日本では年間約231万トンもの事業系食品ロスが発生しており、食品関連事業者には食品リサイクル法に基づく食品廃棄物の資源化が求められています。
その有力な選択肢として近年急速に広がっているのが、食品廃棄物をメタン発酵させて電気をつくる「フードロス発電」です。
この記事では一次情報をもとに、食品リサイクル法の制度概要と再生利用等実施率の目標、そして食品廃棄物によるバイオガス発電の仕組み・事例・メリットまで体系的に解説します。
食品廃棄物・食品リサイクルに関する個別の最新事例は、「食品廃棄物・食品リサイクル」の記事一覧からもご覧いただけます。
食品リサイクル法とは 制度の概要
食品リサイクル法(正式名称:食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)は、2001年(平成13年)に施行された法律です。
食品の製造・流通・外食などの過程で生じる食品廃棄物について、発生抑制と再生利用(リサイクル)を進め、最終的な処分量を減らすことを目的としています。
農林水産省:食品リサイクル法
食品リサイクルに対する状況や具体的な取り組みは、以下の資料をご参照ください。
農林水産省・環境省:食品リサイクル法に基づく基本方針等の見直しについて
食品リサイクル法の対象となる事業者

食品リサイクル法の対象となるのは、食品の製造・加工・販売・提供を行う食品関連事業者です。具体的には、次の4業種が中心となります。
- 食品製造業(食品メーカー、加工工場など)
- 食品卸売業(食品商社、卸売市場関連事業者など)
- 食品小売業(スーパー、コンビニ、百貨店など)
- 外食産業(レストラン、ファストフード、給食事業者など)
一般家庭から出る生ごみは食品リサイクル法の直接の対象ではなく、自治体の一般廃棄物として扱われます。
法律が主に規律するのは、あくまで「事業活動に伴って食品廃棄物を排出する事業者」です。
再生利用等の優先順位
食品リサイクル法では、食品廃棄物への対応について次の優先順位が定められています。上位ほど望ましい取り組みとされます。
- 発生抑制(そもそも食品廃棄物を出さない・減らす)
- 再生利用(肥料化・飼料化・メタン化などで資源として活用する)
- 熱回収(再生利用が困難な場合に、エネルギーとして回収する)
- 減量(脱水・乾燥・炭化などで最終処分量を減らす)

再生利用の手法のうち、メタン発酵によるバイオガス化は再生利用に位置づけられ、塩分や油分が多く、飼料化・肥料化が難しい外食系の食品廃棄物でも資源化できる点で注目されています。
再生利用等実施率の業種別目標 2029年度目標
食品リサイクル法では、食品廃棄物の資源化の進捗を測る指標として「再生利用等実施率」が用いられ、業種ごとに目標値が設定されています。
農林水産省:食品廃棄物等の再生利用等の目標について
これは個々の事業者に一律で義務づけるものではなく、その業種全体での達成を目指す目標です。

農林水産省が令和7年(2025年)3月14日に公表した新たな基本方針では、2029年度(令和11年度)までに達成すべき業種別の再生利用等実施率の目標が、次のとおり設定されています。
- 食品製造業:95%
- 食品卸売業:75%
- 食品小売業:65%
- 外食産業:50%
食品製造業は端材や規格外品など均質な廃棄物が多く、再生利用が進めやすい一方、外食産業は店舗が分散し、異物混入や塩分・油分の課題から実施率が伸びにくいという構造的な違いがあります。
このため、再生利用等実施率の目標値にも、業種間で差が設けられています。
再生利用等実施率の計算式
再生利用等実施率は、食品廃棄物の総量のうち、発生抑制・再生利用・熱回収・減量によって適正に扱われた割合を示す指標で、おおむね次の考え方で算出されます。
再生利用等実施率 =(発生抑制量+再生利用量+熱回収量×0.95+減量量)÷(発生抑制量+発生量)
熱回収量に0.95を乗じているのは、食品廃棄物の残さ(灰分に相当する部分)が約5%あり、その分は利用できないことを考慮しているためです。
また熱回収は、省令に定める「熱回収の基準」を満たす場合にのみ算入できます。
2024年改正のポイント
食品リサイクル制度は近年見直しが進み、2024年(令和6年)2月に、基本方針や関連省令の改正が公布されました。主なポイントは次のとおりです。
- エネルギー利用の推進:2050年カーボンニュートラルや温室効果ガス削減目標の達成に向け、食品循環資源の再生利用等を通じた排出削減への貢献が基本方針に明記されました。
- 焼却・埋立て削減目標の参考値化:再生利用が未実施のまま焼却・埋立てされる食品廃棄物を減らす意識を高めるため、削減目標が参考値として設定されました。
- 登録再生利用事業者制度の見直し:再生利用を担う事業者の登録要件(実績要件)が一部緩和されました。
エネルギー利用が制度上も後押しされたことで、メタン発酵によるバイオガス発電(フードロス発電)の重要性は今後さらに高まると考えられます。
定期報告の義務
前年度の食品廃棄物等の発生量が100トン以上となる多量排出事業者には、食品廃棄物の発生量や再生利用の実施状況などについて、毎年の定期報告が義務づけられています。
報告内容は国によって取りまとめられ、事業者の取り組み状況の把握に活用されます。
フードロス発電(食品廃棄物バイオガス発電)とは
フードロス発電とは、食品廃棄物(食品ロス)をメタン発酵させてバイオガスを生成し、そのガスで発電する取り組みの総称です。
JFEエンジニアリングと外食チェーンの連携事業などで使われている呼称で、技術的には食品廃棄物を原料としたバイオガス発電・メタン発酵(嫌気性消化)を指します。
食品廃棄物はバイオガス発電と相性がよく、食品廃棄物は水分(含水率)が高く有機物に富むため、微生物による分解でメタンガスを効率よく生成できます。
焼却するには水分が多くエネルギー効率が悪い一方、メタン発酵では「燃えにくい」という性質が、むしろ資源化に適しています。
フードロス発電の基本フロー

食品廃棄物を発電によって電気に変えるまでの基本的な流れは、次のとおりです。
- 収集・運搬:食品工場・店舗・スーパーなどから食品廃棄物を回収する
- 前処理:包装材や異物(夾雑物)を除去し、破砕・調整する
- メタン発酵:発酵槽で嫌気性微生物により分解し、バイオガス(主成分はメタン)を生成する
- 発電・熱利用:バイオガスをコージェネレーションシステム(CHP)で発電・熱利用する、または都市ガス導管へ注入する
- 消化液の活用:発酵後に残る消化液を液体肥料などとして活用する
メタン発酵の詳しい仕組みや微生物の役割については、メタン発酵の仕組みと微生物の役割の解説もあわせてご覧ください。
堆肥化・飼料化との比較
食品廃棄物の再生利用には、肥料化(堆肥化)・飼料化・メタン化などの手法があります。
肥料化・飼料化は資源としての価値が高い一方、塩分・油分・異物の多い食品廃棄物では品質確保が難しい場合があります。
メタン発酵によるバイオガス化は、こうした「リサイクルしにくい食品廃棄物」でもエネルギーとして回収でき、かつ電力という形で売電収入も見込める点が、近年選ばれている理由です。
フードロス発電の方式 単独消化と混合消化
フードロス発電には、食品残渣のみの単独消化と、下水汚泥を混ぜる混合消化の2方式があります。

単独消化は、食品廃棄物だけを原料としてメタン発酵を行う方式です。食品工場や大規模な食品リサイクル施設で採用され、原料性状が安定しやすいという特徴があります。
混合消化は、下水処理場の下水汚泥に食品廃棄物を加えて一緒にメタン発酵させる方式で、既存の下水処理インフラを活用してバイオガス量を増やせるのが利点です。
混合消化は自治体での導入が進んでおり、神戸市の東灘処理場や高松市で導入事例があります。
参考記事:神戸市が東灘処理場で食品廃棄物受入 下水汚泥との混合消化へ
発生したバイオガスは、CHPによる電気・熱供給のほか、精製してバイオメタンとして都市ガス導管へ注入したり、車両燃料として利用したりする道もあります。
発電した電力は、FIT制度や特定卸供給を通じて、売電・自家消費する形が一般的です。
詳しくは下水処理場のバイオガス発電をご参照ください。
業種別フードロス発電の取り組み事例
食品リサイクル法の対象業種ごとに、実際の食品廃棄物バイオガス発電の事例を紹介します。
外食産業の事例
外食チェーンでは、店舗から出る食品廃棄物をメタン発酵して電力化し、その電気を店舗へ供給する循環型の取り組みが広がっています。
モスバーガーを展開するモスフードサービスの事例や、回転寿司スシローの食品リサイクル発電、JFEエンジニアリングと外食4社によるフードロス発電連携などが代表例です。
食品製造・流通の事例
食品商社やメーカーでも、食品の加工残渣を活用した資源循環が進んでいます。
札幌でバナナ加工残渣をバイオガス発電に活用するANAフーズの事例や、焼酎かすとコーヒーかすを組み合わせた霧島酒造・スターバックスの地域資源循環モデルなどがあります。
自治体・地域循環モデルの事例
自治体や地域の食品リサイクル事業者による、地域内で食品廃棄物を循環させる取り組みも各地で進んでいます。
このほかの事例は、食品廃棄物・食品リサイクルページにまとめています。
フードロス発電のメリットと課題

フードロス発電には、脱炭素やコスト最適化、リサイクル面のメリットと、異物除去や収集の仕組み、採算面でのデメリット・課題があります。
フードロス発電のメリット
- CO₂削減:化石燃料由来の電力を代替し、温室効果ガスの削減に貢献できる
- 処理コストの最適化:焼却処分に頼らず、廃棄物を資源・収益に変えられる
- 再生利用等実施率の向上:食品リサイクル法の目標達成に直接つながる
- 事業継続性(BCP)・企業価値:停電時も発電可能(オンサイト)、資源循環やCO₂削減が評価される
フードロス発電のデメリット・課題
- 分別・異物除去:包装材や異物の混入が発酵を妨げるため、前処理の負担が大きい
- 収集物流:分散する店舗から効率よく回収する仕組みが必要
- 採算性:プラント建設・運転コストに見合う原料量と売電・自家消費の設計が求められる
フードロス発電の取り組みと進め方
フードロス発電の取り組みにあたって、自社プラントの建設や既存施設への委託を検討する際は、原料性状・採算性・立地などの事前調査を行う必要があります。
まず、自社の食品廃棄物の種類と発生量を把握し、再生利用に適した分別の仕組みを整えることが出発点です。多量排出事業者では定期報告の基礎データにもなります。
続いて、登録再生利用事業者やバイオガス発電事業者と連携し、廃棄物に応じた再生利用ルートを選びます。
アーバンエナジーが提供する創電割のような電力供給サービスを活用し、発電した電力を自社で買い戻す電力循環型スキームを採用する企業も増えています。
アーバンエナジー株式会社:創電割
食品リサイクル法とフードロス発電で資源循環を
食品リサイクル法は、食品関連事業者に発生抑制と再生利用を促し、業種別の再生利用等実施率の目標達成を求める制度です。
2024年の改正でエネルギー利用が後押しされたことにより、食品廃棄物をメタン発酵で電力化するフードロス発電の役割はますます重要になっています。
食品廃棄物を資源に変える取り組みは、CO₂削減と企業価値向上の両面で大きな意義を持ちます。
参考記事:バイオガスプラントの仕組み全般





