT・FIPの用語解説)。
都市型メタン発酵施設の制約

運営会社の収益は、受け入れる廃棄物の量と処理単価に左右されます。ところが羽村バイオガス発電所には、都市部で食品廃棄物を扱うがゆえの制約が重なっていました。
処理単価に天井がある
全国産業廃棄物連合会の調査(2016年度実績)では、食品廃棄物の処理単価は肥料化を100とすると、飼料化185、焼却300となり、再生利用は焼却より安い水準に置かれています。
同調査はメタン化を対象としていませんが、再生利用が焼却より安い水準に置かれる構図は共通しており、メタン化も同じ価格帯での競争を強いられます。
公益社団法人 全国産業廃棄物連合会:食品廃棄物の処理料金に関する調査結果報告書
稼働初期は設備利用率が上がらない
日本有機資源協会は、原料となる食品廃棄物は保管が難しく、施設の稼働後に契約して受け入れることになるため、稼働後およそ3〜4年は設備利用率が低くなると指摘しています。
同発電所が稼働を始めたのは2020年、発電開始が2021年4月で、この立ち上がり期がコロナ禍と重なりました。
一般社団法人日本有機資源協会:資料4 バイオガス発電の自立化に向けた取組について
前処理の負荷と建設単価の上昇
容器包装ごと受け入れる方式は分別・洗浄・破砕の負荷が大きく、発酵不適合物の処分費も生じます。
加えて、建設単価や運転維持費も上昇傾向にあります(建設コストと収益構造/運転・維持コスト)。
消化液は「副産物」ではなく排水処理コストになる

西東京リサイクルセンターは、発電の副産物として発生する固形物を特殊肥料「はむらのちから」として登録し、契約農場に供給していました。
一方で液体分については、公式サイトで「当面は」微生物処理により放流基準値以下まで浄化し、下水へ放流する方針としていました。
液肥として売却できない液体分は、収益源ではなく継続的な排水処理コストとして損益に影響します。
破綻後の食品リサイクル・ループと発電設備
西東京リサイクルセンターは、2024年1月にヤオコーと共同で、食品スーパーとして初となる食品リサイクル法の「再生利用事業計画」の認定を取得しました。
肥料の「はむらのちから」を契約農場で使い、育った農産物を店舗で販売する、バイオガス発電事業では初の食品リサイクル・ループとされた取り組みです。
今回の破綻により、このスキームに参加していた排出事業者は、代替の再生利用先を確保する必要に迫られます。
ただし、発電設備そのものを保有しているのはSPCであり、運営会社が交代して操業が継続される可能性も、設備が休止したままとなる可能性も残されています。
操業を継続する場合は、処理料金と売電収入をどの法人に帰属させ、どの収益源と組み合わせるのかを再構築する必要があります。
一方で、さがみはらバイオガスパワーは隣接する飼料化施設と組み、飼料化に向かない液状の食品廃棄物だけをメタン発酵に回すカスケード型で稼働を続けています。
同じ食品廃棄物を扱っても、収益源の組み合わせ方によって事業の持続性は変わります。












